世界が注目したC-2
アフガニスタンからの米軍の完全撤退をチャンスとばかりに、反政府武装勢力タリバンが、各地を制圧していきました。2021年8月15日、遂に首都カブールを手中に収め、事実上国を乗っ取ることに成功しました。自由と平和を掲げ、2001年12月22日に樹立した新政権は、たった20年でもろくも崩れ去ったのです。
これに慌てたのが、米英その他、アフガニスタンに駐在していた国々の政府関係者と現地協力者たちでした。タリバンが、再び恐怖支配を目指すことは間違いなく、報復される可能性が高いからです。
そこで、米空軍をはじめとして関係諸国軍は、アフガニスタンに取り残された自国民を母国へと戻すために、輸送機を送りました。タリバンは、8月30日までと期限を設け、各国の救出を認めました。
日本政府も同様に、現地に残る邦人等を輸送するため、防衛省に対し、自衛隊法84条の4『在外邦人等の輸送(TJNO)』を命じました。これを受け、C2輸送機1機とC130輸送機2機を派遣しました。
今回は、このC-2に注目してみましょう。
日本の技術力を結集
C-2は、川崎重工業が主契約企業となり、国内航空産業各社が協力して作ることになりました。海自の次期哨戒機P-X(後のP-1となる機体)と同時に開発することで、技術開発費の一部や部品を共用とし、コストカットを図りました。
2000年からC-X(Xとは試作機の意)プロジェクトがスタートします。エンジンは、米ゼネラル・エレクトリック社から輸入する予定でしたが、担当予定の商社にて、内紛が起きた上に、防衛省事務次官(当時)への汚職事件などが発覚してしまいます。これにより、防衛省事務次官は逮捕され、輸入商社は変更を余儀なくされました。
さらに07年にようやく1号機が完成しましたが、不具合が次々と見つかります。こうした結果、計画は遅れていきました。
2010年1月26日、1号機の初飛行が成功。これにより、XC-2の型式番号が与えられました。同年3月30日、川崎重工岐阜工場において、防衛省へと納入式が行なわれ、C-2となりました。
外観上の特徴は、高翼配置と呼ばれる機体の上部にある翼とT字型尾翼です。機体のカラーリングが青いことから、「ブルーホエール」と呼ばれています。当初、1機あたり166億円と言われていましたが、一部報道では、236億円に高騰したとも伝えられています。
空自が配備しているC-1やC-130と比べ、全長を約10m長くして貨物室内の搭載量を増大させ、輸送能力を向上させました。最大貨物積載量は30tを誇ります。16式機動戦闘車など大型陸自装備も運べるようになりました。人員であれば最大110名の搭乗が可能です。20tの貨物を搭載した状態であれば7,600kmも飛行出来るので、日本の領空だけでなく、PKO活動などの海外展開においてもまったく問題はありません。2017年には、ジブチ共和国、アラブ首長国連邦、ニュージーランドへと遠征もしました。フライト時間が長くなったことから、乗員らの居住性を上げるため、仮眠用の2段ベッドや冷蔵庫や電子レンジを備えるギャレー、トイレを備えています。
全長 | 43.9m |
全幅 | 44.4m |
全高 | 14.2m |
最大積載量 | 30t |
エンジン | マッハ約0.82 |
航続距離 | 7600㎞(20t積載時) |
乗員 | 2~5名+110名 |