広坂正美(ひろさか まさみ)という人物を知っているだろうか? RC(ラジコン)カーレースにおいて、世界タイトル獲得14回、全日本タイトル53回など、前人未到の記録を残したレジェンドドライバーだ。世界記録保持者でもある広坂氏は、2019年に長年所属したRCカーメーカーを退職して新たな挑戦を開始している。そんな広坂氏の“いま”に注目し、今後への展望や活動について紹介する連載企画の第1回がスタート!
【第1回】不世出の“ラジコンレーサー”
広坂正美
1970年2月26日生まれ。京都府で幼少~学生時代を過ごし、高校3年生の時にRCカー世界選手権において日本人初となる優勝を達成。高校卒業と同時にRCカーメーカーのヨコモに入社するため上京。以降はヨコモの社員ドライバーとして、世界戦をはじめとする数多くのレースで優勝を飾っている。2019年にヨコモを退社し、現在はフリー。
現在でこそ、RCカーの世界において他の国々からもトップレベルにあると認められる日本だが、1980年代中盤まではプロポ(無線操縦用の機器)やバッテリー、モーターなどのハードウェア面ではともかく、その使い方や操縦技術、レースでのノウハウでは、欧米より格下と見られていた。そんな中、世界的には無名に等しい若き日本人選手が、1987年にイギリスで開催された電動RCオフロードバギー世界選手権で初出場・初優勝の快挙を成し遂げた。その選手は、翌年に行われた電動RCオンロードレースカー世界選手権でも優勝を飾ると、以後は世界のトップドライバーとして君臨し、18年間も世界タイトルを保持するという記録を作り上げた。この人物こそが、この連載の主役、広坂正美氏である。
日本国内ではどうしてもオモチャの延長線上に見られがちなレース用RCカーだが、広坂氏は他の追随を許さない驚異的な実績が注目されて一般メディアなどで紹介される機会も多く、ホビーRCの楽しさや機械技術的なレベルの高さ、競技としてのRCレースが正真正銘のスポーツであることなどを伝えている。そして2013年には、テレビ番組のヤラセ告発騒動で話題となったことを覚えている人もいるだろう。もちろん広坂氏はヤラセの被害者側で、RCカーの素晴らしさを正しく伝えるために告発に踏みきったという。もちろん、この騒動が広坂氏の実績に傷をつけることはなく、むしろ彼の達成してきたことをあらためて世に知らしめることにつながった。
17歳で世界を制して以来、常に頂点に立ち続けてきた広坂氏だが、2008年末をもって世界選手権などのトップクラスのレースからは退くことを決意した。想像以上に鋭敏な反射神経が要求され、さらに海外への度重なる遠征など、体力も必要なRCレースではやはり若い選手が有利であり、広坂氏が第一線から引退した38歳という年齢は、むしろ遅いほうとさえいえた。そして引退後もそれまで所属していたRCカーメーカーのヨコモに留まり、現役選手のサポートやイベントの運営、RCカーの宣伝など、多岐にわたってRC界への貢献を果たしてきた。だが、2019年にヨコモ創業者である横堀智昭氏が勇退を発表すると、自身も横堀氏の退任翌日にヨコモを電撃的に退社し、フリーとして活動を開始することになった。 ヨコモ退社後は、スポット的にレースに出場することはあっても、表立った活動をしていなかった広坂氏だったが、2020年に意外なかたちで表舞台に復帰した。それが自叙伝の出版とYouTubeチャンネルの開設だ。これまでのRCレース暦やレースに臨む心がまえなどをつづった自叙伝「広坂正美のラジコン街道」はAmazonの電子書籍「kindle」で現在4巻まで発売されている。そして自身のYouTubeチャンネルでは、RCレースカーの設計やメカニックとして広坂氏の快進撃を支えた父・正明氏とともにRCカーの製作や走行の様子を精力的にアップし、RCカーの楽しさを世に広める活動を行っている。この連載でも、広坂氏の活動や今後の展望、過去のエピソードなどを多岐にわたって紹介していく予定だ。広坂氏のファンはもちろん、この連載で初めて広坂正美氏を知ったという人も、この稀有な人物の“これから”に注目してほしい。
「広坂正美のラジコン街道」:
・第1巻
・第2巻
・第3巻
・第4巻
広坂正美YouTubeチャンネル「MASAMI RC CHANNEL」:
https://www.youtube.com/c/masamichannel
廣坂正明YouTubeチャンネル「MASAAKI RC CHANNEL」:https://www.youtube.com/c/masaakircchannel
ラジコン世界チャンピオンメカニック「ひろさか」 サイト:http://www.hirosaka.jp/