●「変身してもらうから」「え――――っ!?」
山﨑 サトミ隊員の方が、鵜川さんに寄って行ったんだ。
鵜川 だから、私はサトミ隊員は全然演じてないんですよね。自分と同じだから、本当に先入観なく、サトミ隊員という役に接することが出来た。それが逆に良かったんだと思っていて。
――ちなみに、新生ウルトラ警備隊には女性隊員が2名いますけど、どちらの役のオーディションみたいなことは知らされていたんですか?
鵜川 オーディションの段階では、女性隊員が2人っていうのは無かったですね。あだち(理絵子、ルミ隊員役)さんは、あとで別で決まったんだと思います。
――男性隊員の方はどうですか。オーディションの段階でどの役というのは。
山﨑 決まってませんでしたね。その場で何人かでグループを作って、三役ぐらいを順繰り代わっていくっていう形式でした。隊員の名前も、外に出す用で変えられていて、カザモリという名前も無かったと思うんですよね。
――オーディションに受かったというお話を聞いたときっていうのはどのようなお気持ちでしたか。
山﨑 ついに!と。ついに一個なんか抜けた気がして。
――その時に、カザモリ役だというのはお聞きになったんですか?
山﨑 いえ、最初はウルトラ警備隊に受かったということだけでしたね。
その後、顔合わせでみんなが集まった時に、「今回、変身してもらうから」って言われて。
たしか(プロデューサーの円谷)昌弘さんに言われたのかな。凄い衝撃でしたよ、ちょっと待って待って待ってと。
もう、モロボシ・ダンという主人公がいらっしゃるのに、どういうことだろうって。
ハテナを抱えたまま、帰って台本読んだら、自分が変身するって書いてあって、え――――っ!?て。
©円谷プロ
――ちなみに、その顔合わせが、お二人の初対面ですか?
鵜川 そうだと思いますけど、その時はちらっと会っただけで、ちゃんと会ったのは本読みの時だったよね。
何役の誰々です、わー!みたいな自己紹介が一通りあって、それで本読みをして。あー、この人がこの隊員なんだみたいな感じで、ちらちら観ながら。
山﨑 本読みの時に衣装合わせしたんだっけ?
鵜川 衣装合わせは、また後だと思う。
――衣装合わせで、ウルトラ警備隊の隊員服を初めて着たわけですよね?
鵜川 ウルトラ警備隊の隊員服は、サイズ寸法して一から作ったんですよね。
山﨑 メイキングにも残ってるけど、半分だけのやつを着て、その場で合わせてもらって。
鵜川 私はその日、事務所から「鵜川さん、今どこにいますか?」って電話が来て。
「家ですけど」って言ったら、「今日、衣装合わせで衣装を作るって聞いてますか?」
「聞いてないです」「もう始まってるので、今すぐ行ってください」「えー!?何それー!?」って。
だから、一番最初の衣装合わせの時に、私は大遅刻して行ったんです。
第一印象最悪で、「すみませんすみません」って。私悪くないのにー!
それまではみんなでワイワイやってたらしいんですけど、もう終わっててひとりだけで。
残り香が……
山﨑 衣装合わせの時はみんなルンルンだったから。終わった後も花が飛んでたよね。
鵜川 もうスタッフさんも早く帰りたいのに、こいつのせいで遅くなったみたいな……。
山﨑 ちょっと被害妄想が過ぎるよ(笑)。でもそうだったんだ、今はじめて知ったよ。
●「隊員服だけは絶対に破くな!」
――ウルトラ警備隊の隊員服に、袖を通した時の気持ちはいかがでしたか?
山﨑 感動しましたね。自分が見ていたこのウルトラ警備隊の隊員服に袖を通せるんだっていう。
好きだった作品の一部になるというか、すごく嬉しかった思い出があります。
鵜川 それは、感慨深いよね。
私は、ウルトラマンはもちろん存じ上げていたんですけど、良く見ていたわけでは無かったので、思い入れとも違う、新鮮な感じでかっこいいなって思いましたね。
『セブン』っていう世界観を勉強しなきゃなと思って、一回全部見たんですけど、自分の役どころとは全然違いましたし、全部が新鮮な感じで。
――ちなみに、隊員服の着心地みたいなものはどうなんですか?
山﨑 蛇腹のところから空気が出て、夏は涼しく、冬は暖房が出る……って設定なんですけど、実際は夏は暑く、冬は寒い(笑)。
鵜川 あの隊員服って、スタイリッシュで体にすごくフィットしてるので、中に着込めないんですよね。
――ちなみに撮影時期は、いつくらいだったんでしょうか?
