パイロットウォッチに端を発し、徹底的な機能美で知る人ぞ知るドイツの実力派時計ブランド・Sinn(ジン)。その魅力はどこにあるのか? 東京・渋谷にあるSinnのコンセプトショップを訪れた。
JR渋谷駅から徒歩5分の公園通り沿いにあるSinn DEPOT(ジン・デポ)は日本におけるSinnのコンセプトショップにして旗艦店。Sinnの専門店は本国ドイツと日本にしかないという世界的にも希少なショップなのだが、店内には約110種類の主要モデルがずらりと並んでいる。交換ベルトなどのアクセサリーも完備で、ここに来ればSinnのすべてに出逢えるというわけだ。
「日本のマーケットの中でSinnは知る人ぞ知るこだわりのブランドという立ち位置です。ここに店をオープンした時にはファンの方々からみんなに知られると困る、なんてことも言われました」とはSinn歴35年の店長・小出清孝さんだ。フランクフルトにある本社のセールスルームのレイアウトを模したという店内をアテンドいただきながら、目下のオススメモデルは2月に発売開始となる日本限定の「EZM3.F.V」(価格36万3000円)という。
「少々、説明がややこしいのですが、ドイツ警察の特殊部隊用に開発された500m防水モデルの『603.EZM3』をベースにパイロットウォッチにした『703.EZM3.F』の日本限定モデルで、文字盤には職人の手作業によるスクラッチ加工が施されていて、限定100本それぞれの表情がひとつずつ異なるのです」
少し話を聞いただけでSinnのキャラクターが如実に伝わってくるが、定番人気は「103.B.SA.Auto」(価格41万8000円)。「これは1961年にSinnが創設された時からあるロングセラーのパイロットウォッチで、Sinnの原点的モデル。1961年の時点ですでにデザインが完成していたという点でも秀逸なモデルです」。
ステンレススチールをセラミックと同等の硬度を誇るテギメント加工した「856B」(価格35万7500円)も最近人気があるというが、「とにかく硬い素材に仕上げられていて、ドライバーで引っ掻いてしまっても傷がつきません。極端な話、10年経っても買った時と同じ状態でいられます。Sinnテクノロジーが凝縮された1本ですね」。
そのほか、文字盤の眩いメタリックグリーンが美しい世界限定500本の「103.SA.G」(価格56万1000円)や、パイロットウォッチの名作の外観を忠実再現した「158」(価格47万3000円)など、小出さんのウンチクトークに圧倒されたが、Sinnの最大の魅力はとにかく語れる大人の時計であることだろう。
「前にご紹介したドイツ警察の特殊部隊用の『603.EZM3』はミッションを遂行する時に邪魔にならないよう突起物が通常と反対(本体左側)についています。ディテールがイチイチ語れるのですよ。ミリタリー&航空ファン系の方はもちろん、ブライトリングやロレックスなどいわゆる時計好きの方にも人気がありますね」
価格も概ね30万円台からと、ちょっといい時計を買って気分をアゲたいという大人には入りやすい価格帯。客層は目の肥えた大人世代が多いというが、その一方で「入門機にあたる556.A(価格22万円)は機械式の本格的な時計が欲しいという若いビジネスマンや、ハタチの記念に息子さんに贈るとか、若者へのニーズも高いですね」と最近では20代のファンも増えつつあるとか。
「Sinn depot渋谷」は2019年12月のオープン。昨春はコロナ下により休業時期もあったが、再開後は客足が順調に伸び、昨年12月は開業後最高の売上を記録したという。
「ジワリジワリと認知されてきていることを実感しています。お客さまはWebでモデルを決めて来店されることがほとんどですが、実際に時計を見て、例えば103シリーズだけでもこんなに種類があったのか、と迷われるケースが多いですね。リクエストがあれば、1本ずつウンチクをお話しますので、かえってお客さまを迷わせてしまうかもそれません(笑)。でも、こちらとしても、興味を持ってくださったお客さまにはSinnのこだわりを伝えたくてしょうがないのですよ。お客さまも結構、その手のこだわりがお好きな方が多いですしね。来店いただければご希望の機種を全てフィッティング可能ですし、ディテールのご説明も喜んでさせていただきます。まずは、ご自身の手にとってSinnの魅力を体感してみてください」
ちと、矛盾はしてしまうのだが、確かにヒトには教えたくないブランドかも。
■SHOP DATA
Sinn DEPOT 渋谷
東京都渋谷区神南1-20-10
神南興業ビルB1F
Tel / 03-6416-0020
営業時間 / 11:00ー19:30、日曜のみ
11:00ー18:30、水曜定休
https://sinn-depot.jp