【グラマラスすぎるデザインと性能 #3】トヨタ GR ヤリスRZ ハイパフォーマンス


 WRCを見据えたホモロゲモデル、GRヤリス。いよいよ走り出しである。1618ccの直3ターボ、272PS。しかも3ペダルのMT。都内の渋滞に突撃しなくてはならないのだが、その前になんとなく1618ccって半端な感じがしません? 1.6リッターエンジンだと1596ccとか1604ccとかそのあたりをウロウロするのだが、ジツはこの数字にもラリーのレギュレーションが関係してくるのだ。ラリ−2規定の排気量の上限が1620cc。つまり可能な限り排気量を高めたわけだ。そういえばその昔、ドイツのアルピナは排気量アップに勝るチューニングはないと言った時代があったがそれに近い。
 さて。意を決して1速に入れ、発進。おりょ? 意外に乗りやすい。慣れればアイドリング発進もいける。が! 教習所的に3転がり半したら2速へというのをやるとエンストする。間違いない。筆者がそれをやったから。まあ1500rpmくらいでシフトアップすれば問題ないけれども。でもどうしてもというなら筆者のようなへたっぴに向けにトヨタが用意してくれた「お優しいスイッチ」がコンソールにある。

 iMTと呼ばれるモノだ。発進時に気持ちエンジン回転をあげてエンストしにくくしてくれるほか、シフトダウン時は回転を合わせてくれる。微妙なほんの少しの回転合わせならクルマに任せた方がラクかもしれない。予想通り渋滞にはまってもこのエンジン、全くもって扱いやすい。1.6リッターターボの272PSを想像していたらそのフレキシブルさに拍子抜けするかもしれない。いよいよ高速へ。料金所からの全開。渋滞で3000rpm以下だと優しく回っていたエンジンが3500rpmあたりを境にパワーとトルクの演舞のごとく、持てるパワーを路面に叩きつけてくれる。レッドゾーンまで一気に針が駆け上がっていくのだ。特に4000rpmから1000rpmずつ上がるたびにますパワー感と音は病みつきになりそうだ。まっすぐの加速だけなら条件さえ合えば公道でも楽しめる。ちなみに6速100km/hの回転は約2500rpm。車内はクラシック音楽を楽しめるくらいの静粛性でそのまま長距離を走ればカタログ燃費以上の燃費が期待できるはず。
 もう一つ試さなくてはならないスイッチがある。そう、WRCからフィードバックされた4WDシステムだ。

シフトノブ前方に設置されたダイヤルで任意に設定可能。ノーマルモードはFF的なトルク配分で前60:後40に。スポーツモードはFR気味に前30:後70、トラックモードは前後のトラクションを最大限に活かせる前50:後50になる。おそらくスポーツモードなら軽くテールを流しながらコーナーを抜けられるはず。首都高に入り、その日はなぜか交通量が少なく比較的速い流れだ。短い合流車線も楽に加速するGRヤリス。右車線を走行し右に左にカーブするが、これが気持ちいい。一定の車速だと厳しいコーナーも何事もなくクリアする。こ、これはトミー・マキネンになった気分……、いやマキネンはライバルメーカーだから、うーん、隼人ピーターソン(名作、「サーキットの狼」に登場)か。格上のスポーツカーの左から(たまたま左車線)バビュンと抜き去るGRヤリス。「フォフォフォ、見たかユーとミーのテクニックの差を!」(実際はクルマが安定してるだけ)と思わずつぶやく悲しき四十路の筆者。

 このGRヤリス。実は筆者のまわりで何人か購入していて、厳しい評論家の先生も購入した理由がよぉーくわかり申した。街中からサーキットまで万能だもの。それでいて燃費もいい。車高だって気をつけなきゃならないほど低くないからよほどの未舗装路でない限りどこでもいける。これだけのメカニズムで456万円。決して高くないどころか中身を考えたらバーゲンプライスだ。なおトヨタのサブスク、KINTOでもGRヤリスを選択できるようになっている。

トヨタ GRヤリス RZ ハイパフォーマンス


全長×全幅×全高:3995×1805×1455(mm)
エンジン:1618cc直列3気筒ターボ
最高出力:272PS/6500/rpm
最大トルク:370N・m/3000-4600rpm
燃費WLTCモード燃費:13.6km/L
価格:456万円

KINTO https://kinto-jp.com/kinto_one/cp-gryaris/
トヨタ自動車 https://toyota.jp/index.html
問 トヨタ自動車お客様相談センター tel.0800-700-7700


  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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