話題のクラフトサケを調べに秋田県・男鹿に行ってきました!

2022.09.01

■皆さんは「クラフトサケ」について知ってますか?

 こんにちは旅好き、お酒好きのライターKikkaです。編集部のO川さんがモノマガで非公認⁉の「お酒部」を結成したと聞いて、秋田で面白いお酒に出会ったのでリポートしたいと思います。皆さんはクラフトサケって聞いたことがありますか?
 知っている人は結構な酒マニアですね〜。クラフトビールやクラフトジンが定着してきましたが、ついに日本酒にもその波がやってきました。最近、日本各地でクラフトサケの醸造所が増えてきて、今年の6月にはクラフトサケ協会も立ち上がったそう。その初代会長が秋田県男鹿でクラフトサケのイベント&見学会を開催すると聞いて個人的に訪問してきました!

 

 それが、8月20日、21日に男鹿市駅前で開催された猩猩宴(しょうじょうえん)と呼ばれるイベントです。全国各地から7つのクラフトサケ醸造所、そして飲食屋台などが集まっていました。当日は生憎の雨だったのですが、県内だけでなく遠路はるばる関東圏などからも日本酒マニアやお酒店の店主などが大集合。なんと2日間で4000人以上が参加したとか!クラフトサケの注目度の高さを感じました。

流石は男鹿、イベント開催を告げると共になまはげが登場。太鼓のパフォーマンスのあとは「悪い子はおらんか〜」と、次から次へと子どもたちに迫り、叫び声があふれました。大人には「ちゃんと飲んでるか〜」「かっこよく写真撮ってくれよ〜」とフレンドリー。

 さてさて、今回集まった醸造所は、このイベントの主催でもある稲とアガベ(秋田県・男鹿)、三軒茶屋醸造所(東京都・三軒茶屋&パリ)、木花之醸造所(東京都・浅草)、haccoba-Craft Sake Brewery(福島県・南相馬市)、LIBROM Craft Sake Brewery(福岡県・福岡市)、LAGOON Brewery(新潟県・新潟市)の7つ。チケット制で、2気になる醸造所のお酒を試飲感覚で楽しめます。果物のレモンやパッションフルーツを使ったり、ホップを入れた濁酒があったりと、馴染み深い「THE日本酒」とは一線を画すものでした。

というか、クラフトサケってそもそも何だろう?と疑問が湧いてきたので、クラフトサケ協会会長で稲とアガベの代表でもある岡住修兵さんに醸造所でお話しを伺ってみました。

■クラフトサケって何でしょう?

Kikka「県外からもたくさんの方がイベントに参加していましたね。これまで出会ったことのないようなお酒がいっぱいで目移りしました。そもそも、クラフトサケって何でしょうか?」

岡住さん「クラフトサケは日本酒と同じく米、水、麹を使って醸造したものに副原料を加えたお酒です。また、副原料を入れることだけでなく工程や原料を引くことも入ります。例えば濾さないどぶろく、麹だけの全麹酒もクラフトサケになります」

Kikka「なるほど。イベントにはパッションフルーツやダシを使ったお酒もありましたが、あれもクラフトサケなんですね!面白いです。クラフトサケ協会も今年できたそうですが」

岡住さん「まだ、協会自体も立ち上がったばかりですし、クラフトサケについてはまだまだ知らない人も多いかと思います。ただ僕としては子どもや孫の世代、その先まで続くような文化を作っていきたいなと思っているんです」

Kikka「岡住さんの稲とアガベではどのようなお酒を造っているんですか?」

岡住さん 「ウチでは地元のササニシキなどと男鹿の寒風山の名水を仕込み水に使ってます。良かったら、見てみますか?」

という訳で、イベントと並行して行われた見学ツアー&クラフトサケを使った野外レストランにも行って行ってきました!


■稲とアガベは地元産にこだわったクラフトサケ作り


 見学ツアーは稲とアガベにとって大事な素材である水について知るために寒風山の中腹へ。ここにある滝の頭というのは名水としても知られ、地元の人も汲みにくる名所だとか。見学ツアーの際にも地元の方々が道路に面した湧水所で水汲みをしていました。

今回は特別にさらに源流まで行かせてもらえました。静かな森を歩くと間もなくして鏡面のような池が広がるとともに鳥居やお社が。昔からとても神聖な場所だったことが分かります。10分程歩くと、岩肌から湧水が迸る水源地へ。滝の頭という名の通り、滝のように力強く水が湧き出ています。岡住さんによると寒風山に降り注いだ雨が岩盤地帯を通り20年以上の歳月をかけて濾過され湧き出てくる湧水群とのこと。毎日約2万5000トンの水がでるそうなので、かなり豊富な水源でもあることが分かりますね。

