菊池雅之のミリタリーレポート
陸自最大の航空輸送部隊
第1ヘリコプター団 後編

東京湾上を編隊飛行する第1ヘリ団のCH-47JAチヌーク。

陸自最大の航空輸送部隊である第1ヘリコプター団。前回に引き続き、今回は、2023年1月17日に実施した「年頭編隊飛行訓練」を通じて、同部隊をご紹介していきましょう。

この部隊の特長となっているのが、“巨大チヌーク部隊”である第1ヘリコプター群です。なんとCH-47JAチヌークを配備する4個もの飛行隊が編成されています。

この部隊に続き、新たな顔となる部隊が、2020年3月26日に新編されました。

それが「輸送航空隊」です。

この部隊の特長は、島嶼防衛強化型となっており、主力装備としてティルトローター機であるV-22オスプレイを配備しています。主として水陸機動団をはじめ、陸自諸部隊を日本南西諸島部等、日本領海内にある島々へと運びます。

陸自航空部隊の新たな戦力となったV-22オスプレイ。輸送航空隊第107飛行隊が運用している。

輸送航空隊は、隊本部及び本部中隊、第107及び第109飛行隊、輸送航空野整備隊で編成されています。この中の第107飛行隊がオスプレイ部隊となっています。そして第109飛行隊はチヌーク部隊となっています。

日本南西諸島部での活動を主とするならば、部隊は九州に置いておきたいところです。しかし、隊本部及び第107飛行隊は木更津駐屯地にあります。将来的には佐賀空港へと移駐する計画となっていますが、地元との話し合いが難航しています。

そこで、木更津駐屯地への暫定配備となっているのです。第109飛行隊については、高遊原分屯地(熊本県)に置かれています。

木更津市上空を飛行するV-22オスプレイ。部内では“ブイ”と呼んでいる。一応「ヴィーナス」というニックネームもあるが浸透していない。

第1ヘリ団には、その他にも、特殊作戦を支援する「第102飛行隊」、要人輸送を行う政府専用ヘリを運用する「特別輸送ヘリコプター隊」、陸自唯一の固定翼機であるLR-2を運用する「連絡偵察飛行隊」といった部隊もあります。

第1ヘリ団において、特殊作戦の支援等を行う第102飛行隊のUH-60JA。
陸自唯一の固定翼機LR-2。偵察、連絡、急患輸送など幅広く使われている。

こうして、今回は、これら第1ヘリ団の各部隊が編隊飛行を実施しました。これら各部隊の各機に加え、米軍ヘリも参加しました。

木更津駐屯地を飛び立ち、東京湾上をぐるりと編隊飛行してまわりました。その編隊飛行中の姿を陸上総隊司令官・前田忠男陸将並びに在日米陸軍司令官・ヴァウル少将が視察しました。

陸自ヘリ部隊は大きく変わろうとしています。現在、富士重工とベル社が共同開発したUH-2の配備が進んでいくところです。まずは2021年より搭乗員や整備員の教育用として航空学校(明野駐屯地)に配備されました。今後は、今後、5つある「方面航空隊」や師団・旅団の各「飛行隊」へと配備されていくものと思われます。

編隊飛行訓練を終え、木更津駐屯地へと戻ってきたCH-47JAチヌークの群れ。

さらに輸送力を強化するため、5000億円をかけ、追加で34機ものチヌークを購入することが決まりました。この増勢分は各「方面航空隊」の他、第1ヘリ団にも配備されていくことでしょう。

皆様もこれを機に、迷彩色のヘリにご注目下さい。

  • 軍事フォトジャーナリスト.。1975年東京生まれ。日本写真芸術専門学校卒業。講談社フライデー編集部専属カメラマンを経て軍事フォトジャーナリストとなる。主として自衛隊をはじめとして各国軍を取材。また最近では危機管理をテーマに警察や海保、消防等の取材もこなす。夕刊フジ「最新国防ファイル」(産経新聞社)、EX大衆「自衛隊最前線レポート」(双葉社)等、新聞や雑誌に連載を持つなど数多くの記事を執筆。そのほか、「ビートたけしのTVタックル」「週刊安全保障」「国際政治ch」等、TV・ラジオ・ネット放送・イベントへの出演も行う。アニメ「東京マグニチュード8.0」「エヴァンゲリオン」等監修も行う。写真集「陸自男子」(コスミック出版)、著書「なぜ自衛隊だけが人を救えるのか」(潮書房光人新社)「試練と感動の遠洋航海」(かや書房) 「がんばれ女性自衛官」 (イカロス出版)、カレンダー「真・陸海空自衛隊」、他出版物も多数手がける。YouTubeにて「KIKU CHANNEL」を開設し、軍事情報を発信中
  • https://twitter.com/kimatype75

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