特撮ばんざい!第6回:検索したら打ち首!話題の都市伝説ホラー『オカムロさん』監督インタビュー!


モノマガ編集部が選ぶ、今一番新しくてディープな特撮のトピックをご紹介する「特撮ばんざい!」の第6回は、『オカムロさん』。「オカムロという名を聞いたり話したりすると、必ず現れ首を狩られ殺される」という都市伝説がモチーフのホラー映画に迫る。
特撮ファンも大満足の必見映画なのだ!

「オカムロさん」とは、江戸時代から伝えられている妖怪。または怪人。オカムロという名前を聞いたり話したりすると、必ず現れて首を狩られる。オカムロと三回唱えると消える。編笠に隠された正体は? ぜひ劇場のスクリーンで!

特殊造形、デジタル合成、CG、そしてライブアクションが見事に融合した『オカムロさん』の首狩りシーンは、バンバン首が飛んで血しぶきドバドバの一方で、「これぞアイデアと技の日本特撮の極致!」とニンマリしてしまうパワーと完成度。とにかく過激でテンボがいい! 恐怖、爆笑、シュール、超展開! なんだこれは!? こんなの初めて観た! 理屈を超えた快感に拍手してしまう!

冷酷無比のモンスターとヒロインたちの限界バトルを描き出したのは、松野友喜人監督。23歳という若さで、脚本・編集・VFXも手掛け、俳優として出演もしている。

日本大学芸術学部映画学科の卒業制作で作った短編が、2021年「カナザワ映画祭」で観客賞を受賞して頭角を現した。その受賞作『全身犯罪者』は、日本の犯罪史に残る凶悪犯罪者たちが、時空を超えて顔を揃えたら……ぶっ飛んだアイデアと、超が付く残酷シーンの問題作。卒業制作で最高賞を受賞したが、あまりの不謹慎さに制作展での上映は禁止された。

その監督の長編デビュー作が『オカムロさん』ときたら、これは、ヤバくないわけがない!

『オカムロさん』は「首を狩る妖怪」という都市伝説が元ネタだが、映画では、ネットで「オカムロさん」というワードを検索すると、一瞬にしてオカムロさんが出現する設定が加わった。

なにその秀逸なアレンジ! 怖すぎる! で、ヤバいとわかっていても、検索してしまうのが人間。もう同時多発的にオカムロさんの被害者が続出! どこもかしこも首ゴロゴロ! 本作は、呪われたビデオテープの『リング』シリーズ、携帯電話で死を予告される『着信アリ』などに続く「ガジェット系ホラー」でもある。オカムロ被害が止まらず拡大の一途の状況を、新型コロナの拡大に重ねた皮肉なユーモアも笑える。日常との地続き感にゾッとする。まさに時代が呼んだモンスター「オカムロさん」。あなたは検索できるだろうか!? 

今回、松野監督のインタビューで驚いたのは、こんな危ない映画を作る監督が、めちゃくちゃ物腰柔らかく、謙虚な好青年だったこと。穏やかな笑顔と丁寧な口調にチラリと垣間見える発想の過激さ。そこがオカムロさん以上に怖いかも? 

ギャップに脳がバグるインタビューをご覧ください!

●冒頭から容赦ないショックシーンが連続!

――オカムロは、何の前触れも気配もなく、検索すると秒で出現する恐怖がとんでもないです。ストーリーはどのように作っていきましたか?

