――今回おすすめのお酒 ビールカクテル「ボイラーメーカー」――
ビールとウイスキーを組み合わせるという大人のカクテル。
ご自身の好きなビールとウイスキーを色々組み合わせて試してみるのも楽しいです。
※詳しい情報はこちら
■ビールとは?
ビールは世界中で1番多く飲まれているお酒です。世界のアルコール業界で、ビールが約40%以上を占めているといわれています。(ちなみに2番目にシェアが多いのはジンやウイスキーを含む蒸溜酒/スピリッツ、3番目はワイン)
そして前回の歴史編「ビールの歴史」で説明した通り、長い歴史のあるお酒でもあります。
はじめに、「ビールとは何か?」についておさえておきましょう。
世界中には多様なビールが存在するため、まとめて定義することは難しいのですが、おおむね「麦芽、ホップ、水、酵母、副原料を原料として発酵させた醸造酒」といえます。
※副原料は使用しない場合もあります。
世界中にはたくさんのビールがありますが、皆さんがビールを選ぶ時のポイントは何ですか?
最終的には「色々あるけどよくわからないから、飲んだ事のある自分の好きなビール」と、選んでいる事も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、世界中のビールを知ってもらうために「ビールの分類」についてご紹介します。この記事を読んだ後には「今まで飲んだ事のないビールにチャレンジしてみよう」と思っていただけたら嬉しいです。
■ビールの分類とは?
ビールを分類する方法は、実は様々な方法があります。
そのため、商品名や説明に色々な言葉が使われていて、どんな違いがあるのかがわかりにくくなっている原因でもあります。
今回は、歴史的な背景をふまえ、基本としてまず知っていただきたい【1】発酵方式による3つ分類について詳しくご紹介します。
私は、ビールについて説明する時には必ず「まずビールは3つに分けることができる」という事からお話します。その理由は『種類が少ないので覚えやすい』そして『歴史的に進化してきた背景がある』という事です。
この3つの分類から、さらに細かい分類として【2】発祥国・スタイルによる分類を見ていくと、とても理解しやすいと思います。
ビールのラベルや商品名には「スタイル」(IPA、スタウト、●●ラガー等)といわれる名称が表記されている事が多いのですが、ビールのスタイルは100以上もあるといわれていて、それを全て覚えるのはかなり難しいでしょう。
そこで、まず大きく3つに分類して大まかな特長をつかんでから「スタイル」を知っていくのがおすすめなのです。
分類方法について簡単に説明すると以下のようになります。
【1】発酵方式(酵母の種類)による分類
発酵の工程で使用する酵母の種類による3つの分類です。
自然発酵方式:使用する酵母=野生酵母
上面発酵方式:使用する酵母=上面発酵酵母(エール酵母)
下面発酵方式:使用する酵母=下面発酵酵母(ラガー酵母)
【2】発祥国・スタイルによる分類
ヨーロッパを中心として発祥国による分類があり、その中に様々な「スタイル」と呼ばれる分類があります。スタイルには、スタウト(アイルランド)、ボヘミアンピルスナー(チェコ)、イングリッシュペールエール(イギリス)、ケルシュ(ドイツ)などがあります。ここに出ている国名はあくまで発祥国で、例えばチェコが発祥の「ボヘミアンピルスナー」は、現在ではチェコに限らず世界各国で造られています。ボヘミアンピルスナーを原型とするピルスナースタイルは、世界で最も多く生産されているスタイルです。
その他の分類
色調(淡色、中濃色、濃色)による分類や、加熱殺菌していない「生ビール」、としている「ビール」や、原料にフルーツやハーブ、スパイスなどを使用したビール、日本の酒税法による「発泡酒」「新ジャンル」などもあります。
■ビールの発酵形式による3分類
発酵方式(酵母の種類)による3つの分類について、詳しくご説明していきます。
それぞれの大まかな特長を表にまとめてみました。
歴史的には「自然発酵」→「上面発酵」→「下面発酵」の順序で発展してきました。
ビールも他のお酒の歴史と同じく、はじめは偶然誕生したものが「経験的技術の進化」を経て、その後「理論的技術の進歩」をしていく中で、新しい発酵方式が開発されていったのです。
そして現在では、世界で愉しまれているビールのほとんど(約80%)が「下面発酵ビール」です。多くの人がスッキリした味わいと爽やかな、のどごしのビールを好んで飲んでいる、というわけです。
