2部構成の総火演!後段、陸自の戦術を知る
総火演後段は、シナリオに沿った訓練となります。これは総火演がスタートした当初から続いています。陸自がどのような戦術をもって、その時代ごとに脅威に立ち向かっていくかを知ることが出来ます。そのシナリオは、時代とともに変化しているのです。
長らく、日本へと着上陸を果たしたソ連(とはもちろん名言していませんが…)の戦車を中心とした機甲戦闘団を撃破するという流れでした。
それが、2012年より、島嶼防衛を念頭に置いたシナリオへと変わりました。これは、言うまでもなく、中国の脅威が高まったからです。
2021年の今年は、「敵の着上陸阻止から撃破に至る一連のシナリオに基づき、国土防衛戦における陸上自衛隊の戦闘要領を展示」(陸上自衛隊の資料より)するものとなりました。
ここ数年通りの島嶼防衛シナリオではありますが、主役となったのが、即応機動連隊と水陸機動団でした。冷戦期に主役として活躍した戦車は、これら部隊を増強する形となり、いわば脇役となりました。
日本領海内に侵入した敵を叩け!
空自のレーダーサイトや早期警戒管制機、海自の哨戒機、そして陸自の沿岸監視隊などによる警戒・監視の結果、敵上陸船団の情報を入手したところからスタートします。
師団司令部は、システムを活用して、海空自の情報を共有するとともに、沿岸部での戦闘を準備します。敵艦艇を迎え撃つため、12式地対艦誘導弾及び捜索評定レーダー、03式中距離地対空誘導弾、NEWSこと電子戦ネットワークシステム、82式地上レーダー装置が展開します。ここで、会場モニターでは、「火力戦闘指揮統制システムFCCS」という言葉が突然出てきます。これが非常に重要です。統合による対艦戦闘を実施する司令塔となります。
こうして迫りくる敵艦艇に対し、洋上では護衛艦がSSM-1B艦対艦ミサイルを発射(想定のみ)し、陸上からは12式地対艦誘導弾を発射(想定のみ)、上空からはF-2戦闘機に搭載されたASM-3が発射(想定のみ)されました。
こちらを攻撃するため、敵艦が発射した巡航ミサイルは、03式中距離地対空誘導弾が撃破します。
この攻撃の間、NEWSが、敵の電波を無力化し、こちらの攻撃の効果を上げていきます。
遂に敵が上陸!即応機動連隊が戦う!
ここから機動師団主力による戦闘へと移ります。展開してきた即応機動連隊は、地域配備師団と連携し対艦戦闘及び着上陸阻止を行います。即応機動連隊の主装備である16式機動戦闘車が火を噴きます。
しかし、敵部隊は、上陸に成功し、内陸部へと攻め入ります。
そこで、今度は内陸部の敵を撃破すべく、水陸機動団及び第1空挺団の事前潜入部隊が、水路・空路などのあらゆる手段を用いて作戦地域へと潜入していきます。まずは水陸機動団主力が上陸できる環境を整えます。
そして、見つけ出した敵の細部位置を支援火力調整所へと報告。この情報を元に、護衛艦「てるづき」の主砲である62口径5インチ単装砲にて、敵陣地めがけて攻撃していきます。引き続き、F-2により、レーザーJDAMが投下されていきます。
こうして海岸にいる敵を艦砲射撃や爆撃で制圧したことで、水陸機動団主力が、水陸両用車AAV7で上陸してきました。これを「海上機動による強襲上陸」と呼びます。この上陸を支援するため、AH-64Dアパッチが空から機首下部にある30㎜機関砲で攻撃していきます。
AAV7は、着上陸に成功するや否や、砲塔にある12.7㎜重機関銃や40㎜自動てき弾銃を発射し、目前の敵を蹴散らしていきます。その間、後部ハッチから水陸機動連隊の隊員たちが下車展開し、小銃や機関銃にてこの攻撃に加わっていきます。
こうして一連の射撃の後、さらに前進するため、隊員たちはAAV7に乗り込み、さらに内陸部へと進みます。
一方、内陸部近傍にて、水陸機動連隊先遣部隊によるヘリボーン作戦が展開されました。AH-1Sで守られた空中機動部隊を乗せたUH-60JAやCH-47JAから、隊員たちが、ファストロープで次々と降下してきます。
第1空挺団も同じように、空挺降下にて内陸部へと進出する予定でしたが、悪天候のため、中止となりました。
こうしていよいよ最終決戦へとコマを進めていきます。(第5回へ続く…)