与座重里久(主演)×八木毅(監督)
Ⓒ円谷プロ
独自のテイストで鮮烈な印象を残した『ULTRASEVEN X』は、今年で放送から15年。ULTRASEVEN Xに変身するエージェント・ジンを演じた与座重理久と、メイン監督・シリーズ構成を務めた八木毅がオンライン対談で、思い出と作品への愛を熱く語り合った。
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「ULTRASEVEN X」とは?
●アクションもアイテムも斬新だった『X』
――与座さんの方でこれは大変だと感じたことは何かありますか?
与座 自分よりSEVEN Xを演じていたスーツアクターの新上博巳さんですね。マスクを被って、スーツを着て、そして演じるのがあんなに大変なんだっていうのを初めて目の当たりにしました。
自分自身は、本当に役者としてやるべきことをちゃんとやるっていうことで、アクションがある作品も、結構やらせてもらっていたので、大変ということはありませんでした。それよりもスーツアクターの人が「こんなに大変なんだ」と。みんなで、大掛かりでセッティングしてやるっていうのもありますしね。
八木 新上さんってガタイがすごく良いでしょう。SEVEN Xを筋骨隆々のカッコいいものにするために、マスクがデカくなっちゃうと意味がないので、本当に顔ぴったりに作っている。余計に呼吸とかも苦しいし、新上さんはすごく大変だったと思う。
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――『SEVEN X』は等身大のアクションもあり、従来のウルトラシリーズにはないこととしてはワイヤーアクションを多用していたのが印象的でした。
八木 そう、そこも力を入れた。新上さんを連れてきてくれた『SEVEN X』のアクション監督の小池達朗さんは、ワイヤーワークとかも得意だから、斬新なアクションを構築してくれた。円谷のシステムで「殺陣」っていう名称になってるけど(クレジット上は「アクション」)。小池さんも日本に帰ってきて最初の頃の作品で、「新しいアクションをやりたい」っていうことで来てもらった。小池さんにはその場でアクションをつけてもらって、もちろん吹き替えの部分もあるんだけど、基本的にエリクとかトム本人がやっているもんね、すごいキレで。
与座 小池さんの殺陣というか、アクション部分ってすごくかっこよかったですね。カメラワークもすごく躍動感があって、今観ても「ああ、流石だなあ」って思いましたね。
八木 流石だよね、かっこいい。特撮もそうだけど、本編でもSEVEN Xだけじゃなくてエスも含めてエージェントが戦うところは、やっぱり大きな部分を占めていたから。
――『SEVEN X』を語る上で外せないのが、原典の『ウルトラセブン』を踏襲したアイテム群だと思います。特にウルトラガンは非常にスタイリッシュなデザインでしたが、与座さんはこのウルトラガンによるガンアクションにはどのように取り組まれていましたか?
与座 どうやったら強そうに、かっこよく見えるのかな、っていう。今までやっていた銃を使う作品とかとはまた別の構え方だったり身体の動きだったり、そういうのはすごく意識していました。
八木 (撮影現場の写真を見せつつ)ここでも持っている。新しい未来型の銃で、多分撃っても反動は無いんだろう、とか。銃だけじゃなく、それを持っている時の姿勢とか体重の重心とか、全体でジンというキャラクターがその時にどう対応しているのかっていう、そういうものがエリクの場合は表現されていた。銃だけじゃなく、全体でかっこよく戦っている感じが良いよね。
●クライマックスは結末へと突き進む
――『SEVEN X』で特に象徴的なのは第10話で実は監視システムであったことが判明する空中浮遊モニターかと思いますが、合成で表現されるこの物体は現場で演じている与座さんにとってはいかがでしたか?
与座 合成のある作品はデビューの頃から経験があったので、自分の中でイメージはつけやすかったです。あと絵コンテも見せてもらっていたんですよね。「こういうイメージでモニターがあって、近未来的な感じのライティングだ」みたいなものは見せてもらっていたんで、イメージはすごく掴みやすかったですね。
――浮遊モニターを筆頭に、従来のウルトラシリーズとは異なる形で出てくる巨大なものの表現について、八木監督の方での意識はいかがでしたか?
八木 ミニチュア特撮はやらないし、空中浮遊モニターに3Dの顔があって、それが政府の広報であり監視しているっていうことで、今までとは全く違う意識でやっていた。
あれが一つのキービジュアルとして世界観を作っているし、そういう点で言うと今までのウルトラの何かっていう分類にはならないかなと。意識としても深夜ドラマだし、環境も違うから、そこでできることを思いっきりやろうと思った。
『メビウス』でシリーズが1回終わった後の新しい作品としてやったし、過去のウルトラに対する意識っていうのは、この時は無かった。
――ただ『SEVEN X』は番組の形式としては『ウルトラセブン』40周年記念番組でしたね。
八木 『ウルトラセブン』とは何かっていうと、僕はSFだと思っている。それからラブストーリーがあって、素晴らしいストーリーがあった。
だから『SEVEN X』もSFだしラブストーリーだし、1話完結の素晴らしいストーリーもある、とかね。空中浮遊モニターとかはSFとしての一つの表現ですが、他のウルトラに対する比較とかはあまり考えなかった。
――終盤の3本はそうした世界観の謎やジンの背景などが明かされていき、連続ドラマとしての結末に突き進んでいくような展開でした。終盤の撮影におけるお二人のお気持ちはどのようなものでしたか?
