メディアでも大きく取り上げられたので、ご存じの方も多いと思いますが、インド空軍の戦闘機Su-30(スホーイ30)が来日しました。目的は日印共同訓練「ヴィーア・ガーディアン」を実施するためです。
遡れば、この訓練は、2019年にデリーにて開催された第1回日印外務・防衛閣僚会合2+2にて、開催が合意されました。そして、栄えある第1回目は日本での実施となりました。
開催が決まっただけで、大きな話題となりました。というのも、これまでインド空軍の戦闘機が来日したことがなかったからです。SNS上では、「どんな機体が来日するのだろう?」と早くもタイムライン上で大きな賑わいを見せていました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症が世界を襲い、残念ながら、2019年の日印共同訓練は延期となりました。次回開催のめどがまったく立たない状況に陥ります。そんなこんなで、人々の記憶からもいつしかこの話題は遠のき、SNSから完全に姿を消しました。
それが一転、2022年もまもなく終わりに差し掛かった12月、航空幕僚監部は、突然、日印共同訓練を2023年に実施すると告げました。これには驚かれた方も多かったことでしょう。私を含むマスコミ各社も同じように驚きました。
こうして、2023年1月16日から26日まで、百里基地にて「ヴィーア・ガーディアン23」として開催されることになりました。
日本側からは、第7航空団第3飛行隊のF-2が4機と航空戦術教導団飛行教導群のF-15が4機参加しました。
インド側からは、西部航空コマンド第220飛行隊のSu-30が4機参加しました。これに加え、訓練を支援するために、西部航空コマンド第81飛行隊のC-17輸送機が2機、中央航空コマンド第78飛行隊のIL-78空中給油機が1機参加しました。
なお、IL-78だけは那覇基地へと着陸しました。部隊名も機種名も“78”なので、ナハに着陸した、と奇跡的なダジャレが成立しました。
今回来日したSu-30は、ロシアで開発された複座型の多用途戦闘機です。NATOは「フランカー」というコードネームを与えました。
この機体をインド向けに改造し、かつライセンス生産を許可したのが、今回来日したSu-30MKIです。「フランカーH」とも呼ばれます。
ロシア製の戦闘機が“公式に”来日するのは今回が初めてです。
しかし、過去に1度だけ、“非公式”に来日したことがありました。それは、1976年9月6日に函館空港へと亡命目的で飛来したソ連防空軍のMig-25です。
パイロットのヴィクトル・ベレンコ中尉は、空自のレーダーサイトの目を掻い潜るため、海面すれすれを飛行し、スクランブルで発進したF-4ファントムにも見つからずに、函館空港への着陸に成功した大事件です。
その後Mig-25は、函館空港から百里基地へと運ばれました。よって、百里基地にとっては、今回が2回目のロシア製戦闘機の受け入れとなりました。
訓練開始に先立ち、インド御一行は、タイとフィリピンを経由し、1月10日に来日しました。まずは、誘導員や整備員を運んできたC-17が着陸し、百里基地のエプロン地区で、受け入れの準備を進めます。
時計の針が14時を指したのとほぼ同時刻、Su-30が姿を見せました。そして各機が次々と日本に地を踏んでいきます。
着陸後の点検、会見場の準備が済むと、その場にて、日印共同記者会見が行われました。整列するパイロットの中にはインド空軍初の女性パイロットの姿もありました。
派遣部隊指揮官ロヒト・カピール大佐は「両国の戦略的関係を深めるステップとなる」と熱く語っていました。
こうして第1回目となる「ヴィーア・ガーディアン23」が開催されたのです。(後編へ続く)