陸上自衛隊と米陸軍及び海兵隊との間で、いくつかの共同訓練が行われています。
そのラインナップに2021年より加わった新たな日米共同訓練があります。それが「レゾリュートドラゴン」です。英語表記の頭文字を取りRDと略します。栄えある1回目となる昨年の「RD」(https://www.monomagazine.com/35652/)については、本連載でも取材し記事にしましたので、是非そちらもお読みください。
さて。2022の今年は第2回目の「RD」となります。訓練期間は10月1日から14日までの約2週間となりました。
北海道の防衛警備を担当する北部方面隊第2師団(司令部:旭川駐屯地)の第3即応機動連隊が中心となりました。その他、第1特科団、第1電子隊、第3施設団、北部方面航空隊、第2後方支援連隊等が陸自側参加部隊となります。一方、米側は、第12海兵連隊、第3-3海兵大隊、第36海兵航空群、第3海兵後方支援群及び米海空軍となりました。日米合わせて参加人員は約3500名を数えます。
訓練の想定は、島嶼作戦です。そこで、矢臼別演習場を「矢臼別島」、上富良野演習場を「上富良野島」と想定し、それを日米で共同して守り、かつ侵攻を試みる敵をせん滅していきます。その他、主要な道内駐屯地や演習場も訓練の舞台となりました。
具体的には、陸自の領域横断作戦CDO(Cross Domain Operation)と米海兵隊の機動展開前進基地作戦EABO(Expeditionary Advanced Based Operations)を踏まえた連携要領の具体化を図ることを目標としています。こうした新戦術のもと唯一、行われる日米共同訓練が、「RD」であり、国内最大規模となります。
米軍としては、まず沖縄から北海道へと展開することがEABO錬成のための重要な訓練となっていました。いろいろな部隊、そして装備が航空機や艦艇を用いて北海道へと運ばれていきます。その中に、高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」が含まれていました。
このハイマースは、ロシアによるウクライナ侵攻を阻止するため、ウクライナへと供与されています。そして、多くのロシア軍戦車や装甲車を撃破するなど、反転攻勢に大きく寄与しました。今回の「RD22」では、なんと、このハイマースが実弾射撃も行うことになっていました。
さすがにロシアも極東地域、それもロシア国境に近い北海道で、ハイマースが展開していることは無視できず、訓練期間中の10月12日、ロシア外務省は日本大使館へと抗議をしました。
なぜ、12日だったのか。それには理由がありました。実は10日、陸自の多連装ロケットシステムMLRSとこのハイマースにより実弾射撃訓練計画されていました。しかし、結果、「ハイマースの弾が届かない」「強風に豪雨」など、ミスや悪天候のため、陸自しか射撃をすることが出来ませんでした。それでも、ロシアは、この日米の対地ロケット弾の共演を許すことが出来なかったようです。
この他、日本側の中核となった第3即応機動連隊と言えば、主力となるのは16式機動戦闘車です。今回は実弾射撃をはじめ、いろいろな訓練に参加しました。
また「RD」には、「米軍再編に係る移転訓練(回転翼機及びティルト・ローター機等の沖縄県外への訓練移転)」が盛り込まれて追います。表題のカッコ内で記されているように、ヘリコプター及びオスプレイの訓練を沖縄県以外で行うことで、米軍の訓練の回数を減らし、騒音問題等、県民の負担を減らすことを目的としています。
オスプレイを含む在沖米海兵隊ヘリは、陸自丘珠駐屯地へと展開しました。ここには札幌丘珠空港と滑走路を共用している飛行場があります。また、陸自帯広駐屯地に隣接する十勝飛行場には、米海兵隊の攻撃ヘリAH-1Zヴァイパー、UH-1Yヴェノムが展開しました。ただ、展開したわけではなく、「矢臼別島」や「上富良野島」で戦う日米部隊を空から支援するため対地攻撃任務(射撃は無し)に当たりました。
このように、「RD」内には、在沖米海兵隊ヘリ部隊の展開も訓練課目のひとつとしてあるのです。