2022年11月3日、入間基地(埼玉県狭山市ほか)において「入間基地航空祭2022」が開催されました。これまでも祝日である「文化の日」に毎年開催されてきましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、中止が続き、3年ぶりの実施となりました。
入間基地航空祭と言えば、都心部からのアクセスの良さから、関東だけでなく、日本中から多くのファンか訪れることで知られています。驚くべきことに入場者数は30万人を超えることもありました。
地上展示機をみるどころか、人の背中を眺めることしかできない状況から「これでは人間航空祭だ!」とうまいことを言った人もいました。今回はコロナ禍ということもあり、事前申し込み制での入場制限が設けられたため、来場者数は約2万7000人と絞られました。
そこで、これまでのような混雑なく、全体的にゆったりとした雰囲気の中での航空祭となりました。
さて、同航空祭では、今回ようやく初お披露目となった機体があります。それがC-2輸送機です。入間基地には、第2輸送航空隊が所在しております。そして同部隊には、輸送機を運用し、空自の各種輸送業務に留まらず、海空自衛隊の支援にも当たる第402飛行隊があります。
この飛行隊では、これまでC-1輸送機とU-4多用途支援機が配備されていましたが、2021年(2020年度)よりC-2の配備が始まったのです。正式に第402飛行隊に配備されてから、前述のように航空祭は中止となってしまいましたので、飛行中の姿をお披露目することができませんでした。それがようやく叶ったのです。
空自輸送機の任務の一つである第1空挺団の輸送支援。実際に空挺降下を会場で披露し、その任務の一端を紹介した。
来るものあれば去るものもあり……。C-2の配備が進めば、C-1が引退していくことになります。今回の航空祭でラストフライトを迎えることになったのが、C-1の029号機です。この“029”を“オニク”と読み、航空ファンに愛された機体です。
新旧輸送機は、2機ずつの計4機でフォーメーションを組み、大空を飛びぬけました。C-2によるタイトな2機編隊での旋回飛行は大迫力でした。寄る年波を感じさせないC-1の機動飛行も最高でした。
そして“オニク”は、着陸すると、消防車による放水のアーチで出迎えられました。そしてエンジン停止。これにて、“オニク”はもう二度と飛ぶことはなくなりました。しかし最後の時が航空祭というのは、引退する機体からすれば幸運だったのかもしれません。多くのファンに見送られ、お別れを伝えることが出来たのですから……。
飛行を終えて着陸する029号機。オニクの愛称で親しまれた機体はこの日がラストフライトとなった。消防車の放水アーチで出迎えられる。
航空祭の目玉はまだまだあります。中部航空方面隊司令部支援飛行隊にはT-4が配備されており、そのT-4を4機編隊として「シルバーインパルス」と呼ぶ存在が入間基地にはあります。
本家ブルーインパルスが、若きパイロットで構成されているのに対し、こちらは平均年齢51歳のオジサンで構成されていることから“シルバー”を冠しているのです。ダイヤモンド編隊等で基地上空を飛行し、来場者を魅了しました。
ここでもお別れが。「シルバーインパルス」の飛行隊長を務めました渡辺信行2佐が、なんとこの航空祭での編隊飛行がラストフライトとなったのです。
なかなか、航空祭当日がラストフライトとなるのは珍しいことです。渡辺2佐が乗る紅白のT-4は、着陸すると、消防車の放水アーチをくぐり、大勢の仲間が待つ駐機スポットへ。降機後、仲間たちと記念撮影に収まりました。これを遠巻きに見ていた来場者も渡辺2佐へ惜しみない拍手を送りました。
4機のT-4による「シルバーインパルス」。飛行隊長を務めた渡辺2佐は本航空祭でラストフライトを迎えた。
この他にも、C-1からの第1空挺団によるパラシュート降下訓練展示や、入間ヘリコプター空輸隊のCH-47Jによるスリング飛行、飛行点検隊による飛行展示などが行われました。
今年の入間航空祭を振り返ると「ドラマ多き航空祭」と言えるものでした。ここまで心に響く航空祭はなかなかありません。感動をありがとうございました。