“日本一東京タワーに近い”リノベマンションの一室で、大人のライフスタイルを愉しむKさん。質感あふれる道具たちに囲まれ、あたかもそこは男の秘密基地のような空間だ。部屋の中で一番お気に入りの場所はセンターにレイアウトされた1人がけのソファというが、その周りにさり気なく置いてあるモノたちがなかなかレアだ。木の切り株から流木、石ころ、さらには鹿のツノまで。いったい、どこで買ってきたの?
「雑貨店めぐりが好きなんですよね。あと、石はその辺で拾ったモノもありますし、鹿のツノはネットで購入しました。本物ですが、プラスチックみたいでこれがまたおもしろい質感なんですよ! 流木とか自然にできたカタチやモノが好きなんですよね、作り手の意図が入っていないようなモノが……」
そんなKさんが最近気に入っているというが、セブンイレブンの黒いティッシュ箱。気軽に購入できる割に、マットな黒の質感がなかなかよくできていて、男の秘密基地な空間を邪魔しないのだという。
洋服好きだそうで、リビングの隅にあるクローゼットスペースにはアイテムがたっぷり収納されていた。最近、それだけではスペースが足りなくなり木製のチェストを買い足したが、その引き出しのハンドルと脚部の金属部分もこだわり。やはり、イチイチ質感を求めてしまうのだ。出身は高知県。豊かな大自然と戯れる中で育まれた子ども時代の感性がいまだKさんの根底にあるのかもしれない。
ソファの奥が寝室スペース。「コンパクトで取り回しがいい」という無印良品の脚付マットレスに寝そべりながら、アングル調整が自由自在のホルダーにスマートフォンをセットして好きな映像を見るのが最近のお気に入りのスタイルだ。その向かいにはリモートワークスペース。デスクトップには仕事合間のリフレッシュ用にエスプレッソマシンが置かれている。そして美音にもこだわるモノ・マガジン的に忘れてはならないのが、ソファの対面にレイアウトされたマランツやヤマハのプレーヤーに、この日の取材中もイイ音を奏でていたスピーカー、さらにはアナログプレーヤー。こだわりのオーディオが並ぶ。
リビングの手前にはコンパクトなキッチンがあり、実家が米屋ということで木の米びつや包丁置きもあったが基本、自炊はしないのだという。
「キッチンスペースが小さいから本格的なことはできない、というのも理由ですけどね。あと、ここ東麻布は案外、昔ながらの商店街がまだ元気で、意外に庶民感覚が残っている町なので買い物も便利なんですよ」
その代わりといってはなんだが、結構注力しているだろうと思われるのが、キッチンの対面の棚に並んだ日本酒をはじめとするアルコールの瓶たち。東京に来てから知った高知のお酒も意外に多いのだというが、衣食住の全てにおいて、自由気ままに好きなモノに囲まれた男の秘密基地生活を堪能している。
現在はIT広告の運用の仕事をしているが、30代のときには趣味のビリヤードにどっぷりハマりこんで、そのままビリヤード場の店員になった時期もあるという若干、放浪癖も垣間見える自遊人。そんなKさんがいまハマっているのが早朝の東京のど真ん中を自分のペースでゆっくりと走ることだ。
「ここは東京タワーに一番近い住宅といっても過言ではない立地ですが、青山や外苑、銀座、六本木にも走ってすぐ出られるんですよ。最近はモノを買うより走ることにハマっていて。東京のど真ん中って道が広くて走っていて気持ちがいいんです。最近ではだいたい夜9時には眠くなって、朝4時ぐらいに目が覚めてそこから少しダラダラして、5時過ぎから7時過ぎまで2時間ほど、早朝のトーキョーを走るのが日課。食べ歩きも好きなので、雰囲気のいい和食の店を見つけたりとか結構、毎日新しい発見があるんですよね」
もともと体重の増加やカラダの健康が気になってはじめた日課だが、今ではシンプルに走るのが気持ちいいのだという。そんな充実した毎日を送るKさんがこの部屋で最も気に入っている場所が廊下とリビングの境目にあるちょっとした段差だ。
「住みはじめてから気づいたのですが、このヘリの部分に腰掛けると、部屋全体が眺められて開放的な気分になれるんですよね」
ここはKさんがいつも自然体でいられ、新しい価値観が生まれる理想的な男の秘密基地だ。
取材協力/REISM http://rent.re-ism.co.jp/