松田聖子デビューの道を開拓し、快進撃をかじ取りした元CBS・ソニーのプロデューサー、若松宗雄さんの自伝的新書が発売され話題を呼んでいる。日本ポップス史上に残る大成功を仕掛けたプロデューサーを取材した。
PROFILE
若松宗雄
音楽プロデューサー。1969年CBS・ソニー入社。営業畑から制作第六部を率い松田聖子を発掘。現在は自身のエスプロレコーズ、YouTube「若松宗雄チャンネル」を運営しつつ、箱根で「スイッチバックカフェ」をオープン。この7月に初の著書「松田聖子の誕生」(新潮新書)を上梓。
シティポップ再評価のうねりは大きくなる一方だ。この範疇にアイドルソングが含まれることは、あまりない。あまりないが、時にはある。最右翼は松田聖子である。その松田聖子の生みの親、元CBS・ソニーのプロデューサー若松宗雄さんの自伝的新書が発売され話題を呼んでいる。これにモノマガ編集部はある縁を感じた。しばし余談になるがお付き合い願いたい。
編集部は先ごろ話題のEV「トヨタbZ4x」「スバルソルテラ」の試乗会に参加し、取材を行った。
プラットフォームが同じ2台を同日に乗り比べるという興味深い取材会だったのだが、この時、両社で明瞭に異なるポイントとして挙げられたのが、インストールされるオーディオシステムだった。トヨタbZ4xにはJBLカーオーディオが、スバルソルテラにはハーマンカードン製カーオーディオが選ばれていたのだ。「それでは、同じ曲を流してオーディオの聴き比べをしてみようじゃないか」と同行スタッフの選んだ楽曲が『青い珊瑚礁』(ハイレゾ)だったのだ。オーディオ好き編集長は、松田聖子楽曲が試聴会で使われることがあることは知っていた。しかし自ら選んでじっくり聴いた覚えはない。それが……。クルマはトヨタbZ4x、つまりJBLオーディオ。サビあたまの「青い珊瑚礁」は、いきなりわれら取材陣のハートを射抜いてしまった!
編集長も思わず口に出た。「こんなにすごかったっけ?」。
前席両脇にあるツィーターの存在感が大きいが、砂浜の波しぶき、キラメキを思わせるサウンドステージが広がり、そのとき箱根の山道を走っていた我々は一気に南国のビーチに連れていかれたのだ。サウンドを一言でいうなら、リッチ。歌謡曲だからヴォーカルが強いのは当然だが、手練れたバックミュージシャンの一音一音が立ち、みずみずしく、左右のみならず、手前と奥の立体感までも現れるよう。シングル盤の発売日は1980年7月1日。「松田聖子楽曲はディグすると面白そうだ!」と今更ながら感じ始めた直後の、若松さんの新刊リリースだったためこれを縁と感じ、取材依頼をしたわけだ。