クルマや時計、スニーカーにジュエリーと「ヴィンテージ」の名の付く人気アイテムは数あるが、ここ数年で大きな盛り上がりを見せているのがヴィンテージ・アイウェアである。2021年3月初旬には、1920〜1990年までのヴィンテージ・アイウェア131点を「原寸」で掲載した日本初の書籍『ヴィンテージ・アイウェア・スタイル 1920’s-1990’s』が発売された。
今回は著者であるメガネライターの藤井たかのが、本書の取材・撮影で実物を見てオーラにビビったヴィンテージ・アイウェア5選を紹介したい。
1920年代のAmerican Optical金張りフレーム
トップバッターは1920年代にAmerican Opticalが手がけた金張りフレームだ。とにかく100年前に作られた丸眼鏡がいま存在することが尊い! 鼻当てのノーズパッドが開発される以前のデザインで、ブリッジを鼻にのせてケーブル状のテンプルを耳の後ろにくるりと回して掛ける。レンズを囲むリムは山型で、表と裏にはビッシリと幾何学模様の彫金が施されていて、重厚感が半端ない。(SPEAKEASY 神戸本店)
1940年代のフレンチ・ヴィンテージ
フレンチ・ヴィンテージの黄金期と言われる、1940年代のセルロイド製眼鏡。セルロイドとは世界初のプラスチックで、現在はあまり使用されていない素材だが、40年代のフレンチはセルロイドの含有量が多くて質が高く、表面のツヤが恐ろしいほどテッカテカ。数多くの眼鏡を撮影してきたフォトグラファーの小澤達也氏が「今のプラスチックフレームはこんな光沢は出ない!」と驚いたほど。多角形のエッジが効いたシェイプも相まって、これでもかと個性的。(SPEAKEASY 神戸本店)
1950年代のTART OPTICAL[ARNEL]
ジョニー・デップが愛用し、世界的なヴィンテージ・アイウェアブームの火付け役となったTART OPTICALの [ARNEL]。茶系のアンバーは特に希少価値が高く、実物を初めて見たけど、どう見てもいまも現役なデザインに驚き! 縦横比が1対1に近いスクエアシェイプにダイヤ型のリベットは、半世紀が経っても色褪せない普遍的な意匠だ。テンプルの合口にズレがあるなど、ラフな仕上がりが逆に味わいがある。(SOLAKZADE)
1960年代のpierre cardin折り畳み
1960年代の眼鏡シーンはフランスのデザイナーズブランドが台頭した時代。pierre cardinの代表作である折り畳み眼鏡は構造が非常に面白い。まずはフロントを内側に折り、テンプルを外側から抱き込むように折り畳むと、卵くらいのコンパクトな大きさになる。透明感のあるハニートートイズのカラーに、細いテンプルをパキパキと折り曲げる様は、どこか節足動物のようで不思議な存在感。左右で非対称のデザインも面白い。(SPEAKEASY 神戸本店)
90年代のJEAN PAUL GAULTIER
世紀末の1990年代と言えば、蒸気機関車やサイバーな世界観を投影したスチームパンクが全盛の頃だ。当時、日本で製造されていたJEAN PAUL GAULTIERのサングラスは、ブロウにメタリックブルーのスプリング、ブリッジとテンプルには汽車のレールのラインと、工業製品のパーツを大胆に取り入れている。筆者の青春時代である90 年代がプレイバックできる点もグッときたポイントだ。(SOLAKZADE)
以上が実物を見てオーラにビビったヴィンテージ・アイウェア5選だが、ほかにも紹介したかったフレームがある。というか、あり過ぎて困る……。例えば、1950年代のRay-Ban「Wayfarer」のファーストとか、1980年代のクレイジーなデザインのalain mikliとか、世界大戦時のド派手なパイロットサングラスとか。書籍『ヴィンテージ・アイウェア・スタイル 1920’s-1990’s』には、コレクター必涎のフレームが「原寸」で載っているのでぜひチェックして欲しい。
■取り扱い店
SOLAKZADE https://www.solakzade.com
SPEAKEASY 神戸本店 http://speakeasy-kobe.blogspot.com
■書籍
『ヴィンテージ・アイウェア・スタイル 1920’s-1990’s』(グラフィック社)
http://www.graphicsha.co.jp
文/藤井たかの(takano fujii)写真/小澤達也(Studio Mug)