ギタリストとして多方面で活躍し、大のギター好きとしても広く知られている“よっちゃん”こと野村義男さん。モノ・マガジン2021.3.2号のギター&ウクレレ特集では、そんな野村さんが現在ウクレレにハマっている様子を紹介したが、よっちゃんのギター話も聞きたい! ということで、ここでは本誌ではお伝えできなかった野村さんのギターにまつわる話を2回に分けてお届け。さらに「モノ・マガジン読者に“ギター沼”にハマってもらおうと思って(笑)」と野村さんが持参してくれた、とっておきのコレクションも大公開。初蔵出しモデルにも注目を!
ギターとの出会いに姉の存在アリ!
「初めてギターに触れたのは小学5年生のとき、姉ちゃんの拷問で(笑)。風やかぐや姫にハマっていた姉ちゃんが、フォークギターを始めたのはいいけれど弾き語りだけではつまらなくなったんじゃないですか? 隣の部屋でプラモデルをつくっていた僕を自分の部屋に呼びつけて、Eマイナーのコードを押さえさせて『もっと強く押さえないと音出ないでしょ!』って。そのときは指が痛いだけでした。でも、次第に自発的にギターに取り組むようになったんです。だって、コードを2つ3つ覚えたら面白いんだもん。姉ちゃんがいなければ、僕はずっとプラモデル少年だったような気がします(笑)」
この世のすべてはフォークギター!?
「もともと音楽には興味がありませんでした。フィンガーファイブ、ピンクレディ、ジュリーなど、流行りの音楽を聴くのは楽しいけど、音楽をやりたいとは思わなかった。だから、楽器にもまったく興味ナシ。でも、ちょっと弾けるようになったら面白くなっていったんですよね。普通だったら、“リッチー・ブラックモアに憧れて”とか“女の子にもてたいから”とか“あの曲が弾きたいから”といった動機があるんですけど、僕はゼロ(笑)。しかも、当時の僕はこの世のすべてはフォークギターしかないと思っていましたし、エレキギターの存在もまったく知りませんでしたからね」
Charさんの演奏を見て衝撃を受けた中学1年の春
「テレビを観ていたら、Charさんがペッタンコで白く塗られた穴の開いていないスイッチが付いたギターを弾いていたんです。ギターソロになった瞬間、カメラがギターに近づいたと思ったら、Charさんがボリュームを上げたんです。『僕のギターにこんなの付いてない! 得体のしれないギターみたいなアレは何?』って(笑)。そこからレコード屋さんに通うようになってLPのジャケットを見ていくと出るわ出るわ、得体の知れないスイッチが付いたものを持っている人が写ったジャケットが! これら一連の出来事は僕にとってかなり衝撃的で、その頃からエレキギターの魅力に憑りつかれていきました」
チャリンコで楽器屋めぐりに明け暮れる
「エレキギターに気持ちが持っていかれたのはいいんですけど、じゃあ、買えるのか? となると話は別。値段が高くて、すぐには手に入れられませんでした。『だったら、調べてやろう!』って、そこからはチャリンコで楽器屋めぐり。いわゆる“カタログ少年”になったんです(笑)。そうすれば何が欲しくなるのかがわかってくると思って、すごい量のカタログを集めましたね。だって、カタログはタダだから(笑)。いろいろな色やカタチをしたギターを見たり、ディテールを見ているうちにギターのデザインに気持ちがどんどん持っていかれちゃったってワケです」
→続きは『野村義男、「僕がギターを始めたワケ」#2』で!
見てくれ、俺のギターコレクションPart 1
(1)Fender/LIMITED SWINGER(2019)
「2019年にフェンダーから発売された“LIMITED SWINGER”のカタログに掲載されたモデルです。SWINGERは1969年にUSA工場でごくわずか生産されただけで、いまやコレクターズアイテムにもなっている幻のギターですが、ごくわずか生産されたギターのうち、僕が9本持っていることもあって、「再販したいので監修に入ってくれませんか?」とフェンダーから連絡があったんです。僕のギターコレクションの中の1本を採寸して全部バラして、型を起こし直して……それで2019年に再販したんです。そんなこともあって、思い入れのある1本として紹介させていただきました。それにしても……当時モノのSWINGERを9本持っている人は僕もお会いしたことがないんですよね。でも、実はこっそりと待っていたりもするんですよね。『オレは10本持ってるぜ!』と戦いを挑みに来てくれる人を(笑)」
(2)Original Custom/SWINGER BASS
「これは、TM NETWORKでボーカルを務める宇都宮 隆さんのソロツアーで使っているベースです。実は、宇都宮さんのツアーでは4弦しばりというのがあるんです。ベースかウクレレしか弾かせてもらえないので僕はベースを担当していますが、そのツアーがちょうどLIMITED SWINGERの発売と時期が重なっていたので、ベースでスインガーをつくっちゃったんです。フェンダーのMUSTANG BASSを改造した、名付けて“SWINGER BASS”! 勝手にですけどね(笑)。だから、オフィシャルじゃないです、ボクシャルです(笑)。フェンダーの人に写真を見せたら、『こんなベースあるんですか?』って言われるんですけど、ないです! この尖ったカタチがイイんですよねぇ。いままでは、『これって、スインガーベースですか?』って人に聞かれてもとぼけていましたが、いまここで初めて公にしちゃいました」
野村義男
1964年生まれ。東京都出身。1983年、ロックバンド『THE GOOD-BYE』を結成してメジャーデビュー。その後も自身が中心のバンドを結成して活動を続ける。1992年にソロアルバムをリリース。1995年には『PEGレーベル』を立ち上げる。現在は自身のバンド活動の他、多数のアーティストのレコーディングやライブにも参加。写真の『440Hz with〈LIFE OF JOY〉』は制作開始から7年の時を経て完成したという野村さん渾身の1作。55年間聴き続けられる55分間、55人を超える強者のミュージシャンたちとともにつくりあげた24年ぶり自身名義のソロアルバムだ。●価格:3300円 ●問い合わせ:エムアイティギャザリング ☎03-3455-4202
写真/熊谷義久