イタリアの名門、フェラーリが9月に75年の歴史で初の4ドアモデルを発表しました。
しかもSUVスタイルなのです!
以前から「もしかしたら」とか「出るかも」という噂がありましたが、ついにフェラーリもSUV市場に刺客を送り込むことになりました。
世界的なSUVブームで今までそのカテゴリーに縁のなかったブランドも顧客のニーズに応えるカタチで参入しています。その先陣を切ったのはポルシェのカイエンからでしょうが、インパクトを与えたのは、ランボルギーニのウルスやアストンマーチンのDBXが挙げられますがここにきてついに、「イヨ! 跳ね馬屋!!」とかいう“大向こう”の気分で真打登場! という雰囲気でしょう。
しかしいくら市場が引く手あまたで、いくら注文があってもフェラーリ全体の年間販売台数の20%を超えないプレステージ性やその全生産台数に対する割合など、フェラーリはやはりクーペでなきゃ、という顧客に対するブランドイメージは維持するといいます。フェラーリの常と言いましょうか、プロサングエも発表と同時に数年先分のプレオーダーをすでに抱えているそうです。
プロサングエ、イタリア語でサラブレッドを意味します。SUVのイデタチであっても生粋のフェラーリ(純血種)というニュアンスなのでしょうか。まるで江戸幕府3代将軍、徳川家光のようですが、生まれながらに名門なのです。
フェラーリといえばその魅力は何と言ってもエンジンといわれています。ブランド初のSUVの心臓部には、今や絶滅危惧種ともいえる大排気量のNAエンジン、しかも「フェラーリの」V型12気筒ユニットが搭載されています。
さらに搭載位置は前の車軸よりエンジンが後ろにある完全なフロントミッドシップを採用。
創始者でもある故エンツォ・フェラーリ曰く12気筒のストラダーレモデル以外はウンヌンと言わしめた12気筒エンジンを積んでいることを考えてもやはり「純血種」なのです。そのスペックは6.5リッターの排気量から最高出力725PS、最大トルク73kg-mを発揮します。また0-100km/h加速が3.3秒、最高速310km/h以上とブランド名に恥じない数値を叩き出しています。組み合わされるミッションは8速のデュアルクラッチ、F1。余談ですが、このパワーユニットのシリンダーヘッドは812コンペティツィオーネのモノでもあります。
加えて扱いやすさにも配慮し、わずか2100rpmから最大トルクの80%を得られるそうで、実用的でありながらも楽しめる時はそのパワーに裏付けられる加速や高剛性のボディと新開発のアクティブサスペンションでコーナリングを楽しめる、最近のフェラーリの方程式に沿っているのも注目です(プロサングエは4WDで後輪操舵システム採用)。まぁ、SUVだから当たり前じゃない、とかツッコミはなしです。
さて、エクステリア上のアクセントは後席のドアになるでしょうか。
ロールス・ロイスのSUV、カリナンと同じような観音開きスタイルです。フェラーリはプロサングエの後席ドアをウェルカム・ドアと呼び、この観音開きにもこだわりが伺えます。それはフェラーリ=2ドアクーペの公式に沿うカタチで後席ドアの存在感を少なくする意味もあるそうです。やはりフェラーリはクーペが基本なんですね。そして後席は2座に。これはあえての2座で、バケットタイプのシートを採用したのはフェラーリのスポーティな走りに対応するため、だそうです。
余談ですが筆者の記憶が正しければ4座のフェラーリの元祖は1960年の250GTEです。試験でよく出る250GTOで有名な250シリーズのバリエーションモデルのひとつです。
そしてフェラーリのスポーティな走りを実現できた、というのは実に興味深いモノです。それはフェラーリによれば「以前から4ドアの発想はあったけれど、性能がフェラーリの基準に届かない」ということで、故エンツォ・フェラーリからGOサインが出なかったといいます。
ドライバーズ・カーのコクピットはSF90ストラダーレから着想を得たデザインを採用。
左がプロサングエ、右がSF90ストラダーレ
そして助手席側はフェラーリ・ローマのような専用スクリーンを備え、走行中にクルマのパフォーマンス値を見ることが可能。
ちなみにプロサングエのファブリック製ルーフ・ライニングには再生ポリエステルを使用、またフロアに使われるカーペット素材には漁網(!)から再生されたモノを使用しています。
最後にお値段ですが、39万ユーロ。日本円で約5600万円ナリ。しかしながらですねフェラーリ史上、最高のプレオーダーを受けたモデルでもあるそうです。
フェラーリジャパン https://www.ferrari.com/ja-JP