次に多いのは、味わいが多彩でクラフトビールにも多い「上面発酵ビール」、そして最後に歴史的には最も古い「自然発酵ビール」は希少なものとなり、現在では種類もかなり少なくなっています。
■①自然発酵ビール
<野生酵母を使用>
人類の歴史上、1番最初に出来たビールが「自然発酵ビール」です。
お酒の歴史について他の連載でも書いている通り、お酒の誕生には“偶然”が重なっています。ビールの誕生についても、麦を砕いて食べていた麦汁の中に、自然界に存在していた酵母がたまたま入って発酵して出来たと考えられているのです。
「野生酵母」という呼び方は、1883年に酵母の純粋培養法が確立した後から使われている名称です。それまでは「野生酵母」しか存在しなかったため、酵母を区別する必要もなかったわけです。
こうして純粋培養法によって作られた酵母を「培養酵母」、自然の中にある酵母を「野生酵母」と呼ぶようになりました。
現在販売されている自然発酵ビールの中では、ベルビーの「ランビック」が有名です。独特の香りや酸味が強いのが特長です。
主なビール
●ベルギー:ランビック(グーズ、ファロ、フルーツランビック)
自然発酵ビール:写真左からブーン アウド グーズ(ランビック・グーズ/ベルギー)、カンティヨン ロゼ ド ガンブリヌス(ランビック・フランボワーズ/ベルギー)、ドゥリー フォンテイネン オウド クリーク(ランビック・クリーク/ベルギー)。商品詳細はこちら
■②上面発酵ビール(エール)
<発酵中の液の表面に浮かび上がる酵母を使用>
一般的に【エール】と呼ばれるビールが多い
歴史上、自然発酵ビールの次に登場したのが、上面発酵ビールです。発酵温度は15~20℃くらいで比較的高い温度で発酵します。副生成物が多くできるため、豊かな香りや味わい深いのが特長です。
最近ブームになっているクラフトビールの中にも、上面発酵ビールが多くあります。
日本で一番有名な上面発酵ビールといえば、アイルランドの「ギネス」ではないでしょうか。黒い色が特長的ですね。
上面発酵ビールは、あまり冷やし過ぎずに飲むのが良いとされています。それは上面発酵ビールの特長である芳醇な香りと、重厚な味わいがより楽しめるからです。
主なビール ※国名は発祥国
●イギリス:イングリッシュペールエール(インディアンペールエール/IPA)、スコッチエール、ポーター
●アイルランド:スタウト
●ベルギー:ベルジャンスタイルホワイトエール、セゾン
●ドイツ:ケルシュ、アルト、ヴァイツェンボック
各国の上面発酵ビール:写真左からヴァイエンステファン ヘフヴァイス(ヘーフヴェイツェン/ドイツ)、リヴィジョン クラウド カドルズ(IPA/ニュージーランド)、シメイ ブルー(【トラピストビール】ベルジャンダークストロングエール/ベルギー)。商品詳細はこちら
■③下面発酵ビール(ラガー)
<発酵の終わりに沈む酵母を使用>
一般的に【ラガー】と呼ばれるビールが多い
歴史が1番新しく、現在世界市場の約80%を占めているのが、下面発酵ビールです。
下面発酵ビールは15世紀に誕生しました。下面発酵ビールに使われるラガー酵母は低温で発酵するため、寒い冬の時期にビールを醸造し低温で貯蔵する方法が開発されました。上面発酵ビールよりも爽やかな香味であることから人気が高まっていきました。
但し、低温での発酵や保存することが必要なため、本格的に大量生産されるようになったのは、18世紀の産業革命以降、冷蔵技術が確立されてからとなります。
上面発酵ビールよりも爽やかでスッキリした下面発酵ビールは、世界中の多くの人々に好まれ、飲まれるようになっていきました。もちろん日本でもこのタイプのビールが最も多く愉しまれています。
下面発酵ビールは、スッキリ感や爽快さを際立たせるため、冷やして飲むのがおすすめとされる場合が多いです。日本では、ビールといえば「キンキンに冷やして!」という飲み方が一般的になったのも、下面発酵ビールが多く飲まれているからこその習慣だといえます。
主なビール ※国名は発祥国
●チェコ:ボヘミアンピルスナー
●ドイツ:ジャーマンピルスナー、メルツェン
●アメリカ:アメリカンラガー
各国の下面発酵ビール:写真左からシュレンケルラ-メルツェン(ラオホ/ドイツ)、バイエルンマイスタービール プリンス(ジャーマンピルスナー/ドイツ)、ヨロッコビール ヴィエナ ラガー(ヴィエナ/オーストリア)。商品詳細はこちら
撮影協力:目白 田中屋