2022年、北部方面隊の第2師団が機動師団化改編されました。司令部を旭川駐屯地に置く日本最北師団で、ロシアとの国境を守る部隊であります。その中核となるのが第3即応機動連隊(名寄駐屯地)です。
今回はこの部隊を通じ、即応機動連隊について解説していきましょう。
現在陸上自衛隊は大改革を断行中です。1番大きな流れとなっているのが、師団・旅団といった作戦基本単位となる部隊の大改革です。
陸自では北海道から九州沖縄までを5つの警備区に分けています。いわゆる管轄分けです。それが北部/東北/東部/中部/西部方面隊です。
この5つの方面隊の下にはそれぞれ2個~4個の師団及び旅団が編成されています。これらの中からいくつかの師団及び旅団を「即応機動化」させていく方針です。すでに2018年から機動化改編計画はスタートしています。
機動師団ならびに機動旅団は、有事の際、必要とされる場所へと迅速に展開し、任務にあたります。では、「これまでの体制では迅速に展開が出来なかったの?」と疑問がわきます。もちろんできなくはありませんでした。
師団と旅団を作戦基本単位と呼ぶのには理由があります。もし戦争となると、師団と旅団単位で敵と戦うからです。そのため、師団と旅団には、普通科(歩兵)、機甲科(戦車)、特科(砲兵)、施設科(工兵)……と、戦闘に必要な部隊がすべて揃っています。その中から1個普通科連隊を抽出し、そこに機甲科、特科、施設科といった各部隊をくっつけていき、「戦闘団」という部隊を作ります。この戦闘団でもって敵と戦うのです。
しかし、同じ師団・旅団の隷下部隊とは言え、すべて同じ駐屯地に所在するわけではありません。そこで、「戦闘団」を準備するまでにはある一定の時間が必要でした。また、各部隊は、それぞれ装軌(キャタピラ)式の戦車や装甲車、装輪(タイヤ)式の車両などを持っており、移動スピードが異なってきます。これらが理由で、展開はできますが、時間が必要だったのです。
そこで、「ならば、最初から戦闘団を作っておけばいいのでは?」というのが、機動師団並びに機動旅団のコンセプトです。
機動化改編されると、まず移動に時間がかかる戦車部隊と特科部隊が廃止になります。これについては例外がありますが、後述します。
そして1個普通科連隊を改編し、即応機動連隊を作ります。この即応機動連隊には、普通科、機甲科、特科(野戦・高射)、施設科がコンバインドされています。まさに、常設の戦闘団です。ですから、有事となれば、即応機動連隊がすぐに飛び出していけるわけです。
また、足並みをそろえるため、即応機動連隊に配備している車両や装甲車は、すべて装輪式で統一しました。これならば、高速道路も時速100㎞で走行することが可能です。この即応機動連隊の中核となる装備が“装輪戦車”たる16式機動戦闘車です。
先ほど、機動化されると、戦車部隊と特科部隊は廃止となると書きましたが、北部方面隊だけが例外です。というのも、対するロシアが、戦車や大砲を主とする戦闘大隊編成で戦うため、どうしてもこちらも打撃力のある戦車や大砲が必要になって来るからです。
これはウクライナ戦争を見ても明らかです。ウクライナ軍が反転攻勢に移れたのは、各国から戦車や大砲を支援されたからです。北部方面隊では、すでに第11旅団が機動化改編されました。こちらの編成を見てみますと、第10即応機動連隊が新編されましたが、戦車部隊と特科部隊は残りました。
かくして道北の地に新たな機動師団が誕生しました。
これに伴い、第3即応機動連隊が新編されました。第3普通科連隊が母体となりました。中核となるのが、普通科隊員で構成される3個普通科中隊です。
そして16式機動戦闘車を配備する機動戦闘車中隊(機甲科)が新編されました。第2師団隷下の第2戦車連隊等から移籍してきた隊員たちで構成されています。
さらに第2特科連隊等から移籍してきた野戦特科隊員で構成される火力支援中隊(野戦特科)も新編されました。
また本部管理中隊には、施設科、高射特科、衛生科、通信科、補給科等が小隊規模で組み込まれています。これで、諸職種協同の小さな戦闘団たる1個連隊が誕生したことになります。
第3即応機動連隊は、発足すると、早速大きな訓練に参加しました。それが2022年10月1日から14日にかけて実施された日米共同訓練「レゾリュートドラゴン22」でした。
2023年以降、北部方面隊の第5旅団、東部方面隊の第12旅団が機動化改編される計画です。