はじめまして。橋口孝司(はしぐちたかし)と申します。
この連載のコンセプトは、ずばり『お酒を知って、お酒を愉しもう』。
私の専門であるウイスキーを中心に、お酒に関する様々な情報や知識をお伝えしていきたいと思います。
お酒を片手に読んでみよう。。。そんなシーンも素敵だなと思ったので、読みながら飲むのにおすすめのお酒も、毎回ご紹介していきます。
お酒を片手に気軽にお読みください。
★今回おすすめのお酒
「ホットウイスキートデー」
3月は春。とはいいつつ、寒い夜が続きますね。
そんな夜は温かいウイスキー、ホットウイスキートデーはいかがでしょう?
ホットウイスキー、お湯割り、ホットウイスキートデーなど呼び名はさまざま。
今回は、本格的スコットランド・グレンフィディックスタイルのホットウイスキートデーを飲みながら酒千夜をお愉しみ下さい。
※詳しいレシピはこちら
人間にとってお酒とは?
記念すべき第1回目は、「歴史・起源」から始めましょう。
お酒の誕生・起源とは?人間にとってお酒はどんな存在だったのでしょうか?
お酒=酔っ払う、というイメージがあると思います。現代では“ストレス解消”のためにお酒を飲むという事もよく聞きます。お酒を飲み過ぎると病気のリスクが高くなるともいわれてきています。
では、そもそも人間はなぜお酒を飲むようになったのでしょうか?
人類の歴史を振り返ると、私たちの祖先たちは「酒を命をつなぐための“栄養”としていた」という可能性がみえてきます。
「アルコール分解遺伝子」の研究からも、人類が生き延びたこととお酒が深く関わっているという研究が発表がされています。ほとんどの動物が持たないアルコール分解能力を得たことで、発酵した果実を食べても酔っ払うことなく、栄養を得ることができたのです。幸運にも「酒になった果実」を食べられるようになった祖先だけが生き延びて、数を増やしていったと考えられているのです。
そして人類は、食料を安定的に得ることのできる「農耕」を始め、集団生活をするようになりました。その生活の中では、集団の結束力を高めるためにお酒が人々の生活に必要となっていったと考えられます。
アルコールが脳にもたらす作用として、緊張や警戒心のもととなる「理性」の働きを弱めるといわれています。お酒には、警戒心が解けて気分が開放的になり、人と打ち解けやすくなるという効果があるのです。
お酒は「社会や文明築くための特別な力」として欠かせない存在となり、様々なお酒の誕生・発展の歴史へと繋がっていくのです。
次に、人類が飲んでいた「世界最古のお酒」についてご紹介します。世界各地・多方面で研究が重ねられていて、様々な説があります。
ここでは有名ないくつかの説をご紹介したいと思います。
人類最古のお酒「蜂蜜酒(ミード)」
蜂蜜は、農耕が始められる前の古代から世界各地で採集されていて、食生活に取り入れられていたことが分かっています。
「蜂蜜酒(ミード)」についてのはっきりとした記録はありませんが、およそ1万4千年前、クマに荒らされた蜂の巣に雨などの水分が入り、自然発酵したものを飲んでみたら美味しかった、という説もあります。
糖度や栄養価が高い蜂蜜は、水を加えるだけで発酵しお酒になるため、最初は偶然お酒になったと考えれます。簡単に発酵しお酒になるため、最も手軽にお酒をつくることができる材料だったと考えられているのです。
古代ギリシアでは、蜂蜜酒は神々のお酒とされ、最高神ゼウスの好物でもありました。
中国説
現在確認されている最古のお酒の痕跡は、中国で発見されています。
約9000年前(石器時代)頃の中国の黄河流域にある、賈湖(ジアフー)遺跡から出土した壊れた陶器の欠片から、蜂蜜、米、果物を醸造したお酒の痕跡が見つかったというものです。陶器片を分析したところ、米・果実・蜂蜜などで作った醸造酒の成分が検出されたのです。
ワイン説
東欧の南にあるコーカサス地方・現在のジョージアでは、世界最古と言われる紀元前6000年頃のワイン醸造の痕跡が発見されています。
また、ヨーロッパでは紀元前5000年ごろにはワインの醸造が始まっていたと考えられています。紀元前5000年頃の出来事をシュメール人が書き綴ったメソポタミア文明最古の文学作品「ギルガメッシュ叙事詩」に、船の建造に携わった労働者にワインが振る舞われたと記されていたり、紀元前5000年ごろのものと思われる遺跡から、ワイン造りで必要な果汁を絞るための道具と考えられる石臼が発見され、ワインの原料となるブドウを育てるためのブドウ畑があった痕跡も見つかっています。
エジプトでは紀元前4000年代の壁画にワイン造りの様子が描かれています。