オーダーメイドでブルゾンからツナギ、レーシングジャケットまで作れる!? The Dressing Lab. 中編

東京・銀座一丁目の隠れ家的オーダーメイドサロン、The Dressing Lab.。スーツやコートを得意とする「Bespoke Line」に、フォーマルな「Dress Line」、ポロシャツやニットなどカジュアルな「Sports Line」の３ラインを展開している。いずれもフルオーダー、パターンオーダーが可能で、熟練の職人技術による細かいディテールなどの“味付け”によって、自分らしさを表現する”言語”としての装いを提案しているが、その筆頭が今シーズンのブルゾンだ。

同店の店主・林倫広さんが実際に羽織りながら解説してくれたが、青と茶のストライプというツウな柄のブルゾン。一目惚れで採用したという生地は、イタリア・ナポリの生地商社、カチョッポリの新作「レジャー・クロージズ」（遊び着の意味）に収録されているもの。本来はスーツ向けの生地だが、その名の通りカジュアルに着たくなるようなポップな色柄と、クラシックな風合いのバランスが絶妙だ。こんな老舗のスーツ生地を、カジュアルなブルゾンに使えるあたりが、オーダーサロンの面白さ。さり気なくミリタリーテイストを織り交ぜたフラップポケットなど林さんのこだわりも満載だが、背中のギャザーの美しさもなかなかお目にかかれないシロモノ。「これも、職人の為せる技です」。

気づけば隣で同行したミリタリー系好きのベテランカメラマンがどれどれと、同じ型のブルゾンを試着していたが、フラップポケットのギミックはもちろん、カラダにすっと馴染む着心地のよさにご満悦だった。そんな彼に林さんが「もう少しタフな生地でもお作りすることができますよ！」。カメラマンという職業柄、重い荷物も運ぶだろうし、ガンガン着れたほうがいいはずと察してのことだろう。

「お客さまにはまずは自分が着たいと思った服を着ていただきたいですし、作りたいと思った服をお作りいただきたいんですよね。あとは、お客さまのイメージやライフスタイルに合わせて最適な仕立て方をご提案することができますので」

そうなのだ、本来、自分が着られない服なんてないのだ。まるで”装い”に関するカウンセリングを受けているような感覚。同店がきっかけでオーダーにはまるお客様が多いというのもうなずける。その懐の深さからお客さんが思わず「こんなモノも作ることができる？」とついつい無茶な相談を持ちかけてしまうことも。オーダーメイドの”ツナギ”のそのひとつだ。

もちろん、フルオーダーの特注モノでMTMでの受注はしていないというが、仕事用に見栄えのする勝負ツナギが欲しいという要望から生まれたこのツナギには、丈夫かつ動きやすいイタリア製のブラックデニム生地を採用し、脇と背中には隠れるような位置にメッシュが装備された機能性も抜群の逸品。どことなくドレッシーさも持ち合わせた不思議なツナギだが、カジュアルな洋服をテーラーの縫製技術で仕立てる”ドレス”と”カジュアル”の融合こそ、The Dressing Lab.の真骨頂であり醍醐味でもある。そのうえで、用途に合せたギミックもプラスできる柔軟性。もはや無敵か。この感じでいくと、ここで作れない服はないのではないかとも思えてきたが実際、様々な特注の相談があるという。

「職人と検討の上、技術的に泣く泣く断念することもありますが、基本的にはご相談頂いたものは鼻から無理と決めつけず、今まで仕立てたことがないアイテムについても、どうやったら仕立てられるか、職人と共に前向きに考えます。どんなご要望をいただいたとしても、私自身もおもしろがりながら、職人とお客さまと3人で楽しく試行錯誤していきます。そこには新しい装いへのヒントが必ずあるはずですから」

口コミで評判が伝わり、今年１月には本田技研工業の役員に向け、レーシング・サファリジャケットなどのユニフォーム一式も仕立てた。

「開店から約3年経ちましたが、私一人でできることなど少しばかりで、ご縁に恵まれてここまで来れました。お客様やお取引先様、皆さんに日々ヒントを頂き、支えて頂いています。お客さまのリクエストを叶えたいと思うばかりに、職人さんにはいつも無茶振りばかりでご迷惑をおかけしてしまっているかもしれませんが、本当に期待を上回る良い仕事をして下さっています。私も一時は仕立て職人を目指して修行をしていた時期があっただけに、その仕事がどれだけすごいか理解できます。仕立て工場さんや職人の方々をこのうえなく尊敬し、感謝しながら仕事を依頼しています。」