日本唯一の完全装甲車化普通科連隊
第7師団というと、主たる戦力となるのは、戦車部隊であるのは間違いありません。ですが、特筆すべき部隊がもう一つあります。
それが第11普通科連隊です。
各師旅団には必ず2個以上の普通科連隊が編成されています。例えば、首都東京を守る第1師団であれば、第1普通科連隊、第32普通科連隊、第34普通科連隊の3個普通科連隊を隷下部隊として持っています。
しかし第7師団には第11普通科連隊の1個連隊しかありません。その代わりとして、師団の中核となるのが、3個戦車連隊であるわけです。
その第11普通科連隊ですが、機甲師団たる第7師団隷下部隊であるため、唯一無二の完全装甲車化普通科連隊となっているのです。その理由は、戦闘団を編成した際、90式戦車とともに行動する必要があるからです。
そこで、今回改めて、第7師団祭を通じ、この第11普通科連隊をご紹介しましょう。
第11普通科連隊が持つ最強の打撃力
それでは、第11普通科連隊の編成から見ていきましょう。
連隊本部及び本部管理中隊、第1~第6普通科中隊、重迫撃砲中隊となっております。主たる戦力となるのが、第1、第2…と番号が振られた、通称“ナンバー中隊”となります。これは、他の普通科連隊も同様です。
ですが、その中身は大きく違います。なんと、第11普通科連隊のナンバー中隊には、「89式装甲戦闘車」が配備されているのです。これは、世界では歩兵戦闘車と呼ばれる装備となります。英語表記のInfantry Fighting Vehicleの頭文字を取りIFVと呼びます。1980年頃より、米陸軍に配備されたIFVである「M2ブラッドレー」を参考に89式装甲戦闘車を作りました。ただし、自衛官は歩兵(Infantry)ではないという考えから、“I”を取って、FVとだけ呼びます。
スイスのエリコン社製の90口径35㎜機関砲KDEを主砲として採用しました。砲塔を挟む形で、79式対舟艇対戦車誘導弾、通称「重MAT(じゅうまっと)」のランチャーが装備されています。車体は兵員輸送用のキャビンとなっており、操縦手などFVの運用にかかわる3名に加え、7名の普通科隊員(1個分隊に相当)が乗車できます。
この89式装甲戦闘車を配備しているのは、第11普通科連隊のみです。
加えて、他舞台での足となる輸送車両と言えば、小型トラックや高機動車が主となりますが、この部隊には73式装甲車が配備されています。これも他の普通科連隊にはない特徴です。
また重迫撃砲中隊と言えば、普通科最大火砲である120㎜迫撃砲を配備しています。この砲にはタイヤが付いており、通常は高機動車でけん引して運びます。ですが第11普通科連隊の場合、高機動車では、戦車やFVとは行動できません。そこで、装甲車の中に120㎜迫撃砲を搭載し、そのまま移動し、降ろすことなく射撃できるようにした「96式自走120㎜迫撃砲」を配備しました。
このように他の普通科連隊と比べて、完全なる装甲車化普通科連隊となっているのがこの第11普通科連隊なのです。こんな普通科連隊、他にはありません。
第11普通科連隊の重迫撃砲中隊に配備された96式自走120㎜迫撃砲。24両しか生産されず。