出汁にこだわる老舗蕎麦屋のような頑固職人、いやマイスターが作り続けるクルマがあります。それはドイツの名門スポーツカーメーカー、ポルシェです。同ブランドの看板車種は911カレラ。マニアからちょっとしたクルマ好きまで911の存在は広く知れ渡っています。なんせ山口百恵さんの歌にも登場するくらいですし。そのカレラ、何がすごいのか。それはスポーツカーの机上レイアウト的には不利なはずのRR(リアエンジン、リアドライブ)方式をずっと採用しているところです。なぜ後ろが重いと不利なのか。例えばコーナリング中、後ろが思いと振り子のように外に振り出されてしまい、安定した旋回姿勢とはなかなかいかないからです。しかし911のイメージは多くの人がコーナリングマシンと認めています。独特のソレを乗りこなす方法は別として、長年作ってきたクルマを知り尽くしたチューニングによって、その速さが実現しているのです。いい女は自分の武器を知っている、と同じモノでしょうか。そしてRR系ポルシェの最強モデルがGT3になります。
その歴史はレースカテゴリーのホモロゲーションモデルとして1999年に始まりました。GT3は、たまにはサーキットでも走ってみようかしらという使い方ではなく、普段からサーキットを攻め込んでクルマの挙動とラップタイムの駆け引きを楽しむ使い方をメーンとして、レーシングユースも考慮されたクルマです。最初のGT3は1999年に登場しました。ベースは当時の996型911。サーキットユースを中心に設計されたクルマは、通常の低い車高からさらに30mmダウン、宇宙一と呼ばれるブレーキ性能にも磨きをかけています。サーキットユースをメーンにしているクルマだけあり、後部座席や消音剤などは装備していません。ただし、「武士の情け」的にエアコンやオーディオはオプション設定で残されていました。
そのGT3も2003年には後期型へスイッチ。後期型には、よりサーキットに焦点を当てたGT3RSがデビュー。
サイドステッカーなどは70年代のカレラRSに通じるモノで、軽量化を図っているはずのGT3よりも軽く、難攻不落の誉れ高いニュルブルクリンク北コースで7分4秒という記録を打ち立てました。その後ベースとなる911(カレラ)が997型になり、991型、992型になっても
GT3はポルシェ伝統のRR方式を継承しつつ、サーキットでの速さを証明してきました。
そして今回デビューしたのが最新のGT3RSです。992型GT3の初のRSモデルになり、「最新のポルシェは最良のポルシェ」の格言通りのクルマです。
パワーユニットは911のアイコニックともいえる自然吸気の水平対向6気筒。4リッターの排気量から525PS/465Nmのスペックを持ちます。これはRSのないGT3よりも15PSアップしています。組み合わされるミッションはポルシェ・ドッペル・クップルング(PDK)と呼ばれるセミAT。
ボディは従来同様にターボモデル用のワイドボディを使用。またこのGT3RSの基本をなすのがセンターラジエターコンセプト。詳しい方はお気づきと思いますが、ル・マン24時間耐久レースでクラス優勝した911RSRに初採用され、その後、純レースモデルの911GT3 Rにも使われています。そのコンセプトが市販車にも用いられたのが今回のRSです。通常ではラゲッジルームになるノーズに大型のラジエターが配されています。ボンネットに開けられた大きな2つの穴はエンジンの吸気温度が高まらないようにボディの外向きに流されるという空気の流れも考慮したレーシングテクノロジーなのです。
フロントの無段階調節式ウィングエレメントと2分割化されたリアウィングは200km/h走行時に409kgのダウンフォースを発生、285km/h時には860kgにもなるといいます。またこのリアウィングの上端はポルシェの市販車でもっとも高い位置になっています。実際、ルーフラインより高い位置に。
その昔、ポルシェGT2の巨大なウィングは「お神輿」と例えられましたが、コチラはさしずめ「鳥居」といった感じでしょうか。現世の実質的なご利益(ダウンフォース)を得られます。加えて、同ブランド市販車初のDRS(ドラッグ・リダクション・システム)も搭載。それはストレートでの伸びを重視するときはリアウィングをフラットにしたり、緊急時にはエアブレーキ機能が作動したりと
お主は戦闘機か! 的に空気の流れや抵抗を積極的に利用するスグレモノ。
室内に目を移すと、RSの持つ純レーシーな雰囲気。シートはフルバケットタイプで、ステアリングスイッチには前出のDRSの操作もここから可能に。
草レースにもぴったりなのはクラブスポーツパッケージでしょうか。これはフロントシート後部にスチール製のロールケージや6点固定式のレーシングハーネス、消火器を装備できるのですが、このパッケージオプションは追加料金なしの太っ腹なモノ。そしてインパネ上部のクロノグラフはチタン製のGT3RS専用品。
純内燃機関のパワーユニットはこれが最後という噂もあり、純粋にポルシェらしさを求めたいリッチなみなさんからポルシェに人生をかけるフリークなみなさん、今こそオーダー時ですよ! ちなみに価格は8月18日時点で3134万円なり。
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問 ポルシェコンタクト 0120-846-911