●ダンとフルハシ――レジェンドとの共演
―― 先ほど、鵜川さんは、サトミという役が自分自身に近かったとおっしゃっていましたが、山﨑さんが演じるカザモリというキャラクターは、カザモリ本人だったり、ダンの変身だったり、宇宙人に乗っ取られていたりと、色々パターンがありますよね。演じ分けるのは、相当難しかったんじゃないかと思うのですが。
山﨑 なんとなくカザモリくん本人の方は、やりやすかったと思うんです。
ウルトラ警備隊の中でも、役者の中でも一番新人というので、非常に入りやすかった。
でも「ダンが変身してるカザモリ」の方は、すごくプレッシャーを感じましたね。
往年のファンの方たちがいらっしゃるので、外れられない怖さっていうか。
だから、僕はモノマネから始めようと、森次晃嗣さんを本当にずっと観察させていただいて。
鵜川 ずっとストーキングしてたよね。
山﨑 ずっとくっつかれていて、嫌だったと思うんですけど(笑)。でも題材となる方が、すごく身近にいるわけですから。
ご飯食べる時はこうするんだとか、腕組むときはこっちの組み方なんだとか、そういうのをすごい見てましたね。
――鵜川さんは近く見てらっしゃって、山﨑さんのそういう努力というのはどう見えていましたか?
鵜川 彼が必死なのもわかったし、そういう精神的プレッシャーもひしひしと伝わってきてましたね。
この人、どっちかというと素は女の子っぽいというか、繊細な性格なので、ダンの男らしい感じっていうのは大変だろうなって。
――ガッツ星人が登場する『地球より永遠に』で、ダンが変身したカザモリが走るシーンがあるのですが、森次さんの走り方を研究してらっしゃったんだろうなというのが伝わってきて、とても印象的です。腕を動かさず、重心を落とした走り方をしていますね。
山﨑 あそこは、めちゃめちゃダメ出しされたシーンなんです。何回走ったかわからないくらい。
僕が一番最初に提案した走り方っていうのは、多分カザモリ本人だったらオッケーだったと思うんです。
そこから、手の振り方はこう、足のあげ方はこう、頭の位置はこう、重く走る……、一個一個パズルのようになって、途中パンクしました。
ただダンらしくってだけじゃなくて、ダンがそういうところに向かっていくなら、どんな走り方をするか、っていうお芝居の部分も含めた正解がわからなくなってしまった。
あのシーンを見ると、自分が役者として未熟だったっていうのもあって、大変だった撮影を思い出しますね。
――森次さんだけでなく、オリジナルの『ウルトラセブン』に出演してらっしゃった毒蝮三太夫さんとの共演もありますね。
山﨑 毒蝮さんのラジオを聞いていたので、お会いした時は嬉しかったですね。
「もし何かあって、役者で食えなくなったら、俺のとこに来ればいいからな!」みたいなことも言って下さる方で。
かっこいい、男気がある人だなと。
鵜川 毒蝮さんとは、恵比寿のスタジオで司令室のシーンをまとめて撮った時にご一緒したくらいなので、あんまりお会いしてないんですよね。
座布団運びで有名な人で、ラジオで「ばばぁ!の人」…!って印象でしたね。
山﨑 やっぱり撮影現場では、そんなにお話しする機会があるという感じでは無かったですね。森次さんとは、イベントでご一緒した時にお話しさせていただいたり。
――鵜川さんは、森次さんにアクションの指導を受けたこともありますね。
鵜川 台本って、アクションの内容なんかは具体的に書かれてなくて、現場でつけられるんですよ。
本当にそういうのに慣れてなかったので、おお!?私も殴るの?みたいな。
殴るだけじゃなくて蹴りもあって、蹴るの?って。
それを森次さんが、側から見ていらっしゃって、これはこうやった方が見栄えが良いとアドバイスをくださって。
森次さんは、ずっと自分が見られていて、見せ方を知ってる方だから、どうやったら良く見えるかっていうのが分かってらっしゃるんですよね。
©円谷プロ
――レジェンドと言えば、ウルトラセブンもレジェンドですが、
カザモリがウルトラセブンの腕に抱かれて意識を失うという印象的なシーンがありますね。
山﨑 あのシーンは、とても心に残ってますね。あの時の気持ちは、イベントで皆さんがセブンと会った時と同じだと思います。
実は、あのシーンはヘルメットをかぶって撮る予定だったんです。
でもそれはおかしいってなって、現場で急遽メット無しに変更になったんです。
鵜川 ヘルメットの時と、無しの時ではヘアメークが違うんですよね。ヘルメットかぶるときは、前髪が出てこないようにピンとかで止めちゃうんですよ。
だから、メットの時はメットをかぶってるシーンをまとめて撮ってましたね。
●ふたりとも衝撃の展開を迎えるEVOLUTION5部作
――そしてEVOLUTION5部作では、ついにカザモリ本人がセブンに変身することになりますね。
©円谷プロ
山﨑 そうなんですよ。今まではダンがカザモリに変身して、そのカザモリがセブンに変身する形だったんですけど、今度はパワーをもらったカザモリ自身が変身するということで。
自分としては、超能力が使えるから特別とかではなくて、自然体の延長上に行ったらいいかなって思ってました。むしろ、自分色を出していこうという感じでした。
サトミ隊員に対する気持ちも基本は変わっていなくて、ただその先に違うパワーが使えただけ、みたいな感じで。
©円谷プロ
――新生ウルトラ警備隊もとてもバランスの良いチームだと思うのですが、撮影時のチームワークはいかがでしたか?
