東京都交通局の通販サイト「はとマルシェonline」で販売が開始された都営浅草線&大江戸線、そして都営バスの1/100スケールペーパークラフト(紙製模型)。ひと目でそれと分かる正確さと、紙ならではの柔らかさを併せ持った注目アイテムの魅力に迫る企画の最終回は、製造や組み立てに関するトピックを紹介!
【第3回】組み立て難易度はMAX!? A4サイズで展開される「普通に見かける風景」の秘密
色違いの人物には意味がある? ペーパークラフトの利点を生かした表現技法
平らな紙から組み上げられた都営地下鉄と都営バスの模型。車両の再現度もさることながら、その車両にリアル感を与える人物や小物の存在を見逃すことはできない。さらにその人物を見ていくと、素材の色が異なっていることに気がつく。多くの人物には黒い紙が使われているのだが、中には赤い紙で作られた人もいる。実はこの色分けにも理由があった。
「車両の色分けを表現するにあたり、紙の色を変えることにしました。たとえば都営地下鉄では、まずは黒い紙で車両の基本を作り、これに白のボディを組み合わせます。そして赤で色分けをするのですが、この色違いの紙を利用して、各色のシートに人物を入れ込みました。よく見ると乗客は黒、乗務員は赤で表現しているのが分かると思います。こうして、色の違いにも意味を持たせているんです。でもマスコットは全色で作っちゃいましたが(笑)」と、模型製作を担当したテラダモケイの寺田尚樹さんは語る。
「色といえば、既存の紙を使う関係で、実際の地下鉄やバスのカラーとまったく同じ色を再現するのが難しく、なるべく近い色の紙を使用するということで落ち着きました。しかし、(東京都交通局の)吉岡さんたちと協議を重ねて決定した色なので、地下鉄やバスのファンの方にも納得してもらえると思います」(寺田さん)
精密加工で製造されたペーパークラフトは、組み立てるのにも注意が必要?
1枚のシートを切り出して製造する紙製模型。その加工はテラダモケイの製品を手がけている福永紙工が担当した。加工方法はレーザーカットで、対象となる素材にレーザー光線を当てて切り抜きを行うもの。金属加工ではメジャーな方法だが、熱によって焦げ目ができやすい紙の加工に用いられるのは比較的珍しく、ここに福永紙工の高い技術力を見ることができる。実際に製品を購入した人は、ぜひともその切断面をよく見てほしい。マスコットキャラの表情も切り抜きで表現されていることに驚かされるはずだ。
これほど精密な模型は、組み立ての難易度も高そうに思えるが、寺田さん自身もそれは否定せず、むしろ「難易度MAXです」と笑う。
「紙をキレイに折り曲げる工程、そして小さなパーツを接着していく工程など、初心者には難しいポイントが多いと思います。実際、テラダモケイの製品を購入されたお客様でも、組み立てずにシートのまま飾っておく人も多いと聞いています。ただし、そういう状況も考慮して、シートを見るだけでも一つのアート作品として成立するようデザインしてあります。もちろん、きちんと組み立てられるように社内で試作と検討を繰り返していますので、完成品には自信があります。お客さんには、難易度が高くても組み立てにチャレンジしてもらいたいですね」(寺田さん)
東京都交通局とテラダモケイの協力によって実現した都営地下鉄&バスの精密ペーパークラフト。今回は各種1000個の限定販売とのことだが、今後のさらなる展開にも期待したい仕上がりを見せてくれる。しかし、まずは限定品をゲットすることが先決。興味のある人は「はとマルシェonline」をチェックしてほしい。
車両の先頭でお客さんを迎えるマスコットのとあらん。豊かな表情はレーザー加工機による切り抜きで表現されている。(photo:Kenji MASUNAGA)
テラダモケイ都営交通編都営浅草線「5500形」価格:4400円
テラダモケイ都営交通編都営大江戸線「12-600形3次車」価格:4400円
テラダモケイ都営交通編都営バス「LV290N3」価格:4400円
はとマルシェonline:https://hatomarche.com