東急線・学芸大学駅を北に向かって歩くこと5分ほど。緑の植栽に囲まれたいい雰囲気の店がある。ここは昨年7月にオープンしたブルワリーパブ。店名の「FIVE TREES」にピンときた人も少なくないだろう。この界隈の地域名である五本木からとったものだ。エントランスを入るとすぐにカウンターバースペース、その奥にはクラフトビールが注がれるタップが整然と並んでいる。
やや暗めでムーディな空間には質感の良いカウンターにハイチェア、店名のアイコンである「F・T」のネオンサイン。店内を進むと、これまたいい感じのテーブル&チェア、植物プランター、さらには「FIVE TREES」のロゴ入りTシャツなどなど。ランドスケープデザインで著名な設計会社、ヤード・ワークスの”五本木支店”が入居していたりと、フツウのクラフトビール店には見えない異色の雰囲気だ。ここにあるのはすべて植物プランターの老舗・トーシンコーポレーションで手がける商品たち。つまりは、ブルワリーパブという名の同社のショールームというわけだ。
提供される色艶の美しいクラフトビールはペールエールをはじめとする3種類。いずれもフルーティで飲みやすくもしっかりとコクのある飲みごたえだ。その割にフルサイズで900円、ハーフサイズで700円とクラフトビールにしてはリーズナブルな価格で提供している。カウンターの裏側にはクラフトビールを醸造する12本のタンクがあり、中を見せてもらうとなかなかの壮観風景。店のオープンに際しては、前職がビールメーカー勤務だったという同社企画推進室室長の小渕仁さんが、親交のある横浜のクラフトビール店「THRASH ZONE」の協力を得て、ビール設備の導入からタンク設計、酒造に関する各種申請などをクリア。オープン当初は「THRASH ZONE」からクラフトビールを提供してもらっていたが、研究を重ね今年3月からは完全オリジナルのクラフトビールの提供をスタートした。
そのほか、クラフトビールをつくる際に出るモルト粕を使ってクラッカーをつくるなど企業としてサステナブルな取り組みも。モルト粕を使用したクラッカーにナッツを組み合わせておつまみメニューとして提供しているが、メニューはそれにクラフトビール3種、ソフトドリンク類のみ。とにかく潔いのだ。
「基本的にショールームでもあるので、クラフトビールで儲けようとは思っていませんからね。気軽にみなさんが集まれる場をご提供できれば。突き詰めていくと五本木の地域活性に貢献できればと思っています。だから、フードメニューを提供して周りの店の競合になるのは意味がないんです。例えばビールと一緒にバーガーが食べたくなったら、近所の店で買ってきてウチの店内で食べていただいてもOK。ウチですべてをワンストップするというよりは、地域のひとつのシンボルとしてのクラフトビール店になれれば。ビールづくりも今後ますますブラッシュアップしていくので、味わいの成長もぜひ、見守っていただきたいですね」(小渕さん)
実にいい感じの店なのだが、それにしても”プランター屋”なのに自社内にクラフトビール店をつくってしまったトーシンコーポレーションとはいったい何者なのか? 同社の杉本達也社長を直撃! 詳細は後編にて。
■FIVE TREES
東京都目黒区中央町2-35-13
Tel.03-3715-6082
営.13:00-17:00(17:00-23:00バー営業)
水・日定休
http://fivetrees.tokyo
※営業は国、東京都の施策に準ずる形で展開
トーシンコーポレーション
http://www.toshin-grc.co.jp
【みんなの建モノ】人間同士のナマの交流が大事なのだ! FIVE TREES【後編】