2022 年の食のキーワードになりそうな冷凍食の進化と可能性を探る連載『冷凍飯』。今回はコンビニ界で冷凍食品にエンジンを入れるローソンの取り組み後編を渾身レポートします。
【冷凍飯】2022年はストック食から即食性の高い個食へ!ローソンの冷凍食品が熱い!前編はコチラ
元来からのストック需要に加え、ニューノーマルなライフスタイルへの変化で新たに生まれた”即食”ニーズに合わせた、コンビニらしい便利さを追求するローソンの冷凍食品。今月後半にはなんと、刺身にユッケ、馬刺しが登場する。繰り返すが、いずれもコンビニで手軽に買える冷凍食品としてである。
「当然のことながら冷凍食品は加熱処理されているモノが中心だったわけですが、生に近いモノのニーズもあるだろうという中でその鮮度感をなんとかして具現化したくて、冷凍食品でお刺身といった水産系や馬刺しなどの畜産系にチャレンジしました」とはローソン商品本部デリカ・FF部の島津裕介さん。
ローソンとして大きなチャレンジとなるナマモノの水産・畜産の展開に加え、それが”即食”に対応する冷凍食品として手軽に扱えるとはかなりエポックメイキングだが、島津さんは「提携している専門メーカーさんの技術があってこそです。“アルコール凍結”という冷凍技術が大きなポイントですね」。
通常の冷凍庫では、冷たい空気で食品を凍らせるが、”冷たい液体”を使って食品を凍らせるのが、今回の冷凍の刺身に用いられている液体急速凍結機によるアルコール凍結だ。
軽く原理を説明しておくと、一般に食品の冷凍によるダメージは食品中の水分が凍る際に氷の結晶をつくり、それが食品内の細胞を破壊することで起きる。そのため、凍結までの時間がかかるほど食品の品質は劣化していく。そこで重要になるのが凍結するまでの速さ、つまりは熱を奪う力だ。その点でアルコール凍結で使われる液体は、通常の凍結に比べて熱伝導率が非常に高い。
このアルコール凍結を使用した鮮度抜群の刺身が1月下旬に一部エリアで登場する「真鯛」「カンパチ」(価格各498円)」だ。魚特有のくさみがなく旨味も十分。なんといってもその新鮮さには驚かされる。コンビニで手軽に買える冷凍食品とは思えないクオリティというのが率直な感想だ。
「ほかにもマグロやカツオが候補にあがりました。ただ、それらは保存に適した温度帯があるため、時間が経つにつれて変色してしまうリスクがあり、われわれが目的とした“鮮度感”からは外れてしまいます。最終的に冷凍食品において鮮度感を最もカタチにできると考えた真鯛とカンパチを選びました」(島津さん)
商品完成まで約1年を費やした開発過程では、社内でもさまざまなテストを繰り返したというが、その中で実は社内の反響が予想以上に大きかったというのが畜産系の「鮮馬刺し赤身スライス」(価格798円)と「牛ユッケ風」(価格798円)だ。
実際に試食してみたが、晩酌のつまみにこの上ない。普段はさほどお酒をいただかない小生もついついお酒に手が……。2019年には「グッドモーニングプロジェクト」と題してパンケーキやフレンチトーストを発売したが、今回はまさに“グッドイブニング”をローソンで購入できるというわけだ。
今回の刺身に牛ユッケ風、馬刺しといったほかでは展開できないようなモノを、目新しさや話題性だけにとどめないのがローソン。「昨年発売したローストビーフはかなりのご好評をいただいています。狙いとして”新しさ”はあったにせよ399円の価格は少し高いのではないかと不安もありましたが、蓋を開けてみたらわれわれの予想をはるかに上回る結果になりました」と島津さんも”冷凍飯”に手応えを感じている様子。便利さや手軽さに加え、“美味しい”が選ばれるのはいつでも変わらないのだ。
冷凍食品の強化は、以前から社会的な課題とされているフードロス削減に向けた取り組みでもある。ローソンは、店舗で調理を行い提供している『まちかど厨房』と冷凍食品に注力しているが、“できたて”と“冷凍”を通して食品ロス削減とさらなる美味しさの実現を目指すというわけだ。
スーパーの惣菜コーナーに行かずとも、コンビニの冷凍食品コーナーにいつもの相棒が佇んでいる。即食個食に対応し、美味しさを兼備させた最新の冷凍食品。仕事から帰ったら、まずは缶ビール片手に刺身や馬刺しをつまみ、冷凍食品の進化とともに変わりゆくライフスタイルとそこから生まれる新しいカルチャーを愉しもうじゃないか。