山﨑 撮影の後は、毎回のように飲みに行ってましたね。たまの休みも、南條さん(シラガネ隊長役)から、どこどこで飲んでるから来なよって誘っていただいたり。
鵜川 早めに終わったら飲みに行こうとか、明日は撮休だから飲みに行こうとか。スタッフさんも一緒になってね。
期間も長かったから、自然と仲良くなっていったよね。
山﨑 僕は、もう憧れの正岡さんの近くに、ずっとくっついてましたね。
役者としても人としても、色々教わりました。ご近所さんだったこともあるので、プライベートでもお世話になりました。
鵜川 でも25年経った今でも、普通にご飯行ったり話したりするっていうのも珍しいよね。本当に自然とそうなっていった感じですね。
――山﨑さんと古賀さん(ミズノ隊員役)は、今でもモーションアクターのお仕事でご一緒していますね。
山﨑 モーションアクターのお仕事は、もともとは全然違うルートで始めたんですけど、古賀さんが「ぜひ山﨑くんにやってもらいたい役がある」って言ってくださって。そこから一緒にやるようになって、今に至ってるっていう感じですね。
たまに、現場のスタッフさんで平成セブンを大好きな方がいらして、ウルトラ警備隊が2人揃ってるので驚かれますね(笑)。
――EVOLUTION5部作では、サトミ隊員が戦死するという衝撃の展開がありますね。
鵜川 昌弘さんから、話したいことがあるからちょっと出て来てって言われて。
そこで、5部作があるっていうことと、「今回、サトミには死んでもらいたい」ということを伝えられたんです。
最初は、絶対嫌だって言いました。無理無理!OKって言うわけないだろうって。
それぐらい自分が愛してた役、なんかもう本当にサトミは自分だって思ったぐらいすごい好きなキャラだったので、
なんでこの子が死ななきゃいけないんだって思って。
それで、武上(純希、脚本)さんといろいろ話をしたりして、前作のラストでセブンは幽閉されてしまったから、戻す時はよほどのことが無いと復活できないと。
みんなが「死んでくれ」って言うから、「もうわかったよ!死ねば良いんでしょ!」って。
そういう形で、私が最初にそのことを知っちゃっていたので、みんなが知ったのはずいぶん後だよね。
山﨑 台本も小説みたいなもので、何も知らされてないないところからその文章が目に飛び込んでくるわけです。衝撃だった。
鵜川 これが発表されたら、本当にもうサトミは死ぬしか無いんだって思ってたんだけど、みんなが台本読んでて、そこで「えっ?」てなって。それでちょっと救われたかな。
それで撮影の時には、切り替えて臨んだんですけど、天候の問題でなかなか死ねなくて。3回延期になったんです。
演じているキャラクターが死ぬのって、体力的にも精神的にもすごいきついわけですよ、やっぱりダメージがくるんです。
それを何回も引き伸ばされると、なんか本当に辛くなってきちゃったのを覚えてますね。
でも、自分の中ではサトミ隊員は死んでなくって、円盤竜の中で生き続けてると思っているんです。
山﨑 これ……、次回作いけるな。
――フルハシ参謀も、蘇生していましたね。
鵜川 ミュー粒子があればみんな復活できるよ!
山﨑 ミュー粒子すげーな!
鵜川 そしたら私、次は参謀!参謀やる!
山﨑 カザモリは、風来坊みたいになっちゃったからなぁ(笑)。ウルトラ警備隊に戻ってくるところから始めないと。
(後編につづく。11月5日公開予定。お楽しみに!)
山﨑勝之(やまざき・かつゆき)
1976年群馬県出身。1998年に“平成ウルトラセブン”のカザモリ・マサキ隊員役で俳優デビュー。数々の映画やドラマ出演のほか、ゲームやアニメのモーションアクターとしても活躍し、アニメ『ULTRAMAN』(2019年~)では主役の早田進次郎を演じている。
鵜川薫(うかわ・かおる)
1975年東京都出身。10代からアイドル、女優として活動し、“平成ウルトラセブン”シリーズのハヤカワ・サトミ隊員役でファン層を広げた。人形特撮番組『ゴジラアイランド』のレギュラー出演も。近年はウルトラセブン関連イベントや特撮イベントでも活躍している。
【聞き手・構成】
タカハシヒョウリ
ミュージシャン、作家。ロックバンド「オワリカラ」のボーカル・ギターとして活動。特撮、映画、漫画、ゲームなどサブカルチャーに造詣が深く、特撮音楽をバンドで表現する「科楽特奏隊」も結成している。現在、TSUBURAYA IMAGINATIONで『タカハシヒョウリ のTSUBURAYA DIVE』を連載中。
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写真/鶴田智昭(WPP)、文/タカハシヒョウリ
©円谷プロ