5月23日に富士スピードウェイで開催されたスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankookの第3戦「NAPAC 富士SUPER TEC 24時間レース」に参戦の1台のクルマに注目が集まった。それは水素エンジンを搭載したカローラスポーツだ。
※画像はテスト時のもの
昨今、ゼロエミッションだSDGs(持続可能な開発目標)だと叫ばれるご時世、この「水素」というキーワードだけで注目されるのにその後にエンジンなんて言葉がついてしまったらもう見るしかない。坂道系アイドルの名前の後に水着全集とか付くような感じといえば分かりやすいかもしれない(編集部注:余計分かりません!)。
さて。なぜ水素のあとにエンジンが付くとスゴいのか。たとえば水素を燃料としたクルマはトヨタにもある。MIRAIだ。
これは2014年に世界初の量産FCV(燃料電池自動車)としてデビュー。2020年にフルモデルチェンジし2代目へ。そのメカニズムは搭載された燃料電池で水素と空気(酸素)の化学反応によって電気が生まれる。その電気でモーター(クルマ)を動かすというモノ。このようにMIRAIは水素を燃料としているがクルマを動かすのはモーターであってオットーサイクルのエンジンではない。トヨタがこの耐久レースに挑戦するのは水素を燃料としたオットーサイクルのエンジンなのだ。つまり、クルマ好きが好む要素のマスト項目であるエンジンの音や振動といったモノがあるのだ! 化石燃料やその燃焼に伴うCO2排出ゼロで。これはスゴいこと。では今までにそんなクルマがあったかというとゼロではない。2006年にBMWが4代目7シリーズの760iをベースに限定生産したハイドロジェン7もあった。
これはスイッチひとつで水素とガソリンを切り替えられるモノで、エンジンは6リッターのV12。ガソリン時は445PSあるのだが、水素に切り替えると260PSにパワーダウンしてしまう。そして水素だけの航続距離はカタログ燃費でガソリン500kmに対して200kmとなっていた。
話は戻ってレースのカローラだ。このマシンのエンジンはGRヤリスのモノを転用。今回のレースチャレンジは既存の内燃期間の技術を水素エンジン化するというのがコンセプトのひとつ。もし、これが実現すれば今自分が乗っているクルマにちょっとした改造で排出ガスをゼロに出来ることも夢ではないはず。それはスゴい!! モーターの色気のない音や走りよりクルマ好きのエンジンが生き残る技術になりうるのだ。
肝心な水素タンクはMIRAIの技術がベースに。水素は爆発がスゴい。よって市販車のMIRAIではある程度の厳しいテストをしているが、モータースポーツだと話は別次元くらい過酷。公道ではまわりに200km/hオーバーで走って小石を飛ばしてくるクルマは皆無(だと思う)だが、サーキットではまわりがそれ以上のスピードで駆け抜けて行く。いわんやその跳ね石やクラッシュ時の飛散部品の威力は想像を超えるはず。トヨタではそんな厳しい状況を想定しての実験動画を動画サイトで公開している。興味があったら見ておきたいサイトだ。
「水素エンジンとガソリンエンジンの違い 富士24Hへの予備知識 第1回」
https://www.youtube.com/watch?v=DhSl3wN4cos&t=3s
また、豊田章男社長のレース前のコメントでは
「水素の安全性を証明するためにも私が参戦ドライバーの1一人」とも言っている。
そして過酷なモータースポーツの場では各部品の耐久性もテストできる。他のメーカーの言葉だがまさに「レースは走る実験室」なのだ。
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