与座 クライマックスに入ってきた時は……なんて言ったらいいんですかね。もうジンとして演じ切るしかないなっていう。
八木 最終回の前にみんなと話をしたよね。1話、2話で始まったことをちゃんと決着つけるからと。最終回は最後まで突っ走るから、全力で頑張ろう、みたいな話をして。みんなの表情もすごく良かったと思うんですよね。良いものができた。
――クランクアップがどのシーンだったか覚えていらっしゃいますか?
八木 (写真を出して)その瞬間っぽいのがあるね。クランクアップかな、スタジオだね。
与座 スタジオでしたよね、覚えています。めっちゃ泣きましたね。色々な思いが全部こみあげてきて、本当にみんなへの感謝しかなかったですね。みんなに本当に支えられて、最後まで走り抜けられた、走り切ったなって。
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八木 花貰ってさ。(脇崎さんと)二人ともいい笑顔だよね。やり切った!走り切った!っていう。
与座 ちょうど合わせてくれたんですよね。みんなが最後の日になるように。
八木 うん、合うようにね。(写真を見て)今見ると未来都市の道なんかの美術の飾りは、このビルト(撮影スタジオの東宝ビルト)に作っていたんだよね。
与座 あれ、映像で観るとすごく綺麗ですよね。
八木 映像で観るとムービーマジックだけど、実はスタジオとスタジオの間の通路だっていう(笑)。美術デザイナーの内田(哲也)さんは『ティガ』の頃からやっている人です。内田さんは役者がどう動くかを考えて美術を考えてくれた。
それとやっぱりSFが好きだから思いっきりやってくれた。ビルトの通路を未来都市にするっていうのは、普通の町だと飾れないからここでやるしかないんだよっていう。でもあの条件の中ではとても良かったよね。
与座 地面にも水を撒いて、光が綺麗に見えるようになっていたし、あれはすごかったですよね。映像で観てみたら「ああ、そう見えるなあ」って思って。
八木 水撒いて、一生懸命蛍光灯で色を作って。もうちょっとフォグを焚いても良かったかもしれない。映画だったらもっとモクモクにしたかもしれないけどね。
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●各自の新しい挑戦とプロジェクト
――5年前の2017年に開催されたウルトラマンフェスティバルのステージにて、ULTRASEVEN Xが登場し主題歌もかかる演出がなされるなど、当時10周年だった『SEVEN X』にとって非常に大きなトピックがありました。与座さんはこちらの出来事はご存知でしたか?
与座 いや、知らなかったです。なかなかウルトラのイベントにも呼ばれる機会が無くて(笑)。呼んでくれたら良いのにな、といつも思っているんですよね。
八木 ハハハ、本当だよね。
――それは是非、こういうインタビューで強調していただきたいです。
与座 異質な作品っていうことで、特別感があって逆にいいのかなって僕は思っていますけど。
八木 15周年を記念に、色々なところで呼んでもらえるといいよね。『SEVEN X』を普及させましょう。やっぱり世の中にはこうだって発信しなくちゃいけないと思っている。で、作品としての『SEVEN X』はそもそも良いんだから、あとはちゃんと発信すればさ。だからみなさん、お願いしますよ。
――もちろんです。
八木 15周年をきっかけに色々なところでやりたいよね。
与座 そうですよね。新型コロナでの制限も緩和されてきたので、何かあればいつでも行きやすくなったから。どこへでも。
八木 エリクは今、台湾でスターだから。
与座 はい(笑)。
八木 台湾公演もいいだろうし、台湾ロケもいいだろうし。そのあたりも聞きたいんだけど、エリクは『SEVEN X』が終わった後に中国や台湾に新しい冒険をしに行ったと思うんだけど、それってすごいよね。
『SEVEN X』も新しいことをやろうとしていたっていうことはさっき話したけど、エリクも台湾という新しい土地に行って、しかもコマーシャルに出たり映画に出たりして成功しているじゃん。
与座 まあやりたいことをやらないと気が済まない性格なので、なんでもいつでも挑戦したいなっていうのがありますね。
八木 変わらないよね、あの頃と。
与座 変わらないですね。あの頃と変わらないですよ。
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八木 あの頃も事務所をいろいろ替わりながら芝居を自分なりに追求していたじゃない。それで『SEVEN X』でも新しいことを一緒にやって、今も台湾にいる。やっぱり進取の気質みたいなものはあるよね。
与座 はい。やっぱり刺激を求めているのかもしれないですね。
八木 やっぱり新しいことに挑戦しようとしているよね。俺も今「narō」っていう新しいプロジェクトをやっている。アメリカのプロジェクトで、エデュケーション(教育)とエンターテイメントの合成語で「エデュテインメント」っていうんだけどさ。
