2021年を締めくくるかのように、陸上自衛隊と米海兵隊による共同訓練「レゾリュートドラゴン21」が行われました。“RD21“と略します。
このコードネームに聞き覚えのない方も多いのではないでしょうか?
それもそのはずで、今回が初となる訓練です。しかしながら、実は布石となる訓練がありました。それが「ノーザンヴァイパー」という訓練です。この訓練は、陸自の中で、北海道の防衛警備を担当する北部方面隊と米海兵隊の間で実施してきました。ですが、今後は、他の方面隊単位でも訓練をしていこう、と言うことになり、コードネームを改めたのです。
RD21の開催期間は12月4日から17日まで。岩手山演習場(岩手県)や王城寺原演習場(宮城県)、矢臼別演習場(北海道)等で行われました。訓練参加部隊は、陸自・第9師団第5普通科連隊(青森駐屯地)等日本側約1400名、米海兵隊・第3海兵師団第4海兵連隊(キャンプシュワブ)等米軍約2650名という、日本国内で行われる日米共同訓練としては大規模なものとなりました。
訓練のテーマは、島嶼防衛です。「日米の部隊が、それぞれの指揮系統に従い、共同して作戦を実施する場合における相互連携要領を実行動により訓練し、日米の連携強化及び共同対処能力の向上を目指す」(防衛省資料より。一部要約)ことを目的に、訓練が繰り広げられていきます。
RD21では、これまでにない米海兵隊を見ることになりました。
と、いうのも、米海兵隊は、これまでの敵地への強襲上陸を主たる戦術としてきた点を改めているからです。その代わりに、敵の長距離ミサイル等の射程内という危険な中で行動する海軍の作戦を陸上からサポートする沿岸域作戦を主たる戦術とします。海軍と共同した作戦を展開するため、前線に拠点を作ります。これをExpeditionary Advanced Base Operation(遠征前進基地作戦)と言います。それぞれの頭文字を取りEABO(エアボ)と略します。
このEABOを遂行するにあたり、米海兵隊に新たに配備されたのが、高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」です。6輪の5tトラックベースの車体の上にロケットランチャーを搭載した小型の多連装ロケット弾です。これを使い、陸上から洋上の敵艦艇や敵のいる島嶼部を攻撃します。従来の海兵隊にはなかった長射程兵器です。
この「HIMARS」をいかにして迅速に展開させるか、これが今後の米海兵隊に必要不可欠な戦術なのです。
今回は、これを演練しました。米空軍のC-130輸送機を使い、嘉手納基地(沖縄県)から海上自衛隊・八戸基地(青森県)へと輸送しました。RD21における米海兵隊のテーマの一つが、この空中機動力を演練することでした。
12月7日11時40分ごろ。C-130が基地上空近傍に姿を見せました。そして11時45分無事着陸。海自隊員の手によりエプロン地区まで誘導されてきます。そしてエンジンを停止すると、後部ハッチから「HIMARS」が降ろされました。
こもで、陸自の88式地対艦誘導弾と合流。このペアで共同対艦攻撃を行っていきます。島嶼部と想定した岩手山演習場へと展開していきました。
なおRD21には、「米軍再編に係る訓練移転」という1面もあります。米海兵隊の活動に伴う沖縄の負担を軽減するため、MV-22Bオスプレイ等海兵隊航空部隊の訓練を日本各地に分散させようというものです。そこで、米海兵隊のオスプレイによる各種訓練が、矢臼別演習場や王城寺原演習場で行われました。