モータ付きでもスバルらしかった
スバルXVに試乗!


 6月2日発売の本誌では、いろいろなジャンルのSDGsをキーワードに特集を展開中。スバル・XV(以下、XV)もモーターアシスト付きの水平対向エンジンということで登場。そこで、ん?! 水平対向エンジンにモーター? そこにスバルらしさはあるのか? ということが気になる読者の皆さま。筆者も少し気になっており、そのあたりを実際に体験してきたので、そのレポートをご報告。

 XVはスバルのクロスオーバーSUV。街中のCMやクルマのシティライクな雰囲気に一部の体育会系スバリストから顔をしかめられたとかそうでないとかいわれているモデルだ。デビューは2017年。その時の試乗会は4月末にスキー場のゲレンデで行われたのだが、季節外れの雪! に見舞われ斜面には積雪と溶け出した雪でグチョグチョのビチョビチョなコンディション。しかし腕自慢のプレス関係者の皆様は「絶好のスバル日和じゃない」と。実際Xモードを試さなくても走れたのだが、そのスイッチを入れることで筆者のようなボンクラでもより安心してゲレンデを登ったり、降りたりでき、さすが、スバルと思った記憶がある。

それから何度かアップデートが重ねられ、今回活躍してくれたのはトップグレードのアドバンス。

デビュー当初から大きなデザイン変更はないが、細かく観察すると、フロントグリルのデザインがちょっと変わったかな、程度。あとは大きくなったバンパーで力強さが増した感がある。インパネ周りもデビュー当初から大きな変更はない。

シートはオプションの本革シート。アドバンスのみブラックとネイビーのツートンでステッチはブルーのシャレオツなモノ。

後席のスペースも十分で、総合的な質感も高く、輸入車からの乗り換え組も多いというのも頷けた。

搭載されるエンジンはスバルが1966年から一貫して作り続ける伝統工芸品、水平対向4気筒の第三世代になる。型式はFB20。

最高出力145PS、最大トルク188Nmのスペック。ちなみに2つあるバッテリー、向かって右はスターター用、左はエンジン再始動用だ。モーターはCVTに組み込まれるカタチで搭載。そのリチウムイオン電池はトランク下に収まる。

その関係もあって、ジツは燃料タンクが1.6リッターグレードの純ガソリンエンジンの63Lから48Lに変更されている。F1同様軽くなるのはいいこと、かも。

 さて。最大の関心はモーターによって、あのエンジンフィーリングやサウンドといったスバル車の「ならでは」はe-ボクサーでどうなったか、ではないだろうか。

e-ボクサーは世間一般的な表現ならばマイルドハイブリッドモデルで、任意でのEV走行はできない。実際に走り出す時もエンジンがオンだったり、モーターオンリーの加速だったりした。巡航中でもほんの数秒だがエンジンが停止するなど燃費に配慮している感じだ。そしてモーターからエンジンに切り替わる時は分かりやすい。このショックを和らげるのもドライバーに託された試練かもしれない。

e-ボクサーはそういう感じでエンジンのオンオフをするけれど、こと燃費だけをクローズアップすると「ないよりマシ」程度。しかし賢明な読者の皆様、「でしょう」と思うなかれ。このモーターはメーカーも謳うように、ここ一番での加速感や悪路走行時のコントロール性の向上に重点を置いているのだ。つまりスバルの考えるドライバーが主人公である、という思想は確実に感じられる。走っていても最初のうちはその切り替えのショックばかりを気にしていたが、走らせていると水平対向エンジンのウィークポイントともいわれる踏み込んだ時に感じる若干の応答性の悪さをカバーしてくれるメリットもあることに気がついた。

 そしてステアリングのSIドライブのスイッチをスポーツにすれば、実用域でもターボのような加速感を味わえる。エンジン自体も高めな回転を保ち、コーナーの脱出などでは気持ちよく走れた。また通常のIモードでは、よくできた「低回転でもトルクフルな扱いやすいNAエンジン」のフィーリングに。急激なパワーやトルクの立ち上がりが少なく、乗りやすい。おそらく雪道や未舗装路のようなコンディションではかなり扱いやすいはず。メーカーの的をえたり!だ。もちろんそんな状況で床まで踏んでもシンメトリカルAWDがしっかり路面を掴んでくれるが。

また、SNOW・DIRTモードとより深いぬかるみを想定したDEEP SNOW・MUDのモードが選択できるようになったXモードのスイッチをあらかじめ押しておけば、鬼に金棒、シャアにはジオングといった感じだろう。

 つまりe-ボクサーであっても自分の手(足)でエンジンをコントロールできる楽しみは健在。もちろん上まで回した時のボクサーサウンドも控えめだがきちんとBGMになる。生粋のスポーツモデルではないから、この控えめ加減がちょうどいいと思う。不満という不満は床まで踏んだ時に感じるCVTの空回り感は皆無ではないところが体育会スバリストからするとマイナスかもしれない。しかーし! 普段から床まで踏むことも皆無。合流時でも軽くキックダウンすれば十二分なパワーとモーターのアシストで加速してくれる。最低地上高は200mmもあるのに、旋回時にはフロントが入りにくいこともなかった。さすが水平対向。スバルグローバルプラットフォーム(以下、SGP)の恩恵もある。とにかくクルマ自体がしっかりとしているのだ。鈍感な筆者がわかるくらいなので皆様はもっと敏感に感じていただけると思う。ソレについて詳しくは専門誌に譲るが、例えば障害物を避ける時にステアリングを切って避ける。今までのモデルだとステアリング、サスとボディ、それからタイヤという順の動きがわかるような感じだが、SGPはそれらが瞬時に同時な感覚。言うなれば三位一体の攻撃(編集部注:浦野千賀子先生の漫画、「アタックNo.1」に登場する必殺技)なのだ。走っているXVを見てもタイヤが上下によく動いているのがわかる、つまり足がよく動くのだ。

 XVを洗練された単なる都市型SUVと思うなかれ。オンロードでの走りも楽しめるのだ。例えば、インパネのマルチファンクションディスプレイに表示される車両情報。水温だけでなく油温が表示される。

ドライバーに操縦を託す=車両の状況管理も託す=ドライバーが主役であるのだ。似たようなクルマには油温計は基本的に装着されていないことが多いではないか。SUVとしても傾斜やステアリングの切り角もわかるようになっている。

きっとエンジンにターボが付いていたり、派手めなエアロパーツがSTiブランドから用意されていたりしたならば体育会系なスバリストも納得したかもしれないが、文化系でもスバリストなのだ。細マッチョ系といえばいいだろうか。日常域でも乗りやすく、エンジンを自分でコントロールできる楽しさ、車両を自分のレベルにあった技術化における操縦感はまさにスバルのクルマだ。それでいてアイサイトに代表される安全技術も抜かりはない。どうしてもモーターアシストに抵抗があるなら純ガソリンエンジンもラインナップにあるXVの車両価格は220万円から。

XV アドバンス


価格295万9000円〜
全長×全幅×全高4485×1800×1575(mm)
エンジン1995cc水平対向4気筒
最高出力145PS/6000rpm
最大トルク188Nm/4000rpm
モーター最高出力13.6PS
モーター最大トルク65Nm
WLTCモード燃費15.0km/L

スバル https://www.subaru.jp/
問 SUBARUお客様相談センター 0120-052215 

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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