【佐原編】
神崎町のすぐ隣に位置する佐原は酒蔵に加え、かつて商家町として栄えた地域で、いまでも江戸情緒風情たっぷりの歴史的な建物がそのまま残存している。それらを宿泊施設として活用しているのが、佐原商家ホテル NIPPONIA(ニッポニア)だ。伝統的な日本建築の意匠や、かつて蔵として使われていた趣のある空間はまさに心地よい大正ロマンの世界。フロント・レストラン棟にあるレアウトラン&バケット「LE UN(ルアン)」では地元産の食材を使い、佐原に根づく発酵をテーマにした健康的で優しい味わいのフレンチを提供してくれる。蔵元直送の日本酒とのペアリングも絶妙だ。
元商家や元料亭など、佐原に残る江戸情緒あふれる複数の歴史的邸宅を1つのホテルとして再生。趣深い和の空間には心地よい癒しをおぼえる。日常の喧騒から離れ、伝統的な建築意匠を味わいつつ、この地で紡がれてきた歴史の重みに浸りたい。
さっそく「LE UN」で”発酵ランチ”。この日のメインは県内産かずさ和牛の希少部位・イチボを発酵黒ニンニクとオリーブでマリネし、熟成させローストした特別メニュー。地元産の有機野菜と酒粕風味のジャガイモピューレ、赤ワインもろみ味噌とも相性抜群だ!
銚子で水揚げされたカツオやカンパチ、香取市の生乳から加工したフレッシュチーズなど、前菜からメイン、デザートまで”発酵料理”で心もカラダも健康に! 「海舟散人」を筆頭に種類豊富な地酒とのペアリングもぜひ、堪能すべき。
【SHOP DATA】佐原商家ホテル NIPPONIA
千葉県香取市イ1708-2
Tel 0120-210-289
営業時間(レストラン&バケット LE UN」)
11:30〜15:00、17:30〜22:00
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千葉・北総に根づく発酵文化に触れる旅のラストは、「LE UN」のすぐ近くにある馬場本店酒造。実は「LE UN」の建物も同酒造の味醂蔵をリノベーションしたものだが、国産モチ米を使った昔ながらの製法で丁寧につくられる「最上白味醂」はその自然な甘みや濃厚なうまみで全国にファンを持つ銘品だ。もともと酒蔵から始まったこともあり、かつて勝海舟が滞留したことを記念したつくられた「海舟散人」をはじめ、日本酒づくりにも定評がある。味醂で培った製法を酒づくりに採り入れた個性豊かなラインアップも魅力的だ。ミネラルを豊富に含む地下水に恵まれ、水郷の町として栄えた神崎・佐原エリアだが、いい水のあるところにいい酒と美味しい食材、そしてよい人アリ。清酒、味噌、醤油など発酵から生まれる基礎調味料は和の食文化の根底を支えるものだ。東京から車で約1時間半ほど。大人の知的好奇心を擽ぐる発酵文化の源流に触れられる町は意外に近い。
馬場本店酒造の第15代目、馬場善広さん。麹屋に始まり、江戸後期に酒造り、味醂の醸造をスタート。佐原で現在まで続く数少ない酒蔵のひとつで、伝統製法でつくられる「最上白味醂」や日本酒「海舟散人」が有名。江戸時代から続く蔵や道具なども見学できる。
味醂の製法を採り入れた個性的な味わいの日本酒の数々。イチオシはフルーティさを楽しめる純米吟醸「すいごうざかり」。「最上白味醂」はモチ米と米糀を手作業で混ぜ合わせてつくる伝統的な味わいが絶品!
【SHOP DATA】馬場本店酒造
千葉県香取市佐原イ614-1
Tel 0478-52-2227
営業時間 9:00〜17:00
Photo/石上彰 Text/下川冬樹