2022年の70周年に向けた3カ年計画で展開されているホテル椿山荘東京の「庭園プロジェクト」。2020年の第1弾、日本最大級の霧の庭園演出「東京雲海」に続き、第2弾として今冬に登場する光の絶景スポット「森のオーロラ」は、新しい真冬の風物詩として多くの日本人を魅了すること間違いなしだが、その絶景のディテールには、“都会のオアシス”と呼ばれるホテル椿山荘東京ならではのこだわりがぎっしりと詰まっている。
「レーザーを利用してよりテクニカルな演出もできたかと思いますが、ただ単にエンターテインメントとして写真を撮ってインスタ映えする、というのとは少々目的が異なります。やはり“自然現象”という部分にこだわりたかったのです」とは、ホテル椿山荘東京・マーケティング支配人の眞田あゆみさんだ。
「森のオーロラ」は、レーザーを用いて6方向から6層に重なる光を組み合わせることで、オーロラの持つ複数の色のグラデーションを演出しているが、レーザーの光をあえてやわらかくすることで、より自然のオーロラに近づけている。一般的にレーザーは光が直線的で1方向に強く集中する特性があるため、オーロラが放つ複数の色が混ざったグラデーションの光を再現することはむずかしい。そこで、レーザーをぼかす度数の強い特殊なレンズのうち、複数の度数を組み合わせてレーザーに装着することで、異なるぼかし具合のやわらかな光を創り出している。
実は2014年にもオーロラの演出に挑戦していたそうで、上は当時のオーロラの写真だが「綺麗ながらも人工的なオーロラという印象があった」と眞田さん。以前と比較すると今回のオーロラは、まるで自然現象かのようなやわらかい光で出現しているのが分かるだろう。
オーロラが出現する時間はレーザーをオンの状態にしているが、これもレーザーをオンのままにした方がいいのか、あるいは常に美しいオーロラが最適な位置で見られるようにタイミングよくオンオフした方がいいのかという議論もあったという。「毎日、風や湿度など気候が異なるので、それによってオーロラの見え方や見える位置も当然その時々で変わります。自然には毎日まったく同じ景色というものはないのです。これが自然であり、その自然による変化も含めて楽しんでいただければと思います」(眞田さん)
人工的な霧ではありながらも自然界の雲海と同じように、天気や湿度、風などにより、姿・かたちを毎日変えて現れる「東京雲海」も同様に、人為的に意図するところだけでなく、意図しない部分の、その“無計画”な自然現象が楽しめるというわけだ。
ホテル椿山荘東京の「庭園プロジェクト」を一言で表すなら、「ランドスケープ」という言葉がしっくりとくる。ここでいうランドスケープとは単なる“風景”の意味ではなく、建築分野などで都市設計や都市空間などを表す際に使われる言葉。簡単に言えば“景観”で、その土地にある自然と建物などの人工物を総合したそこにあるすべての環境といえるだろうか。
長い年月受け継がれたその庭園を散策すると、初春には約100種2300本の“椿”に歓迎され、初夏には風物詩の“蛍”と時をともにし、秋には紅葉など、7つの季節がうつろう自然が広がり、三重塔をはじめとする史跡が佇む。そしてホテルでは、スタッフによるあたたかなサービスや美味しい食事に包まれる。このサービス的な面も含めたあらゆる要素が組み合わさったホテル椿山荘東京というランドスケープが、私たちに癒しややすらぎを与え、日常を忘れさせてくれるのだ。
言うなれば、「東京雲海」や「森のオーロラ」が生み出す“圧倒的な絶景”はあくまでその要素のひとつあり、現代の最新技術を活用して自然の癒しややすらぎを演出するという新たな価値とともに、既存の自然庭園とコラボすることで意図しない自然現象が生まれる“計画的”かつ“無計画”なランドスケープといえる。
「東京雲海を創ったとき、雲が動くことで風が見えるようになったんです。それで、ご滞在いただいたご家族のお子さんたちが『なんで雲って触れないの?』と不思議そうにはしゃいでいて、そんなあたたかな姿を見られたことがとてもうれしかったですね」と微笑む眞田さん。
かつて「東京に緑のオアシスを」と想いを込められて創られたこの場所はいま、圧倒的な絶景を生み出す庭園とともに、あらゆる要素が組み合わさった新しいランドスケープのカタチとして、私たちに気づきをもたらしてくれる。後編へ続く。
「森のオーロラ」概要
期間:2021年11月11日(木)〜2022年2月7日(月)
出現時間 :19:00 / 19:30 / 20:00 /20:30 / 21:00 / 21:30 / 22:00(1日7回 約5分) ※閉園後のオーロラを楽しむステイプランでは、23:15にもご覧可能。
出現エリア:庭園内 幽翠
見どころ:幽翠池から空を見上げるようにオーロラの演出を見るのがオススメ。
ホテル椿山荘東京
住:東京都文京区関口2-10-8
TEL:03-3943-1111