鵜川 本編は、10月にクランクインして、12月までくらいでしたね。大体、1話に2週間くらいかかってました。
ロケが10月からで冬なので、とにかく寒さとの戦いだよね。
山﨑 昔はヒートテックみたいなのも、まだ無かったしね。
鵜川 そうだよ。あったら絶対2枚ぐらい着てるよ(笑)。
私は、隊員服を一着しか作ってもらえなくて。
予算の関係で一着しか作れないから、隊員服だけは絶対に破くな!って言われましたね。
実は、今イベントで着ているのも25年前と同じ隊員服なんですよ。新しく作ったと思ってるファンの方もいるみたいなんですが、衣装も靴も当時のものなんです。
――今でもフィットするというのが、すごいですね。
鵜川 むしろ、隊員服は縮んでるんです。だから、イベントで着る時はいつも「今日は着れるかな」って怖いんです。
でもここまできたら、ずっと着ようと思ってます。それで、「同じ衣装を着続けた記録」としてギネスに申請しようと思ってます!
©円谷プロ
――カザモリの隊員服は何着かあったんですか?
山﨑 ちょっとアクティブに動いたりするので、何着かありましたね。
鵜川 途中で股のところ破いたんだよね。
山﨑 それは、不可抗力だから(笑)。俺がこう、ビリビリやったわけじゃないから。
鵜川 やっぱりアクションしてると仕方ないですね。
――新生ウルトラ警備隊はアクションシーンも多いですが、岡野弘之さんによるアクション訓練が撮影前にあったようですね。
山﨑 それこそ円谷プロの旧社屋裏の駐車場で、銃の持ち方とか訓練しましたね。
鵜川 私は、その時他の仕事で海外に行ってたので参加していないんです。
山﨑 なんか、かっこいいな(笑)。
●ウルトラガンの秘密
――『ウルトラマンティガ』でムナカタ副隊長役の大滝明利さんがアクション訓練をしたこともあったようですね。
鵜川 その場にいなかったのに、良く知ってますね(笑)。それは最終章6部作の撮影前だよね。
山﨑 体操マットを敷いて受け身の訓練したり、あとはウルトラガンを使った訓練をしたのを覚えてる。
壁からちらっと身体を出して、バッて撃ってみたいな。
鵜川 それも私は参加してないんですよね。何もやっていないから、どうしようって思って。
――サトミも、銃器を撃つシーンは多いですよね。ということは、あれは独学なんですか?
鵜川 独学でしたね。映画を見て、どんな風に銃を構えているか見たり、アクションが出来る俳優のお友達に聞いてみたり。
――ちなみに、ウルトラガンのプロップの重さはどれくらいでしたか?
鵜川 元々は全部軽かったんですけど、山﨑くんと正岡(邦夫、シマ隊員役)さんが構える時だったよね、神澤監督が銃身がブレるってすごい言って。それで6部作の時に2丁だけ、重りが入ったのが導入されたんですよ。
山﨑 プラスチックだと、自分が思ってる以上に揺れちゃうんですよね。そうすると凄く軽く見えるんです。
それで重りが入ったのが導入されたんですけど、6人で銃を取る時は、それがハズレの銃ということに(笑)
鵜川 でも、神澤監督はみんな軽い銃を持ってると思ってたんですって。
で、構える時だけ重いのに置き換えると思ってたみたい。
――重いのは、ありものを改造したんですか?
鵜川 予算が無いから新しいのは作れないですよね。ありものを工夫していくしかない。
山﨑 そうそう、ありものに真鍮を入れて改造して。
鵜川 基本、三部作からずっと同じものを使ってます。ヘルメットとかも同じです。
だから、「ヘルメットを絶対壊すな」って言われましたね。バイザーが結構割れやすくて、落ちたら割れちゃうので丁寧に扱えって。
お互いにボケとツッコミ変幻自在。息の合ったトークで、タフでハードな現場を笑顔で振り返る。まさに戦友のような間柄。
鵜川 女性隊員だから、女の子だから、みたいなのも全く無くって。本当にメンズたちと同じ速度で走らなきゃいけないし、アクションしなきゃいけなかったし。みんな必死だし、それが当たり前だから、ついていくしか無いですよね。
ほら、あの閉まるシャッターから転がって出てくシーン。あそことか、怖かったね。
――最終章6部作の最終回ですね。あそこは、見ていても怖いくらい迫力ありますよ。
山﨑 絵的にはなるべくギリギリが撮りたいんですよね。
人の目線から見てると、もうギリギリに見えるんですけど、カメラって平行に撮るから結構シャッターが上がってるように見えちゃうんですよ。
だからもう、ぶつかる寸前みたいなところで、とにかく行け!みたいな感じで。
鵜川 山﨑を抱えてて、邪魔だなー……と思いながら(笑)。
山﨑 バカバカ(笑)。