デザインテーマは「ヒューマンモダン」。CXシリーズに採用されるフロントグリル下部からヘッドライトにつながるライン、シグネチャーウィングは不採用だし、移ろいゆくサイド面もこのモデルには使われていない。そこも「あえて」だ。ボディラインはシンプルに徹している。誰が見ても難しい曲線ではないのが印象的。このシンプルさって実は美しさにもつながると筆者はその昔聞いたことを思い出した。まさにソレだ。リアゲートのデザインはクーペ並みの傾斜で、Dピラーのブランド名を刻印したプレート(グレードによってはガーニッシュ)もさりげないアクセント。
このさりげなさがおしゃれだと思う。もっともオシャレなのはオプションの3トーンカラー仕様。
エクステリア最大の特長は観音開きになる左右のドア、フリースタイルドア。
Bピラーがなく、開く角度も大きいので乗降性については悪くない。同じマツダの観音開きを採用したRX-8で後ろから降りる時に前席のシートベルトにひっかかった経験のある御仁だけでなくともすこぶる乗降性がいい。リアドアを開けるにはフロントドア、リアドアの順。閉めるにはその逆。その開閉にはフロントドアの開閉が必要になる点が不便といわれている。だが考えようによっては安全だったり自分を上げるチャンスでもあったりする。
例えば前者は後席にチャイルドシートや大排気量NAエンジンのごとくエネルギーの有り余っている子どもが乗っている場合。自分でドアを勢い良く開いて一人で降りてしまったら危ない。その点、MX-30はキチンと大人が周囲の安全を確認してから子どもをおろせるメリットがある。後者は後ろに乗る人のためにドア開くなどさりげなくエスコートして「魅せる」という作戦も考えられなくもない。まさにモノは考えよう。これだけのスタイリングを持ち、300万円前後で買えるクルマは多くはない。昭和的な表現ならばスペシャリティーカーとかデートカーといった感じだろうか。
さてクルマに乗り込むとシックなのだけれどとても品のいいインテリアが迎えてくれる。デザインはエクステリア同様にシンプル。水平基調のレイアウトなのだ。
そしてインテリアで気付く人にはすぐ気付く、気付かない人は言われるまで気がつきにくいモノがある。それはフローティングコンソール。
浮き上がって見えるそこにはシフトやエアコンの操作パネルは先進的でクラスを超えた装備感がある。そのコンソール下にはなんとコルク材を使用。なぜコルクなのか? エコだから? それもあるかもしれないけれどジツはマツダの歴史にも関係する。マツダの前身でもある東洋コルク工業が1920年に発足、そこでは瓶の栓だけでなく当時珍しいコルク板など製していた。その後の1927年、東洋工業株式会社に技術力はそのまま引き継がれた。その故事(?)にちなんだモノなのだ。いわゆるホンモノを使う贅沢。
さてその走りはどうか。搭載されるエンジンは2リッターの直4。
これにモーターを1基組み合わせたeスカイアクティブG。これはEVモードを持たないマイルドハイブリッドで、発進時や加速時にモーターがアシストしてくれる。CXシリーズとの差別化もあるかもしれないがエンジンのフィーリングも上質。それは乗り心地も同じことが言える。ズバリ乗り心地がいい。特に巡航時ではそれが顕著に感じられた。
リラックスできる空間、それがMX-30の最大の魅力かもしれない。シートに使われるのは人工皮革。これにヴィンテージレザーの柄をプリントしたモノのだが見た目も肌触りもまるで本革。筆者のようなド凡人は区別がつかないし、ペットボトルのリサイクル原料を素材とした繊維素材を使ったドアトリムもいいアクセントになっている。シックなんだけれど安っぽくない。高級ではないけれど上質なのだ。
またMX-30には専門誌が絶賛するEVもラインナップにある。
EVはトルクと静粛性に理があるがMX-30EVは内燃機関から乗り換えても違和感がないのが最大の特長だ。つまり運転のフィーリングは一般的なガソリンエンジンやディーゼルユニットと同じ。それはアクセルのレスポンスにある。内燃機関では物理的にアクセルペダルの曖昧さが残るがモーターはそれがないのが一般的。しかしマツダは「あえて」モーターのレスポンスを曖昧にすることで内燃機関然のフィーリングとしている。EVてしての性能は250km以上の航続距離、急速充電40分で80%になるバッテリーを装備する。こちらは451万円から。もちろん同モデルの特徴であるフリースタイルドアはこちらも採用されている。
MX-30は自分だけのオシャレを楽しめるユーザーにはぴったり。
MX-30
価格: | 242万円〜 |
全長×全幅×全高: | 4395×1795×1550(mm) |
エンジン: | 1997cc直列4気筒 |
最高出力: | 156PS/6000rpm |
最大トルク: | 199Nm/4000rpm |
モーター最大出力: | 6.9PS/1800rpm |
モーター最大トルク: | 49Nm/100rpm |
WLTCモード: | 15.6km/L(2WD) |
マツダ
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