ジツは隠れた本気モデル?
CX-5 FIELD JOURNEYに乗ってみたゾ


モノ・マガジン本誌でもアウトドアの特集があり、その中で登場したのがCX-5。CX-5といえばマツダのシティ派SUVとして人気のモデル。また同車は世界中で販売されており、その3分の1を占める販売台数というから同社の代名詞のひとつといっても間違いはあるまいて。

 さて。CX-5、なかなかに洗練されたデザインとその雰囲気、スポーティな走りで筆者は完全なシティ派SUVであると思っていた。ところが周囲から気合いの入ったCX-5もある! の情報が。これはホントかどうかコトのシンソーをご報告せねばならぬ。というわけで特別仕様車、フィ−ルドジャーニーのディーゼルモデルを外に連れ出した。この特別仕様車はモデルイヤーとして5年目を迎えた2代目(編集部注:早い話が現行モデルです)に追加されたモデルで、オフロード志向を高めたクルマ。クルマ自体は2021年にヘッドライト、グリルなど新しいデザインを採用するなどマイナーチェンジした。さてフィールドジャーニーである。グリル左上にライムグリーンのアクセントがあるのが特長。

ちなみにこのライムグリーンのアクセントは室内のエアコン吹き出し口やシートのステッチなどにも使われ、ギア感を高めている。

ボディカラーのジルコンサンドメタリックは新色でフィールドジャーニー以外にもオーダー可能。ボディカラーから受ける雰囲気でシャレオツなSUVだと思ったが筆者、足元を見てムムムっと唸った。な、なんとタイヤがいわゆるフツーのサマータイヤではない!

その足元には悪路本気組御用達のヨコハマ・ジオランダーのオールシーズンモデルを履いているのだ。このオールシーズンタイヤはフィールドジャーニーだけの特別装備。加えてルーフのシステムキャリー(純正アクセサリー)と相まって、その雰囲気はアウトドアの達人風。

さらにマニアックな情報を入れればこのタイヤを履くにあたって通常モデルとは若干違うセッティングが施されているという。

 では、一路撮影場所に出発。マイナーチェンジでスプリングやダンパーの特性を見直しているだけあり、不快な振動や突き上げ感は皆無。ただしサマータイヤと比べると若干のタイヤノイズが聞こえるのは致し方ないところだろう。一方、室内空間は広々。後席も余裕があり、

フィールドジャーニーには後席用のシートヒーターも標準装備。ウィンタースポーツもバッチコイ! な快適さである。

 しかしながら。何度乗ってもCX-5は乗りやすい。アクセルペダルの適度な重さが疲れにくい。特に試乗車は450Nmという大トルクをたった2000rpmで発生するのであるからして。その微妙な力加減をコントロールするのに、このアクセルペダルはコントロールしやすいのだ。結果的に運転時の疲労軽減になる。一方最高出力は4000rpmで200PSを誇る。ディーゼルだから回転が鈍いとかはもう過去の話。詳しい話は専門誌に譲るけれど、スカイアクティブDはレッドゾーンまでよく回るエンジンで、回転のピックアップも楽しいユニットなのだ。

 では楽しいだけか、というとそうではない。街中では太いトルクのおかげで意識して踏み込まなくても交通の流れに乗れるし、少しだけアクセルをオンにすればその流れをリードできる。筆者のようなズボラなボンクラでもラクショードライブ可能。これは高速道路でも同様。またフィールドジャーニーはガソリン車、ディーゼル車問わずにフルタイム4WD方式を採用するので安定性は抜群なのだ。もちろん最新の運転支援システムを使えば高速移動の疲れはグン! と減る。

 高速を降りてクネッタ道も走らせれば楽しい。全モデルに標準装備のGVC(Gベクタリングコントロール)は運転が上手くなった気分になれるし、気持ち良くコーナーをクリアできる。GVCはステアリング操作に応じてエンジンの駆動トルクを変化させるというモノ。なんのこっちゃ? というと、例えばコーナーへ侵入。するとエンジンがパワーを絞る。必然的に前かがみの姿勢が作り出され、タイヤのグリップ力を確保、するとステアリングの応答性が高まり、旋回しやすくなる。そしてステアリングの切り込みが終わると絞ったパワーを出し脱出に備える。よほどの無理をしない限り安定してコーナーを抜けられる。文字にすると読むのがメンドーなことを瞬時にクルマがやってくれる。つまり、ドライバーは意識せずとも、気持ちよくコーナーをクリアしていくのだ。もちろん腕に少しばかり自信のある方が乗っても楽しさは変わらない。逆にクネッタ山道に苦手意識を持つドライバーでも恐怖感なく走れるはず。それでいてアシストは黒子に徹するから自分が主役感もあるのだ。これでスポーツモードにすればもっとクイックなステアリングが楽しめる! と思ったのだが、ディーゼルモデルにはスポーツモード(後述)がなかった。もちろんオールシーズンタイヤということもあるので、旋回の楽しさは通常モデルの方が若干上かも知れぬ。

 さて、撮影のため未舗装路に。その前にシフト脇のスイッチでオフロードモードへ。

メーター表示もオフロードモードに。

このMi-DRIVEは運転状況、路面状況、車両状況などで走行モードを切り替えるモノ。オフロードモードはフィールドジャーニーのみに設定される。また同じフィールドジャーニーのガソリンエンジン車はスポーツモードも備わる。

 で、オフロードモードである。これは後輪へのトルク配分を最大化、空転時でも接地輪に駆動力を伝達することで悪路走破性の向上、急斜面の発進時には路面の勾配を検知しアイドリング回転を上げて下がらないようにする機能も備えている。都市型SUVいいながらも結構な本気モードなのだ。実際砂地の斜面を降りる時や昇る時など全く問題がなかった。一度、登坂時に前輪が空転して、冷や汗をかいたが、スタックすることもなく脱出できた。

 フィールドジャーニーのラゲッジスペースはそんな砂だらけなエリアでも気にせず使えるようサブトランクは防水加工だし、積載物の積み下ろしでもバンパーを傷つけないようカーゴステッププロテクション(純正アクセサリー)も用意されている。

 CX-5には今回のフィールドジャーニーを含め、ベクトルに応じて4種の特別仕様車がラインナップされている。豊かな上質感を持つ「エクスクルーシブモード」、スポーティなベクトルに振った「スポーツアピアランス」や「ブラックトーンエディション」。いずれも素性の良さに付加価値を加えたモデルで、いうなれば綾波レイなのだ(編集部注:大人気アニメ、エヴァンゲリオンのヒロインです)。

包帯姿から、制服姿、白いプラグスーツまで萌えポイントを抑えたクルマであり、AT(フィールド)全開の世の中、MTもラインナップにあるのも魅力。クルマを移動手段と考える人にも相棒と考える人にもスポーツの一環と考えるユーザーにも人気というのが頷ける。CX-5は267万8500円から。

CX-5 XDフィールドジャーニー 4WD


価格355万3000円から
全長×全幅×全高4575×1845×1690(mm)
エンジン2188cc直4ディーゼルターボ
最高出力200PS/4000rpm
最大トルク450Nm/2000rpm
WLTCモード燃費16.6km/L

マツダ https://www.mazda.co.jp/
問 マツダコールセンター 0120-386-919

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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