松野 ありがとうございます。脚本を何度も書きながら目指したのは、とにかくいろんなシチュエーションで恐怖シーンを描きたいということでした。出し惜しみせず、どんどん殺人シーンを入れて、もう観る人を置いていくスピード感のある映画にしたかったんです。だから最初から飛ばしていく展開で、文字通り、冒頭からどんどん首を飛ばしていったんです。

――検索すると殺されるアイデアが、今の時代にハマッていますね。

松野 ありがとうございます。今や、スタッフのだれが思いついたのかわからないのですが、シーンをスピーディーに変える上でもピッタリなアイデアでした。

――ある意味、映画のセオリーにこだわらずに突き進む、勇気と思い切りが快感です。

松野 ありがとうございます。勉強不足なのかもしれませんが、型破りな映画を作りたい思いがありました。この間、初号試写で初めてスクリーンで見たのですが、あらためて、こんなに目まぐるしい展開なのかと自分で驚きました。もはやツッコミどころだらけで、いろいろ疑問を挙げたらキリがないかもしれませんが、考える隙を与えないように作った意識はあります。細かいことを気にせず観ていただきたいです。

●オカムロと美少女の因縁ソードバトル!

――最初から「オカムロさん」という題材で撮る企画だったのですか?

松野 はい、オカムロさんという企画で撮らないかとお話をいただきました。最初は「オカムロさん」の存在も都市伝説も知りませんでしたし、おぼろげなイメージしかなかったのですが、特殊造形の百武朋さんとお話をして、コンセプトアートから描いていただき、少しずつ作り上げていきました。もちろん百武さんのお名前とお仕事は存じ上げていたのですが、イメージをお伝えし、いろんなアートを描いていただき、その作り上げていく過程がすごく面白くて感激しました。妖怪が出来上がっていく様に、すごく興奮して。自分の書いた脚本の化け物が、本当に生まれたような、都市伝説を現実化したという妙な高揚感があって、すごくテンションが上がりました。完成した姿には本当に驚きました。

――ストーリーはオカムロに家族を殺された少女の復讐です。熱くてノレますね。

松野 ありがとうございます。一般的なホラー映画は、襲われた主人公が、割と一方的に襲われて逃げ惑う展開が多いかと思います。しかし、オカムロが刀で襲ってくると聞いた瞬間に、「刀で襲ってくるなら物理的に戦えるんじゃないか?」というアイデアが浮かびました。物理的な武器を使う敵なら、物理的に戦っていいんじゃないかと。やられるだけじゃなくて、リベンジする主人公を描きたくて、復讐という展開に持っていきました。

吉田伶香

――ヒロインを始め、ソードアクションも演技もできる俳優さんが集結していますが、キャスティングはどのように決めましたか。

松野 主演の吉田伶香さんはオーディションで、その場で脚本1ページくらいのお芝居をしていただいたんです。泣くシーンでちょうどいいタイミングで涙を流したり、すごく繊細な演技もよかったし、軽くアクションもしていただいたんですが、すごく筋が良くて、アクション監督の三元雅芸さんも、「この人はトレーニングしたらすごくいいものになります」と太鼓判で。それとオーディション中、他の方が固くなっている中で、吉田さんは余裕があるといいますか、終始笑顔で、ドシッと落ち着いた余裕もあったし、しかもフレッシュさもあって、満場一致で決まりました。

伊澤彩織

――もう一人のヒロインの伊澤彩織さんの存在感とアクションにも目を見張りました。

松野 伊澤さんは、同じ日芸の映画学科の先輩で、伊澤さんの作品を授業で観たこともありました。そしてカナザワ映画祭でご挨拶を経て、今回は出ていただいて。伊澤さんでないとできない役で、脚本は完全に当て書きでした。最終日にアクションを撮っているとき、ボソッと小さな声で「アクション楽しい」とつぶやかれているのを耳にしました。本当にアクションが好きで楽しまれているんだなと、こっちも嬉しくなりましたね。

●CGなしの100%ライブアクション!

