今年のカー・オブ・ザ・イヤーは日産/三菱の軽EV、サクラとekクロスEVだったが、パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤーはホンダのシビックe:HEVと同タイプRが受賞。
その選考理由は「ハイブリッドカーの方は洗練されたパワートレーンにより、現代的でスマートな走りがしっかり作り上げられたスポーツサルーンとして、またタイプRは優れたシャシー性能と空力ボディ、滑らかな回転フィールのVTECターボエンジンにより、街中からサーキット走行まで幅広くカバーするパフォーマンスを実現、ドライバーに素直な感動を与えてくれる点」が評価ポイントという。
また2023年1月16日発売のモノ・マガジン本誌ではスポーツカーも特集予定。そこで体当りレポートを敢行。
センターにまとめられた3本出しマフラーが圧巻!
現行型のシビック タイプR(以下タイプR)は2022年にデビュー。通算6代目のモデル。それにしてもこの迫力のあるグリルはどうだろう。
貪欲に空気を求めるような大開口部を持ち、フロントフェンダーの左右にはエアアウトプットまで備わる。
後ろに回るとアルミダイキャストステーに支えられたリアスポイラーがタダモノでない雰囲気を醸し出す。
圧巻はセンターにまとめられた3本出しマフラーとリアのディフューザーだ。
インパネデザインは通常のシビックと共通のモノ。そして室内の赤いバケットシートとアルミ製のシフトノブはタイプRの伝統でもある。
先に述べた通り、通常のシビックと室内の装備やデザインはほぼ一緒だが、大きく異なるのは後席。
通常モデルにあるセンターアームレストは最初から備わっておらず、乗車定員もシビックの5名に対してタイプRは4名になる。4名になった分、使わないセンターの座面スペースには2つのカップホルダーが設けられているのがユニークだ。
コレよ、コレ。ニヤけてエンジンスタート!
ああ、そうそう、コレよ、コレ。これがタイプRのシートだよねぇとニヤけて通常のシビックよりも低い着座位置のバケットシートに体を委ねて、丁度いい重さのクラッチを踏んでエンジンをスタートさせる。
昨今の騒音規制が騒がれる中でも始動時にエンジン音を比較的大きく聞かせてくれるクルマが多い中、タイプRのそれは拍子抜けするほど普通に始動する。逆にコレがホンモノの持つオーラなのかもしれない。
この音量ならば住宅街に置いておいても大丈夫そうだ。冬は冷たく夏は熱い伝統のシフトノブ(空調が効いてくれば大丈夫だけど)を1速に入れスルリスルリと発進。
エンジンは2リッターの直4ターボ。もちろんVTEC搭載である。先代よりも10PS、20Nmのスペック向上があり、その数値は330PS、420Nm。
筆者、タイプRは昔の低回転域はスカスカトルクでアイドリング発進はかなり慣れが必要である、の先入観が抜けきらず、構えて発進させると、なんということでしょう! クラッチミートのフィーリングも手、いや足にとるようにわかりやすいし、アイドリングでも難なく発進できる! これはいい!!
操作性は「う~ん、カ・イ・カ・ン♡」
そして街中ではタイプRの優しさに痺れた。まず超絶に乗りやすい。上記のようにトルクが太くなったおかげで、ドライバーが煩わしくなければ1500rpm付近でシフトアップしても全然普通に走る。
いや、シフトが入りまくるので、いじりたくなるのだ。
それでいて、その回転域で踏み込んでもキチンと加速する懐の深さ。30km/hで4速に入れても平気だし、あるいは先行車に追いついてしまって、ギアを落とすか落とさないか悩む微妙な1000rpm付近でもシフトダウンすることなく、踏めばそれなりの加速をしてくれる。
MTカムバック組にも優しい操作性といえば伝わるだろうか。それは高速でも同じ。
90km/h巡行中、6速での回転は約2000rpm。もちろんそのまま踏んでも十分加速し、右車線に突撃可能。
その速度、回転域で走ると燃費は10km/Lを超えてくる。2リッターで330PS絞り出すパワーユニットなのに。
それにしてもこのシフトを入れる心地良さはどうだろう。どこでもギアが入るし、クルマがギクシャクしないから自分の運転技術がうまくなった気になる。
それは薬師丸ひろ子の「う〜ん、カ・イ・カ・ン♡」といった感じだろうか(編集部注:相米慎二監督の映画「セーラー服と機関銃」のセリフです)。
1速飛ばしでギアを落としてもレブマッチングシステムが絶妙な回転合わせをしてくれる。もしその機能がなければ、慣れが必要だ。
例えば60km/h、5速で走っていて、2速に入れるとしたら、クラッチを踏んでエンジン回転を合わせて2速になるが、このシステムはクラッチを踏んで2速に入れるだけ。絶妙な回転合わせをしてくれるから、クラッチをつないでもショックがこないのだ!