 稲とアガベでは毎週、ここの水を汲んで仕込み水として使っているそうです。「米は地元100%で自社栽培&契約農家で作ってもらったササニシキなどを使い、水はここの湧水を使うことで美味しいお酒ができるんです(岡住さん)」。なんと地元愛溢れる…と、感銘を受けていると、実は岡住さんは福岡県出身。大学卒業後に秋田の新政酒造で酒造りを学び、米農家に弟子入りして米造りも学んだそうです。酒と向き合うほど、酒造りの奥深さや魅力を感じるとともに、従来の酒の製造方法に対する課題も見出しました。従来の日本酒は米を磨く(削る)ほど良い酒として見られることが多く、50%ほど磨くこともあるそう。「お米自体が力をもっているので、稲とアガベでは磨き(精米歩合)は10%程度です。これは食用されるお米と同じなんです。この美味しいお米を磨く、つまり削り捨ててしまうのは勿体ないなと。タンパク質が少ない自然栽培米ならそんなに磨かなくても良い味を引き出せます。僕が目指すのは米は磨かず、磨くのは技と田んぼと言ってます(笑)」と岡住さん。



■日本酒ではなく、クラフトサケ?

 これだけ原材料や製造方法こだわって造っているということは、クラフトサケの特徴である副原料を入れない、いわゆる日本酒もさぞ美味しいはず。「実はそこがポイントのひとつなんです。今の法律だと、新規の日本酒造免許は取れないに等しいんです。ただ、副原料を入れることでクラフトサケとして国内流通させることができます。社名でもあり、基幹ブランドである稲とアガベ、このアガベとはテキーラにも使われるアガベシロップを副原料に使っていることに由来するんですよ(岡住さん)」。なるほど〜。お酒には法や免許の壁があるんですね…。「ただ、日本酒が造れないからクラフトサケではありません。僕は日本酒も造れるからこそ、クラフトサケの可能性を感じているんです」と岡住さん。技術と経験を積んでいるからこそ、日本酒とはまた違うクラフトサケの世界を広げていけるのでしょう。

さて、クラフトサケの可能性を最大限楽しめる場所があるということで向かったのは、なんと寒風山の山頂。男鹿半島を見ながらのウェルカムドリンクはリンゴを副原料に使ったクラフトサケ。甘味や酸味がしっかり感じられる味わいで、食前酒としても最適です。米とリンゴの組み合わせは思いつかなかった!これもクラフトサケならではと納得。思わず残ったグラスにも手を伸ばしおかわりしてしまいました。聞けば地元で採れたけれど果物としては流通が難しいリンゴを活用しているそう。今後も余ってしまった農作物や、酒粕など廃棄されてしまう食材を活用した商品開発を進めていくとのこと。あぁ地元愛。

■お燗や料理とのペアリングも最高!

 その後は山頂の展望台に期間限定で設営された野外レストラン「曐迎(ほしむかえ)」でコースメニューを堪能してきました。総勢11名のシェフとペアリングのスペシャリストがこの日のためだけに、料理とクラフトサケとのペアリングを考案したというなんと贅沢な…。当日はシェフとペアリングのスペスアリストが、そのメニューを選んだ理由やこだわり、楽しみ方のポイントなどを丁寧に説明してくれました。

 全12品のコースでしたが、1品目のお燗とパウンドケーキという組み合わせにびっくり! しかも、お燗したのは熱燗DJとして名を馳せるつけたろうさん。(DJはやったことないらしい)絶妙に温度管理したお酒でパウンドケーキの風味を引き出してくれました。続いて出たのはビーツのガスパチョと赤紫蘇を使ったクラフトサケ。クラフトサケは赤紫蘇の味や風味だけでなく色合いも鮮やかで素敵でした。全てのメニューをご紹介できないのが残念。

 クラフトサケは冷やしても温めてもまた違った味わいがでますし、副原料の味わいや香りで合わせる料理をセレクトするなど、無限の可能性があるのでは。東京ではお目にかかれない満点の星を見上げながら感慨にふけってしまいました。こちらのレストランは現在は終わってしまいましたが、稲とアガベに併設するレストランでもクラフトサケと料理のペアリングが楽しめるそうです。(要予約)また、猩猩宴が10月2日(日)に東京下北沢にて開催予定なので、興味のある方はぜひクラフトサケの世界を堪能ください。

 日本酒と似てるようで、全く違った可能性を持つクラフトサケ。最後に岡住さんにコメントを頂きました。「クラフトサケの可能性を広げるために、稲とアガベの醸造所を起点に色々と仕掛けていきます。クラフトサケ、男鹿の変化していく様を確かめに、ぜひ一度お越しください!」

■DATA

稲とアガベ

住:秋田県男鹿市船川港船川新浜町1-21

営:11:00~16:00(水~日、月~火定休日)

アクセス:JR男鹿駅から徒歩1分

問:https://inetoagave.com

【東京開催】猩猩宴 https://inetoagave.stores.jp/items/63057f6084bcfd3c7abd0df9

  • 海と酒をこよなく愛すママライター。得意なジャンルは不動産、食、酒、旅行etc。「生きてるだけでまるもうけ」をモットーに、美味しいお酒、おもしろいモノ・ヒト・コトを日々探しています!

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