かくして、「ヴィーアガーディアン23」は、1月16日から26日にかけ実施されました。
ただし、やはり第1回目からいきなり実戦的な訓練というわけではなく、基本的訓練からスタートしました。
例えば編隊飛行訓練。これは文字通り、複数の機体で編隊を組んで飛行することで、操縦技量を高めるための訓練です。
同一機種での編隊飛行ですらそれなりの飛行時間を使っての訓練が必要です。今回はF-2とSu-30MKI(以下、フランカー)による異機種での編隊飛行です。
当然ながら機体性能が違うため、編隊長機だけでなく、僚機もその違いをしっかりと把握して飛ばなければいけません。
そうした機体性能の違いや特性を学ぶために相互体験搭乗も行われました。空自のパイロットがフランカーへ、インド空軍のパイロットがF-2へとそれぞれ乗り込み、実際に飛行しました。
こうした訓練がほぼ連日行われたため、百里基地の上空では、フランカーとF-2の編隊飛行を見る機会が何度かあり、飛行機ファンは最高の時間を過ごすことが出来ました。
その他、基地内では、ヨガ体験やお餅つきなど、それぞれがホストを務めた文化交流も行われました。
総じてみると、今回はやはり今後行われていくであろう「ヴィーアガーディアン」のために、顔合わせ、そして準備運動的な要素が濃かったと見受けられます。
さて、距離の離れたインドと日本が、なぜここまでに防衛協力を進めているのでしょうか。
この訓練の背景には、「自由で開かれたインド太平洋」という日本政府が掲げている戦略があるからです。
今、中国は覇権主義的海洋進出を進め、西太平洋の脅威となっています。さらに、中国は次なる目標として、インド洋を経てアフリカ大陸につながる海域をも手中に収めようとしているのです。
もし、太平洋からインド洋が中国のものとなれば、資源の多くを海路輸送に頼る我が国には死活問題です。同じく、インド洋や太平洋に面した国々も看過できるわけもありません。
そこで、まず日本とアメリカ、オーストラリア、インド間において、「自由で開かれたインド太平洋」を実現すべく、改めて自由と民主主義、法の支配といった価値観を共有するQUAD(クワッド)という枠組みが誕生しました。
この存在自体は軍事同盟ではないものの、日豪は同志国として軍事同盟国に準ずる関係を構築しました。次に同志国として日本が結びつこうとしているのがインドなのです。
……さて、話は少々脱線します。
今回は、フランカーを撮影するため、連日多くの人々が百里基地の外柵沿いに集まりました。そしてTwitterをはじめとしたSNSへと飛行するフランカーや空自のF-2の写真が次々とアップされていきました。
そんな中、ある“車両”が大きな話題となりました。それがブルーメタリックのキャラバンです。車体には、「インド料理ムンバイ」という文字とラクダが描かれていました。
インド空軍の方々は基地の食堂は使わずに朝昼晩の食事をデリバリーしていたそうです。その食事を配達していたのが、前述の車だったのです。
日本国内に数店舗ある本格的インド料理店であり、そのひとつが、インド大使館の近傍にあるそうです。そうした関係からでしょうか、インド空軍御用達のお店となったのでしょう。
フライトを待つ飛行機ファンの前を1日何往復か通るため、手持無沙汰からこの車も合わせて撮影されるようになりました。
そして“#ムンバイ”としてハッシュタグをつけてツイートされていき、いつしかフランカーとともにこの車も大きな話題となりました。
お店側にもそれが伝わったのか、この車をデザインしたシャツが販売されることになりました。
2023年は、まさにインドとの安全保障関係において、重要な年となりました。
今度は、2月17日から3月2日にかけて、陸上自衛隊とインド陸軍による「ダルマ・ガーディアン22」が饗庭野演習場(滋賀県)で行われました。今回で4回目となる訓練ですが、日本国内での開催は初めてとなります。
さらに、3月1日と2日には、再び空自とインド空軍による「シンユウ・マイトゥリ23」が美保基地で行われました。輸送機を使った訓練で、今回で3回目となりますが、こちらも日本初開催です。
日印の防衛協力体制は確実に深化しているのを感じます。