こ、これは楽しい、楽しいゾ。同乗者にMTうまくなった? とお褒めの言葉をいただけること間違いなし。
ただ筆者のような古典的な人種は、たとえギクシャクしてもヒール&トゥをしたくなるのが人情。そうでなければMTの楽しさは半減する! と一方的に一抹の寂しさを感じるが、クルマを壊さない、同乗者を不快にさせないシフト操作になるならいいのだろう。寂しい? いや悔しい? 嗚呼、愛好家ってフ・ク・ザ・ツ。
「走る腰痛製造機」は返上!? 乗り心地の良さに驚く!
乗っていてもうひとつ驚くことがある。それは乗り心地が全然良いのだ。昔の「走る腰痛製造機」と言われた時代を知っている方はタマゲルに違いない。
肉厚で座り心地のいいバケットシートの恩恵も多分にあると思うけれど、通常のコンフォートモードで走っていればこれがFF世界最速のためのマシン? と思うくらい乗り心地がいい。
それでいてヒョーロンカの先生によればコンフォートモードでサーキットを走ってもそこそこのタイムが出るという。
もちろんコーナーなどの切り返しではフワフワ感があるらしいけれど。ちなみにドライビングモードはコンフォート、スポーツ、+Rの3つ。それぞれメーターの表示などが下記のように変わる。
コンフォート、スポーツモードは伝統のイエローの指針(グラフィックだけど)が「らしさ」を感じさせ、スポーツモードは地が赤になる。+Rはタコメーターがバータイプに変わる。
直線は加速しながら笑ってしまうほどの気持ちよさ!
高速へ入り、料金所から全開を試してみると、K20C型エンジンはレッドーゾンまで一直線。
265/30ZR19インチのタイヤが確実に地面を掴んでパワーを余すことなく伝えてくれる。
こう書くと一行で完結してしまいそうだが、実際はすぐにシフトアップを繰り返していくことになる。
特に5000rpm以上は回転が鋭く、そのエリアを使いたくなる。加えて微妙なアクセルオフにも反応してくれる。それほどに超絶レスポンスなのだ。
これは、き、気持ちいい。ただのまっすぐの道ながらも、あまりの気持ち良さに加速しながら笑ってしまうほど。
ただし+Rモードだと路面が悪い場所だとキックバックに緊張したり、跳ねたりすることもあるので、スポーツモードか自分でカスタマイズできるインディビジュアルモードの方が楽しさを満喫できるのかもしれぬ。
その超絶レスポンスでコーナーの進入から脱出までしてしまったら、楽しくないわけがない。もちろんコンマ何秒を競う場面では違う顔を見せてくれるはずだけど。
楽しさを満喫、という点では新しい装備がある。サーキットでのラップタイムやGメーターなどデータロガーによって多くの情報を把握できるだけでなく、スマホにアプリを入れることで走行データを任意に確認可能。
またそのアプリで走行動画を撮影すると走行データと同期させることもできる。
シビックというネーミングからすると市民的な価格ではないけれど、純ガソリンエンジンで、実用的。そんなタイプRは今年で30周年を迎えた。
さて。広報車の返却に行った青山の本社。その1Fにはウェルカムプラザがあり、11月アタマまではタイプRの企画展示があった。
そこには業界でも美味しいと評判のホンダの社食のカレーうどんの素が買えるのだ。
鈴鹿工場、埼玉工場、浜松工場、栃研(栃木の研究所)と味付けもそれぞれ。技術も美味しさも情熱のホンダ、機会があればお試しあれ。
シビック タイプR
価格 | 499万7300円から |
全長×全幅×全高 | 4595×1890×1405(mm) |
エンジン | 1995cc直列4気筒ターボ |
最高出力 | 330PS/6500rpm |
最大トルク | 420Nm/2600-4000rpm |
WLTCモード燃費 | 12.5km/L |
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