モノ・マガジン本誌はスポーツカー特集、イタリア特集と「熱き血潮」が騒ぐ特集が続いたが、スポーツカー、イタリアとなれば思い浮かぶブランドは個性派揃いだ。
今回は日本輸入車組合(以下JAIA)の大試乗会でF1さながらのシート争奪戦をし、勝ち得たアバルトのエントリーモデル、F595をご紹介。アバルトブランドのエントリーモデルといっても安っぽくて便利な装備が省かれているか、というと、まったくそんなことはない。
ブランドのHPにもあるようにスーパースタンダードなモデル。スタンダードの上にスーパーがつけば、これはもうビートルズだったりAKBだったりとその筋では基本中の基本。それにアバルトは高価格車だからエライ、というような有象無象な世界観にはなく、グレードごとに味付けやベクトルが違うのだ。
F595には全5種類のボディカラーがあり、前後のバンパーやドアミラー、ブレーキキャリパーには別色のアクセントが組み合わされる。試乗車はグリジオレコードでアクセントカラーはブルーだ。
それにしても左右にその存在を主張する2階建てのマフラーが似合いすぎ。
ディフューザーと相まってリアビューのアクセントになっている。
ステアリングは左右から選択可能
クルマを見てニヤけていても日が暮れるだけなので、運転席に陣取るため、右のドアを開け(F595のステアリング位置は左右から選べる)、試乗車は左ハンドルだった! という恥ずかしいことをしてから改めて運転席に。
陣取ってしまうとそこは現代のクルマ、スーパースタンダードとはいえ快適装備や便利アイテムは標準装備。筆者は違和感がなかったけれど、センターの7インチディスプレイは携帯端末と接続を前提にしているのでそれ自体にナビ機能はない。
スマホと連動させてしまえば不便は感じない。それより、アナログ好きな皆様、F595は潔く3ペダルの5MTのみの設定なのです!
キーを捻ってエンジンを始動すると、これまたニヤけるエグゾーストサウンドが車内に響いてくる。適度な重さのクラッチを踏んづけてスタート。
Fの称号は伊達じゃない
F595の車名の由来はエンジンにある。フロントに収まる1.4リッター直4ターボはアバルトがエンジンサプライヤーを務めるフォーミュラ4シリーズにも供給されるモノ。そのスペックは165PS/210Nm。ピンときたあなた! まさにその通りで、フォーミュラ4のFなのだ。
なんだ、そのままかと思うなかれ。レース入門カテゴリーでもあるフォーミュラ4はイコールコンディションと初期費用を抑えているのが特長。それはエンジンの耐久性が高い証明でもある。イタ車と言うだけでスグ壊れるのは過去の話なのだ。
そんなフォーミュラ由来のエンジン(と表現するとコーフンするのは筆者だけ?)はわかりやすいフィーリングが特長。街中は2000rpmも回していれば充分。それをもう少し回すと徐々に力が出てきて、4000rpmあたりからレッドゾーンまで一気呵成に回る。
特に5000rpmを過ぎたあたりはパワー感も抜群。早い話が乗り手の意思に忠実な大変気持ちのいいエンジンなのだ。特にこの症状(?)はダッシュボードに備わるサソリのマーク(スポーツモード)をオンにすると顕著。
スポーツモードをオンにすると最大トルクが増えるだけでなく、イロイロとわかりやすい仕掛けがある。ステアリングが如実に重くなったり、響いてくるエンジン音がレーシー。
詳しい話は専門誌に譲るが、自分が主役になれて楽しいクルマであることは間違いない。クネッタ道では文字通り振り回せることも可能。特にリアの追従性は想像以上に高い。前が行くからしょーがねー的なフィーリングでなくしっかりサポートします! 風になっている。
もちろん激しく攻めれば別だけど。今回の短時間の試乗で感じた違和感はエンストした時にキーを一旦手前に捻ってから再始動しなくてはならいことと、筆者のドラポジでは斜め後ろを目視する時に助手席の存在感を強く感じられたこと。
しかし、それは慣れの範疇だし、このご時世に頬が緩んでしまうクルマは数少ない。高出力だと楽しめる場所も限られてしまうけれど街中から楽しいクルマは数少ない、そんなクルマなのだ。
アバルトF595
価格 | 422万円から |
全長×全幅×全高 | 3660×1625×1490(mm) |
エンジン | 1368cc直列4気筒ターボ |
最高出力 | 165PS/5500rpm |
最大トルク | 210Nm/2000rpm (SPORTスイッチ使用時230/2250rpm) |
WLTCモード燃費 | 14.2km/L |
アバルト
https://www.abarth.jp/
問 アバルト 0120-130-595