相撲とか寿司とか天ぷらとかアニメとか、日本の文化を世界へ向けて講座的に伝えるっていう新しいプロジェクトがあって、そこで特撮の担当で呼ばれているんだ。
与座 へええ。
八木 アニメでは押井守監督とか相撲だと小錦関とか、結構有名な人がいっぱいやっている。『SEVEN X』もそうだけど、我々が特撮で一生懸命作ったものを世界の人に見てほしいじゃん。
やっぱり自分は特撮を知らせたいし、その過程で『SEVEN X』とか『マックス』とか知らせることもできるだろうし、やっぱり海外も視野に入れて頑張りたいなと思っている。特撮は世界共通だと思うんだよね。
与座 本当にこっち(台湾)でもファンがいて、日本から高野八誠くん(『SEVEN X』では第9話に尾形俊行役でゲスト出演)など、ウルトラマンを演じた人を呼んでイベントを開いている人たちがいて。
ちょうどコロナの時に僕も1回、規模は小さくなっちゃったんですけど、ファンミーティングみたいな形でイベントを開いていただいた。海外に来ても「こんなに人気あるんだなあ」っていうのは本当に感じますし、色々な需要があると思うんですよね。その八木さんのプロジェクトもね。
八木 naroの特撮も公開されたら結構影響は出ると思うんだ。始まるのは来年ぐらいだと思うんだけど。プロデューサーはアメリカ人だしDP(撮影監督)はフランス人だし、全然新しい映像を作ってみた。機材もARIとかファントムとかを使って本気でやっている。我々が今まで作ってきた特撮というものを、広く色々なところで知ってもらうっていうことを、まあ本を書くのもそうなんだけど、やりたいなと思っているんだよね。それはもちろん『SEVEN X』も含めて特撮が良かったからだけどね。
●「DREAM」に始まり「NEW WORLD」までで1本
――『SEVEN X』は円谷プロ公式の配信サービス「TSUBURAYA IMAGINATION」をはじめ多くの手段で観られるようになっていますが、これから新たに『SEVEN X』を観るファンにお二人がおすすめのエピソードなどはありますか?
与座 ひとつのシリーズとして、僕は観てもらいたいなって思っています。「この話数」っていうことではなくて、どの話も全て素晴らしいと思うので。第1話から12話まで通してひとつの『ULTRASEVEN X』っていう作品です。どの話が良いっていうのは僕の中ではないですね。
八木 全く同じことを言おうと思った。「DREAM」に始まって「NEW WORLD」までで一本だから。もちろん単発回もあるけど、全体で楽しんでほしい。
第1話を観てよくわからないところから始まって、最後まで観たら謎が全部わかる。シリーズ構成として、そう観れば面白くなるように作ってある。全体で『SEVEN X』というものを楽しむっていうね。
――それでは最後に、15周年を迎える『ULTRASEVEN X』のファンやこれから『SEVEN X』を観ようとしているファンに、メッセージをお願いします。
八木 当時、自分たちで色々考えて新しいことを一生懸命やった。今観ても古びていないし、逆に今観るからこそ気付きもあるかもしれない。15年経ってまた味わってもらいたいですね。
与座 本当にみんなで作り上げた作品なので、是非応援してほしいですね。『ULTRASEVEN X』は今観てもすごく斬新で、かっこいい映像とストーリーになっているので、じっくりゆっくり味わって、みんなに広めてください。
(了)
文/馬場裕也
与座重理久(よざ・えりく)
1981年、沖縄県出身。2002年に俳優デビュー。Vシネマ作品をはじめ多くの作品に出演、07年に『ULTRASEVEN X』で主役のジンを演じる。11年から台湾に渡り、日本・中国・台湾の映画やドラマ、CMで活躍。台湾ではバー「よ。こいこい」のオーナーも務めている。
八木 毅(やぎ・たけし)
1967年、東京都出身。92年に円谷プロに入社。『ウルトラマンマックス』(05年)『ULTRASEVEN X』(07年)など多くの作品で監督やプロデューサーを務めた。現在は『ウルトラマンマックス 15年目の証言録』(21年、立東舎)をはじめ、文筆活動も行っている。また、北米のエデュテインメントプロジェクトnaroの特撮を撮影中である。
ライタープロフィール
馬場裕也(ばば・ゆうや)
1994年、埼玉県出身。特撮系ライターとして活動中。『平成大特撮』(洋泉社)『ユリイカ 特集・円谷英二』(青土社)寄稿、「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」展示・資料アーカイブ協力など。『SEVEN X』放送時は中学生でした。
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『ULTRASEVEN X』グッズ情報
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