#3 CHIMAYO
深い歴史をもつチマヨ織りによるベスト。
ニュースペインにとっての最後の未開拓地、リオ・グランテ峡谷北部の開拓者集団が入植した村の名前をとってつけられた伝統的機織り技術の産物だ。
遠くスペインの祖先が見てきた風景がこのベストをはじめ、バッグ、コートなどさまざまな形になって、世界に広がっている。
“チマヨ織り”の歴史はおよそ17世紀後半にさかのぼる。ニュースペイン(現在のメキシコの前身)からリオ・グランテ峡谷北部(現在の米合衆国ニューメキシコ州チマヨ村)へやってきたスペイン系開拓集団のなかにガブリエル・オルテガという若者がいた。辺境地での生活は厳しく、当時の人々は衣類、毛布、敷物などをつくりだす機織りと、それらの材料をとるための牧羊や紡績技術を脈々と受け継ぎながら自給自足の生活を続けていた。四代目まではそのような暮らしが続くが、1885年、チマヨ南西約24キロにあるエスパニョーラ近郊に鉄道が敷かれ、アメリカ東部の文化様式が流入し、トタン屋根、缶詰食品、ミシンなど多種多様の生活用品がもたらされるようになると、村の環境も激変する。
この地を訪れた東部の人々はその文化様式に驚き、チマヨ織りのブランケットや手工品を土産、または新たなる商材として買い求め、チマヨ織りに産業の芽が出始める。1918年、五代目ニカシオとその妻がチマヨに雑貨店を開き、木機によるブラケット類の販売を始める。第二次大戦後、現在に続く店舗を構え、バッグ、コート、ジャケット、ベストなど、チマヨ織りの伝統を表す商品が拡大、広く知られるようになった。今日販売されている製品の大半は、チマヨおよびその周辺に住む織り手たちによって、昔ながらの製法で家内工業的に生産されている。
チマヨベストの源流はオルテガ。ここからすべてが始まった。
オルテガと並び称される高品質の手織物ショップ、トルヒーリョス・ウィーヴィング・ショップのもの。
こちらもオルテガから分家した
センチネラ工房のオリジナル。
チマヨファンの間では一番芸術的との評価も!?
チマヨの元祖、オルテガファミリーが手がけるベスト。
民族的なテイストが強く、王者の風格が漂っている。
AMERICRAFT社の製品で70’sくらいのもの。チマヨ製品ではないが、すでにこの時代このスタイルはコピーされている。
SOUTHWEST ARTS&CRAFTS社のチマヨベスト。少し横幅があり、前合わせにボタンとループがついている。
同じデザイン、配色がふたつとない、手工芸品チマヨベストの魅力
スカーレットレッドを基調に、スカイブルー、ブラック、ホワイト、グレーの濃淡を組み合わせたオルテガのチマヨベスト。
くるみボタンを4つ使っている。
オルテガのチマヨベスト。
同じスカーレットレッドを基調にしても、生成りのホワイト、ブラウンのグラデーション、
グレーなどの配色で赤が落ち着いて見える。こちらはブラウンのくるみボタン。
ソニックブルーを基調としたオルテガのチマヨベスト。
オルテガ社は先祖代々8代にわたって入植当時と同じ生産方法を続けていることに強い誇りをもっているという。
創業一家の家族、血縁者、近隣の親類縁者が中心となって事業を続けている。
表はブラックの無地、裏にはドクロのマーク。参考商品。
チマヨベストの魅力として、同じ配色やデザインが
ふたつとしてないことがあげられる。
手織りならではの、仕上がりのファジーな感じも他の衣類にない魅力。
こちらはセンチネラ工房のチマヨベスト。元祖オルテガから分家するような形でセンチネラやトルヒーリョスなど、有名チマヨ織り工房が散在する。これはジッパー仕様になっている。
チマヨアイテムをはじめニューメキシコのお土産まで当時の空気感たっぷり
初出:ワールドフォトプレス発行『モノ・マガジン』2011年2月16日号
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