フォーリング伝説 アウディヒストリー vol.1


 モノマガジン本誌4月16日発売号ではスポーツカーを特集なのだが、スポーツカーって車高が低くて乗り降りが大変だし、さらに2ドアとなれば乗れる人数が限られてしまう。すると当然荷物が載らないし、日常的に使うのは厳しいじゃない。もちろんその非日常性がたまらない魅力なのだけれど。

 でも世界は広い。ガッツリ実用的でスポーツカーもびっくりなクルマもある。あ、あれだ、あれでしょう、馬力のあるエンジンを載せたセダンとかでしょ、となるが、その手のベクトルの3分の1くらいのモデルは、後席の足元を広くするため長いホイールベースで、いわゆる直線番長的なモデルで高速道路しか楽しめない。では実用的でコーナリングも楽しめて欲を言えばサーキットも楽しめるクルマは? まずサイズでいうならばDセグメントあたりがそれだ。メルセデスのCクラスやBMWの3シリーズあたりになろうか。それでいてスポーツカー並みの性能を誇るモデルとなれば限られてくる。例えばアウディのRSシリーズだ。

 アウディはメルセデスベンツ、BMWと並んでドイツ御三家と称される高級車メーカー。その歴史は100年以上前まで遡ることができる。当時のダイムラーベンツ社にいたアウグスト・ホルヒ博士が1899年にホルヒ社を設立。1909年にはその会社を辞めアウグスト・ホルヒ・アウトモービルヴェルケ有限会社を立ち上げたのはいいが、自身が立ち上げた最初の会社と社名が重なるなどの理由でホルヒのドイツ語の意でもある「聞く」をラテン語読みにしたアウディを社名にしたのがブランドの始まり。その後1929年に端を発した世界恐慌の影響を受け元の高級車ブランドのホルヒ社、大型車を得意とするアウディ社、小型車、オートバイのヴァンダラー社、大衆車やバイクの2ストロークエンジンに強いDKW社の4社が連合体となりアウトウニオン社が1932年に誕生した。現アウディのブランドエンブレムである4つの輪はこの4社を表現しているのだ。もしあともう1社加わっていたら5輪になってIOCと何かしらあったかもしれぬ。

 アウトウニオンとなってからアウディが送り出した初期のクルマにUWがある。当時としてはまだ珍しかった前輪駆動車で、これは前述のDKWの技術が活用されたモデルだ。

 同社は1958年にはダイムラー傘下になり、1969年にはVWグループの傘下になった。その頃、オートバイメーカー、NSUとの併合などを経て1972年のヨーロッパカーオブザイヤーに輝いた80などを発表。

 そしてあの有名なモデルがアウディのネーミングを世界中に知らしめることになるのだ。

後編へ続く

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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