NMKV。決して地球侵略を企む異星人や謎の生命体と戦う特務機関の名称ではなく、三菱自動車と日産自動車の合弁会社の名称。そういえば、三菱はエヴァンゲリンとコラボした災害対策車両(https://www.mitsubishi-motors.co.jp/carlife/phev/NERV/)があるので、あながち関係ナイとは言い切れないカモしれないけれど、今回は軽自動車なのです。筆者が拝借したのはNMKVが手がけた三菱のek X(以下ekクロス)。日産のデイズ、ルークス、三菱のekシリーズの中でも最も個性が出ているクルマだと思います。キャラが立っているというか、うん。スタイリングはデリカD:5を連想させる、いや今や三菱のデザインアイデンティティともなったダイナミックシールドを持つハイトワゴン。
試乗車はTグレードの2WD。実際に近くで見ると巷で言われるほどコワモテ顔ではない印象。試乗車は、サンドイエローメタリックの2トーンカラーとルーフレールが外からわかるオプションで、ドアを開けると、落ち着いた雰囲気のプレミアムインテリアパッケージも追加装備されていました。
シート生地は合成皮革とファブリックの組み合わせですが、これがなかなかどうして。見た目のゴーカさだけでなく、質感も高く高級ミニバンをはじめとするダウンサイザーに人気というのも頷けるモノ。これが5万5000円でオプション可能というのはかなりお買い得かも。
運転席に座ると頭上スペースはさすがハイトワゴンなのですが、視界が広く車両感覚が掴みやすかったです。軽自動車といえどもデカくなったボディながらターボ付きの直3エンジンは軽々とクルマを速度に乗せてくれる。いい忘れましたが、試乗車のパワーユニットは64PS、60Nmのスペックを持つ0.66リッターの直3ターボに2kW出力のモーターとリチウムイオン電池を組み合わせたマイルドハイブリッドシステム。
これが想像以上に力強い。軽自動車には試練の道ともいえる首都高。交通量の多さに伴う加減速が頻繁なうえに道のアップダウンが多く、小排気量のエンジンには厳しいルートでもekクロスは難なくこなします。もちろん速度の落ちやすい箇所が多い東北道や中央道でも気合を入れて踏まなくてもいいのは、心理的にも余裕のヨッちゃんなのです。欲しい時に欲しい分だけ加速してくれる走行性能は結果的にドライバーの疲労軽減につながるはず。もちろん、その気になれば高速道路の右車線の流れをリードできる性能も兼ね備えています。また試乗車には先進快適パッケージのオプションがされていて、昨年の改良でミリ波レーダーが追加されたアダプティブクルーズコントロール、MI-PILOT(マイパイロット)はかなり使える装備でした。ちなみにこのパッケージオプションには電動パーキングブレーキも、もれなくついてきます。
もちろん、オートホールド機能付き。他の便利アイテムは先進安全パッケージのオプション。デジタルルームミラーは雨天時など悪天候での視界も確保しやすいし、マルチアラウンドモニターは車庫入れに便利。
これは人や自転車などクルマの周囲で動くものを注意してくれる移動物検知機能付なので、事故につながる可能性のあるヒヤリハット事例も少なくなるはず。
さて。乗り味はしっかりとした感じでなんとなくドイツ車っぽいベクトルに感じます。くねった道でもその印象は変わらないほどドライバーが感じるボディの剛性感は高いと思います。乗っていて他に感じたのは日差しで顔がジリジリ日焼けする感覚がほぼないこと。そういえばUVカットガラスは全モデルに標準装備だった。こうも違うのか! と自分のクルマと比べてしまう瞬間でありました。逆に筆者が慣れが必要かも、と感じたのはCVTのエンジンブレーキ。状況によっては想像以上にエンジンブレーキが効きます。これをうまく使えば、止まる直前のフットブレーキで減速は十分なのですが、後続車のことを考えると少しばかり慣れが必要かと。
室内の使い勝手はさすが。まず収納が豊富で、忍者屋敷かからくり部屋かといったくらいにあちらこちらにモノ入れがあります。
使い勝手の良さは今やこのクラスの代名詞的な機能になっていますが、ekクロスもご多分に漏れず工夫されています。後席の背もたれは5:5で可倒できるし、倒してしまえば若干の段差はあるものの、荷室はほぼフラットに。
筆者が思わず唸ったのは、後席のシートスライドが荷室側でもできること。
段取りの悪い筆者は荷室を最大容量で使おう! となった場合、後席のスライドを前に出すのを忘れて、メンドーだァ、と歩いて後席のドアを開ける場面があるのですが、これなら荷室側からその操作ができる。なんて君はスバラシイんだ! もう一つ。後席の足元スペースが超絶広いです。身長175cmで平均的(と思いたい)座高の筆者が座ってもフツーに、ごくフツーにですよ、足が組めるのです!
しかし賢い消費者の皆様はこのベクトルのクルマはだいたい同じだよ、と仰るかもしれない。そこで筆者は三菱らしさを紹介いたします。齢40をとうに超えた筆者にとって三菱はパリダカといった「悪路の三菱」か世界ラリー選手権のイメージが強うございまして。
そんな同志も満足な装備があります。まずは雪道やぬかるんだ路面で威力を発揮するグリップコントロールは4WD、2WD問わずに全グレードに標準装備。これはスリップした駆動輪をブレーキをかけて制御し、グリップしている駆動輪を確保するモノ。また坂道を下るときに便利なヒルディセントコントロールも全モデルに標準装備。ちなみに兄弟車の日産版ではこの手の装備は設定がなされていません。
グリップコントロールはわかるけど、とお思いの皆様、意外にもヒルディセントコントロールも便利です。例えばスーパーやホームセンターの屋上駐車場。
そこの下でなぜか坂の下には排水のためのU字溝の鉄のフタ。安全確認のためにはその辺りで一時停止する必要がある、しかも雨、なんて場合。そのためにはくだり坂で極力速度を絞れればフタで滑ってビックリすることもない。ekクロスならスイッチ一つで微速になります。
本来は未舗装路で威力を発揮するアイテムですが街中でも意外にもOKなのです。
この辺りが「悪路の三菱」っぽいでしょ。希望をいえば地上最低高がもう少し高い4WDモデルならば三菱らしさ全開かもしれません。余談ですが三菱では週末探検家というサイトでお天気情報やお出かけ情報も案内してくれています。
さて2020年の改良では従来のeアシスト(全車に標準装備)に標識検知機能、前方衝突予測警報、先行者発進通知、ふらつき警報が追加され、安全面でも運転席のSRSニーエアバッグ、リアシートベルトのプリテンショナー機構(衝突時など衝撃があった場合にベルトを巻き、拘束性を高める装備)など充実したモノに。現代の必需品、スマホなどの充電用USBポートも全モデルに新設されるなど商品力を高めたekクロスは146万3000円から。
週末探検家 https://www.mitsubishi-motors.co.jp/special/weekend-explorer/
ek X T
価格 | 168万8500円から |
全長×全幅×全高 | 3395×1475×16(mm) |
エンジン | 659CC直3ターボ |
最高出力 | 64PS/5600rpm |
最大トルク | 100Nm/2400-4000rpm |
モーター最高出力 | 2.7PS/1200rpm |
モーター最大トルク | 40Nm/100rpm |
WLTCモード燃費 | 19.2km/L |
三菱自動車 https://www.mitsubishi-motors.co.jp/index.html
問 三菱自動車お客様相談センター 0120-324-860