――吉田さんの可憐なヒロインが自分の武器を決めるときに、刀や銃器など様々な凶器の中から手斧を選ぶのは、ギャップと物騒さに「なんで斧!」とツッコんでしまいますね(笑)。

松野 ありがとうございます(笑)。普通は剣を選びそうですけど、復讐を誓った人間は、敵を剣で斬るより斧で断ち割りたいんじゃないかと思い浮かびまして。その方がスッキリするんじゃないか、存分にリベンジしてもらおうということで(笑)。

――ソードアクションはどう演出していきましたか。

松野 基本的にアクションは、アクション監督の三元さんが監督で、その表情とか感情の演出を僕がするという形です。三元さんにビデオコンテなど一から作っていただきましたが、脚本と同時進行だったので、脚本が変わるたびにアクションも変えて細かく打ち合わせをしました。たとえば、オカムロの武器は剣ですが、主人公の武器は手斧で、この対決ならどんなアクションができるかなど、シチュエーション、性格、武器、それぞれを生かしたアクションを三元さんと一緒に考えて、キャラクターが出るように演出をしていきました。

――アクションシーンはワイヤーワークやCGも使っているのですか?

松野 いえ、アクションに関しては一切ないです。血しぶきのエフェクト追加などはあるのですが、純粋な100%のライブアクションです。一部はスタントマンが演じていますが、キャストに身体を張って頑張っていただいて、いいバトルになったと思います。

――思わず痛みを感じるくらいにリアルなアクションでした。

松野 ありがとうございます。妖怪と戦うという非日常的な部分が多いので、アクションについては、逆にリアルを意識して、現場でその都度、血糊を足したりメイクに時間をかけています。

●パワーとエネルギーがホラーの魅力!

――ホラーシーンが強烈で、斬られた首がゴロゴロ転がるのはもちろん、ぶら下げた生首の断面から血が盛大に噴き出していたり、とにかく徹底的にエグいですが、ご自身は熱狂的なホラーマニアなんでしょうか。

松野 いえ、小学校1年生から中学1年生まで、中国の上海と、台湾で、父親の転勤で暮らしていたんですが、日本のテレビは見られないから、DVDで『13日の金曜日』『エルム街の悪夢』『悪魔のいけにえ』など王道のホラーが好きで観ていたんです。でもコアなホラーファンやマニアではなくて、メジャーなものしか観てないんです。「にわかじゃないか」と怒られそうな気もしますね(笑)。

――チラッと見せて想像させるのではなく、ストレートな表現で押しまくりますね。

松野 はい、首狩りホラーをやるにあたって、間接的な表現より、直接見せたいというのがありました。見えそうで見えないまどろっこしい表現より、いっそ全部見せたいという思いがありました。

――ホラー映画の魅力って何でしょうか?

松野 私は、実際にあった事件とか関係する人物を調べるのが好きなんです。それは、エネルギーがある出来事を映像化したいという気持ちからですが、ホラー映画にもエネルギーやパワーがあると思うんです。自分はそこが好きなんですね。

爽やかな好青年なのか、心の底に狂気を秘めた人なのか、最後までわからなかった松野監督。強烈な長編デビュー作で、前代未聞のバイオレンスバトルホラーの『オカムロさん』は、「オカムロパンデミック」とでも呼ぶべき現象を呼びそうな予感。ぜひ劇場へ!


松野友喜人(まつの・ゆきと)

1999 年和歌山県出身。黒澤明の誕生日に生まれる。小・中学生の時期を中国と台湾で過ごし、大阪芸術大学映像学科に入学。二年次より日本大学芸術学部映画学科の映像表現・理論コースに編入学。卒業研究として制作した短編映画『全身犯罪者』はその年の卒業研究で最高の評価を受けたが、あまりにも不謹慎な内容から卒業制作展での上映は禁止された。同作でカナザワ映画祭 2021 「期待の新人監督」観客賞を受賞。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭インターナショナル・ショートフィルム・コンペティションにノミネート、ハンブルク日本映画祭招待上映。『オカムロさん』は長編デビュー作。


2022年10月14日 (金) ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿シネマカリテ 他 全国ロードショー!

『オカムロさん 』
監督・脚本・編集・出演:松野友喜人
出演:吉田伶香/バーンズ勇気/伊澤彩織/六平直政 他
制作プロダクション:シャイカー/製作:REMOW/配給:エクストリーム
2022年/日本/カラー/DCP/サイゾー映画制作プロジェクト
©️2022 REMOW

公式サイト https://okamurosan.com/


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