去る2021年10月23日午後1時半ごろ、航空自衛隊のアクロバット飛行チームである「ブルーインパルス」が、山形県の酒田市や鶴岡市など庄内地方上空を飛行しました。
これは、庄内空港開港30周年記念と新型コロナウイルス感染症と戦う医療従事者を激励することを目的としたものでした。事前に告知されたこともあり、前日の22日に行われた予行と合わせ、多くの方々が庄内の空を見上げました。
現在「ブルーインパルス」の隊長を務めるのは、遠渡祐樹2等空佐です。なんと、今回フライトを行った庄内地方のほぼ中央に位置する三川町の出身なのです。TACネーム(パイロットに与えられるニックネーム)は、山形県の名産品である“さくらんぼ”に因んで「チェリー」です。
遠渡2佐は、2020年6月、第13代目隊長を拝命しました。この年、「ブルーインパルス」は、1960年4月16日に創設されてからちょうど60周年の節目でもありました。こうしたタイミングで部隊を預かることなど、なかなかありません。
…しかしながら、新型コロナウイルス感染症が世界で暴威を振るいます。
本来ならば、60周年を記念し、「ブルーインパルス」は、日本各地で飛行する予定でした。ですが、それもかなわぬことに…。
しかしながら、遠渡隊長は、地道な活動を続けていきます。2020年11月、生まれ育った三川町や高校時代を過ごした酒田市などを表敬訪問します。地元は遠渡隊長を大歓迎し、一躍地元の名士となりました。
そこで、酒田市長をはじめ、地元の方々は「我が街でもブルーインパルスに飛んで欲しい!」と熱烈ラブコールを送りました。
1年を経て、それが叶ったのです。遠渡隊長にとっては、まさに「故郷に錦を飾る」凱旋フライトでもありました。
そうなれば、地元が大盛り上がりを見せるのは必然です。こうして本番当日を迎えました。
イオンモール三川では、付随イベントが行われました。特設フロアには、ブルーインパルスや空自関連のグッズを販売する売店が並びました。モール内のいたるところに、遠渡隊長が笑顔で写るポスターが貼られていました。そのポスターには、「なりで自分さ向がってブレねでまっすぐど!」と書かれています。さらには、遠渡隊長等身大パネル、遠渡隊長のサイン入りポストカードが入ったお酒、などなど、「ブルーインパルス」グッズよりも一際目立つ遠渡隊長グッズの数々。
地元の熱量はゲキアツでしたが、残念なことに、天気には恵まれませんでした…。
この日は朝から大雨。それも強風を伴い、電車に遅れが出るほどです。フライトは午後からでしたが、もはや誰しもが「今日は中止になるのでは…」と諦めかけました。
フライト可否の決断は、12時半。刻一刻と迫る運命の時…。
そこは、遠渡隊長!さすがに持ってる男です!なんと11時頃より、雨はやみ、厚い雲の間から青空すら見えるようになりました。
空自は実施を決めました。松島基地では、「ブルーインパルス」の離陸準備が粛々と進んでいきます。
そして13時5分ごろ、6機は次々と離陸していきました。遊佐町を抜け、酒田港から一旦海を経由し、庄内平野へと戻るコースを辿ります。その途上、日本海病院、余目病院、庄内病院の上空を飛行(本番は予行と少しコースが異なりました)し、メイン会場となる庄内空港やイオンモール三川へとやってきました。
イオンの屋上駐車場、田んぼのあぜ道、空港ターミナルなどから、多くの人が「ブルーインパルス」の演技を見守りました。「サクラ」や「キューピッド」など、人気の演目が繰り広げられていきます。その様子を見上げる人々はみな満面の笑みです。
まだまだコロナ禍の終わりは見えません。「ブルーインパルス」は、人々の不安な気持ちをほんの一瞬と言えど、払拭してくれました。