レザーソムリエ・マキマキの
ゆったり革講座 Episodo03

2021.08.21

『革という素材についてserious編』


 皆さんこんにちはレザーソムリエのマキマキです。今回はちょっとだけ難しい話をしたいとおもいます。Serious編スタート!!
革は生き物の皮を人間が革にして使用している。元々生きていたので、生前に怪我をすれば傷が残り、病気になれば後も残るもの。
また、トラ(シワやお腹のたるみでできてしまうしま模様の事)や血筋(血管の痕が残ったもの)と呼ばれているもの(画像参照)も生きていた証なので革一枚一枚で異なり同じものはない。革とは工業系の人工的に作られる合成皮革と違い、同じ様に大量に作ることが難しい素材であるが、色々な方法で均一を保てるように工夫されてきた。しかし現在でも、個体差が出てしまうのが天然素材の革の性質なのである。

トラと呼ばれるシワの部分
血筋と呼ばれる血管のあと

 靴の場合で言えば、両足は左右対象でなくてはならない靴が多いので、片足にトラや血筋が入っていて、左右非対称となると販売製品の対象外となる。その為、革を裁断する時に傷などを見極めて裁断するのだが、傷を避けながら裁断しているので、革にもったいない部分がどうしてもできてしまう。少し面白いのがインポート商品、特にイタリア製の革靴などは、血筋やトラなども容赦無く入っている靴がある。しかしこれは通常通り販売されていて、購入者が『味』として良い雰囲気の革靴だと理解されているのである。しかし日本製や東南アジア地方の製品になると、急に品質チェックが厳しくなる。ヨーロッパは靴の本場で、革も良いものだというイメージがあるからだ。本場だから間違いないという情報が我々の意識の中に組み込まれている。一方で日本・東南アジアの製品はヨーロッパ製品に劣っていないにもかかわらず品質が厳しい。アジア製造の靴でも、革についてはイタリアやフランスなどヨーロッパ製の革でつくられている革靴も多い。使われている素材は一緒なのにもかかわらず、傷や血筋があるものは弾かれてしまう。我々は本場だと思っている製品には『味』があると思い、同じ素材を使用していても、本場以外は『味』ではなく不良品を位置づけしている。もちろん全ての人ではないし、全ての商品に対してでもない。これは革との歴史が日本人は諸外国と比べれば比較的浅いことも関係していると思われる。

日本の靴製造は100年を超えているが、実際に革靴を一般人が履き始めてまだ70年を過ぎたぐらいである。ヨーロッパなどでは、何世代も同じ靴を修理して履いたりする風習もある。圧倒的な革の歴史、文化、教育の違いがあり、革の知識を知らず知らずに身につけている。日本は雪駄やワラジなどの文化で近年まで過ごしてきた。これは高温多湿な日本には最適なアイテムであったが、アスファルトの道路になり今や雪駄だと暑く感じてしまう時代になった。そして近代化により、革靴が浸透してきたのだが、まだ革靴世代としては2世代目といったところだろう。

革に対しての理解はそれだけでなく、近年問題となっている、エコやサスティナブルについても同様である。CO2削減やヴィーガンの方々、動物愛護の問題などさまざまな問題が浮上しているが、そもそも食肉の捨てる部分の皮を「革」にして使用しているのを是非とも、もっと知ってもらいたい。別途、『革講座episode1』でも軽く触れているが、天然素材である革は綿花よりも歴史が古いとも言われている。人口皮革や合成比較などの石油製品を否定はしていないし、用途別に使用すれば素晴らしい効果を発揮できる素材なので革と合成皮革を比較することはできない。しかし、革=CO2排出・動物可愛そうなどよくないような風潮が強いので、あえて今回はこのテーマを取り上げてみた。
日本の有名な和牛からも皮は出ていて、これを廃棄する方が、エコではないと言われている。地産地消はその材料全てを使って完成するもので、皮も「革」へ変えて製品になってこそ地産地消が完成されるのではないか。もったいないので再利用して、革製品になれば、合皮よりも劣化しづらく長く使える。
革製品はとても身近なものでもあるので、もう一度手に取って革のよさに触れてみて欲しい。
 ということで「革という素材についてserious編」でした。次回も革のあれこれご紹介したいと思います。

  • 1977年生まれのバリバリ氷河期世代。19歳から靴屋のバイトを初めて、そのまま靴、革にどっぷりハマる。靴メーカーやベルトメーカー、靴の組合など、とにかく革がある場所で革の知識だけでなく、売り方やマーケティングを学ぶ。レザークラフトの作家としても活動中。主な作品はレザーベアー。手縫いをこよなく愛するLEATHER ARTIST。 現在はフリーランスで革関連会社のアドバイザー、革、靴、BAGのライターそしてレザークラフトなどをして、日々革について精進中。

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