8月20日から9月8日の間、オーストラリアのダーウィン空軍基地及び周辺空域において、オーストラリア、イギリス、フランス、シンガポール、韓国、日本が参加しての多国間空軍演習「ピッチブラック22」が開催されます。
この演習に、第7航空団から6機のF-2Aと人員約150名が参加します。
今、日豪防衛協力は加速度的に進んでいます。海上自衛隊はこれまで、日豪2国間での各種訓練から環太平洋合同演習「リムパック」に代表される多国間訓練を実施してきました。これに陸空自衛隊も続いています。ちなみに、陸自は、「タリスマンセーバー」や「サザンジャッカル」など豪主催演習に参加するようになりました。
空自における日豪防衛交流を語る上で衝撃的だったのは、2019年に千歳基地(北海道)にて日豪共同訓練「武士道ガーディアン」を初開催したことでした。豪空軍のF-18が来日し、連日熱い訓練を繰り広げました。
きっと「ピッチブラック22」においても、日豪は戦術技量の向上、防衛協力強化など、目に見える成長を成し遂げることでしょう。
話は遡りますが、2022年2月22日、岸防衛大臣とダットン豪国防大臣との間で電話会談が行われました。そこで、「自由で開かれたインド・太平洋」の維持・強化にますます取り組んでいくことで合意しました。すでに日豪外務・防衛閣僚協議(2+2)共同声明等で、強調されてきた事項ではありますが、そこには、これまで以上に陸海空自衛隊と豪軍による共同訓練の機会を増やしていくと示されており、それが順調に実を結んでいるようです。
さて、実は今回お話したいのは、この「ピッチブラック22」内で、行われるある訓練についてです。航空幕僚監部が7月28日に公開したプレスリリースには、訓練項目として、「防空戦闘訓練、戦術攻撃訓練及び空中給油訓練」と明記されていました。この中の空中給油訓練を行うにあたり、その布石となるある試験が日本で行われていたのです。
それは豪空軍空中給油機KC-30Aと航空自衛隊戦闘機F-2による「空中給油適合性確認試験」です。
空中給油とは、上空で戦闘機等が飛行したまま燃料の給油を受けることを指します。飛び方や任務にもよりますが、戦闘機は概ね1時間程度しか飛行できません。もし燃料がなくなれば、基地に戻り、給油を受ける必要があります。空中給油を用いれば、わざわざ基地に戻る手間がなくなるばかりか、すぐに任務に復帰できるのです。このメリットは非常に大きく、日本をはじめとした各国が空中給油機を持つ理由でもあります。
ただし、空中で航空機同士が近接する危険を伴う作業でもあります。そこで、事前にお互いの機体特性をしっかりと把握し、訓練をしておく必要があります。それが、「空中給油適合性確認試験」と言われるものです。
空自はF-35、F-15、F-2を配備しています。KC-30は、このうち、米軍機を使いF-35とF-15について適合性確認を終えています。運用する国は変わっても、試験をクリアした同一機種であれば、対応可能と判断されるので、空自のF-35やF-15でも大丈夫です。
しかしながら、F-2については、空自しか保有していません。よって、今後KC-30と給油をするためには、F-2と試す必要があります。そのために、KC-30(33SQ:第33飛行隊)が、来日することになりました。KC-30が拠点としたのは、小牧基地(愛知県)です。ここは、県営名古屋空港と滑走路を共にする官民共用空港です。
試験は、4月4日から開始されました。豪側は航空研究開発隊ARDU、空自側は飛行開発実験団が担当しました。試験は何回か行われました。手順はほぼ同じで、小牧基地からKC-30が離陸し、同じタイミングで、岐阜基地からもF-2が離陸し、上空で会合し、空中給油試験を行う流れでした。
KC-30の滞在期間は4月28日までの約一カ月間。概ね天候にも恵まれ、予定したカリキュラムをすべて消化できたそうです。(後編へ続く)