
モノマガ編集部が選ぶ今一番新しくてディープな特撮のトピックをご紹介する「特撮ばんざい!」の第3回は、バンダイのソフトビニールブランド「ムービーモンスターシリーズ」から、9月24日にリリースされ、話題沸騰中の大魔神を取り上げる。
大魔神が登場する映画『大魔神』『大魔神怒る』『大魔神逆襲』は、1960年代の怪獣・特撮映画ブームの一翼を担った作品として、今も根強いファンが多い。
バンダイは1980年代に「リアルホビーシリーズ」「パロチェンマン」として大魔神を商品化しているが、ソフトビニール製としては今回が初めてとなり、発売が告げられるや「まさか!?」と衝撃が走った。
なぜ今、大魔神なのか? 造形の苦労は?
「特撮ばんざい!」は、ムービーモンスターシリーズの商品企画を担当する、バンダイの關 俊太朗さんに突撃取材を敢行した。

●大魔神ファンが最初に反応
――ムービーモンスターシリーズ(以下文中「MMS」)に大魔神が選ばれた経緯をお聞かせ下さい。
關:MMSは人気も認知度も高い『ゴジラ』『ガメラ』はもちろん、「もっとバリエーションを広げよう」という方針の元、より多彩なチョイスをしていくことになりました。近年ですと『シン・ウルトラマン』や『ULTRAMAN』(※)を展開しましたし、今後は等身大ヒーローやアニメ作品も視野に入れています。この流れから、バンダイでは初ソフビ化となる大魔神が選ばれました。MMSのような長いシリーズに初めてのキャラが加わると反響が高いですし、今までMMSを知らなかった方々へのアピールにもなります。
※ 『ULTRAMAN』=清水栄一氏(原作)・下口智裕氏(作画)による特撮作品『ウルトラマン』をベースとしたオリジナルコミック。メカニカルにアレンジされたスーツデザインが特徴で、ムービーモンスターシリーズからは6体が商品化された。
商品化発表後、最初に反応したのは映画『大魔神』のファンの方々ですね。発売後のアンケートで具体的な年齢層が分かるので、今までのアイテムとは違う回答が集まるのではと楽しみです。
――最近のラインナップ拡大はユーザー視点でも実感されて、敵怪獣のイリス(2021年11月発売)やヘドラ(2022年3月発売)の完成度も高かったです。
關:その辺りの「世間一般的には少しマニアックなアイテム」の反応が良かったのも、幅広いキャラクター展開でいく方向性となった理由のひとつです。

●魔神様の目力を追求

――大魔神と言えば、最も特徴的なのが「顔」ですが。
關:はい。特に目の彩色には力を入れました。直径が1ミリも無いのに表情の決め手となる重要なポイントです。劇中でギョロリと動くあの迫力を盛り込みました。
MMSは子供も遊べるよう相応の安全基準があり、ソフビですからどうしても省略せざるをえないディテールもあります。その限られた枠で造形にこだわり、可能な限り劇中イメージに近くなるよう苦心しました。これはMMSの課題であり、いわゆる「最初から大人向けに作られたフィギュア」と異なるところでもあります。それでも見栄えを重視するため、腰の剣はインジェクションパーツ(※)を使用してエッジを出しています。
※プラスチックを射出成形したもの。ソフトビニールでは表現することのできない鋭角なパーツなどに使用される。

――本体もなかなか珍しい色使いですよね。
關:肌の青は塗装、鎧の茶色は成形色です。色はどのアイテムも難しくて、本物の色をそのままソフビで使うと何か違うなんて事もしょっちゅうです。さらに大魔神のような古い作品では「どの媒体の色が正解なのか?」を検証する必要もあります。色を何パターンか作って、版元さんと吟味を繰り返しました。その上で、このサイズの立体物として映えるよう調整しています。
色に加えて造形も、覚醒前、顔のアップ、『大魔神』三部作の間でもそれぞれ違いますからね。MMSは総合的に見て大魔神らしく見えるイメージに仕上げています。
――可動するのは腕のみでしょうか。
關:はい。ソフビなので明確にプロポーション重視です。大魔神は手を上げただけで絵になるキャラクターですから、屋外やジオラマで撮影しても楽しいと思います。

●ソフビは未来の特撮ファンを育てるアイテム
――映画『大魔神』は關さんの生まれる前の作品ですが、どのような印象をお持ちですか?
關:CGの無い時代にこんな凄い特撮作品が作られ、観ていて「どうやって撮影したんだ」と驚くばかりでした。当時の資料を調べると制作スケールの大きさや光学合成の工夫などに圧倒されます。それだけに、MMSは多く存在するコアなファンの方々たちに納得してもらえるよう頑張りました。
昨今の価格上昇で、良いものを作りたい、かつ子供を含む多くの方が手に取れる価格にしたい、という命題をとりまく状況は非常に厳しいです。ただしクオリティは絶対に下げませんし、ウルトラソフビシリーズを担当した経験からソフビは「特撮トイの入り口」、未来の特撮ファンを育てる重要なアイテムだと学びました。
大魔神は日本の感性に溢れた独特のキャラクターです。MMSの大魔神も、お守りのように皆さんの日常に寄り添えれば嬉しいです。

關 俊太朗 せき・しゅんたろう。2016年バンダイ入社。2017年からボーイズトイ事業部(現・ブランドデザイン部)の『ウルトラマン』関連アイテムチームに所属し、現在はムービーモンスターシリーズも担当している。
五十嵐浩司(KOJI IGARASHI)
株式会社タルカス代表。アニメ、特撮、ホビー方面の出版事業に携わる。9月27日発売の「フィギュア王」では『Xボンバー』の50ページ特集の構成、執筆を担当する。
●『ムービーモンスターシリーズ 大魔神』写真館








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