メルセデスの提案する
「超」ラグジュアリーSUVの世界
メルセデス・マイバッハGLSを試乗体験


走るタワマン最上階!?

大磯で開かれる日本自動車輸入組合(JAIA)の試乗会には出展メーカーがイチ押しのモデルが所狭しと並ぶ。今回の試乗車はメルセデス・マイバッハGLS。

言うまでもなくメルセデスSUVブランドの頂点になるモデルだ。俗っぽくいえばタワマンの最上階に位置すると言えばわかりやすいかもしれない。

今回、筆者のような一般庶民が立ち入り禁止エリアのシートをゲットしてしまったのだ。マイバッハGLSのベース車両はSUVのSクラスの異名を持つメルセデス・ベンツのGLS。

ベース車両は7人乗りだがマイバッハのそれは4人乗りになる。またメルセデスブランドのSUVで唯一、ボンネットマスコットを採用するレアなモデルでもある。

メルセデスのエンジニア、マイバッハ

メルセデスとマイバッハの関係は、なんと19世紀に始まる。メルセデスブランドの創始者のひとりでもあるゴッドリープ・ダイムラーとヴィルヘルム・マイバッハが1890年に世界最古の自動車メーカーのひとつ、ダイムラー・モトーレン・ゲゼルシャフトを設立した頃からだ。

では自動車メーカーとしてのマイバッハは、というと1912年のマイバッハ・モトーレンバウになる。この会社の前身は飛行船で有名なツェッペリン伯爵と共同で始めた飛行船、航空機、鉄道などのエンジン設計と製造を行う会社。

その後、1960年のダイムラー・ベンツ社が買収後は産業用エンジンの製造をしていた。2002年にはメルセデスブランドより上位モデルとしてそのネーミングが復活したが2013年に廃止、現在はメルセデスAMG同様のサブブランドである。

慎重に乗ろう! マイバッハ

さて、現代のマイバッハである。ドアを開けると音もせずに車高が若干下がり、アルミ製のステップがせり出してくる。

ゴン! 筆者がスネをぶつけた音である。普段ドアを開けるとすぐ乗るような筆者はドアオープンイコール乗車の感覚が抜けきらず、このようなドアを開けていただいて乗る生活に慣れていないため、ついぞ乗ろうとした狼藉の結果である。

結構痛い。足の短い筆者は「弁慶の泣き所」にクリーンヒット。そしてスネに傷を持つ筆者は迷わず運転席に陣取ったのである。運転席のデザインは基本的にGLSのソレと変わらないモノ。

振り返るとファーストクラス

運転席はかわらないけれど、後席は「ダンチ」だ。7人乗りから4人乗りになり、GLSよりも120mmシート位置が後方に設置されたおかげで(もちろん3列目を廃して)1103mmのニールームが確保されているとリリースにはあるけれど、そんなことは、もはやどうでもいいくらい広くて贅を尽くした空間になっている。

例えば後席にいながら後席反対側のブラインドを調整できたり(もちろん電動で、その所作も上品)、快適装備のすべてを操作できるタブレットがあったりする。

もちろん、センターアームレストには「お約束」の専用シャンパングラスの収納がある。その後方には750ccサイズのシャンパンボトルが3本入るクーリングボックスも控えている。

もし後席の住人になったら、ドンペリはとりあえず入れておいて、テタンジュとかアルマン・ド・ブリニャックでも忍ばせて「通」っぽさを演出したいモノ、なのか。

またキャビンとラゲッジルームは完全に仕切られており防音や空調も完璧なのは言うまでもない。

そしてそのシートにもこだわりがある。シート表皮の中央に窪みを入れ、左右部分を折り込んで互いに向き合わせることでシート表面がより滑らかに広くなるというのだ。

これが体の形に合わされてシートにかかる荷重面積が広くなり、この上ないゆったり感を実現している。一度でも座ったら顔が惚けることは間違いない。

48Vマイルドハイブリッド採用

そのように贅を尽くしたクルマを動かすのは4リッターのV8ツインターボエンジン。エンジンとミッションの間にはモーター兼発電機を備えるマイルドハイブリッド方式だ。

ジツはこのパワーユニットにも「すべては後席のため」的思想がある。マニア的視点ならエンジン型式はM177型のメルセデスAMGの63用と同じ。

しかし、AMGの612PS、850Nmのスペックに対してマイバッハのそレは557PS、730Nmとディチューンされたモノ。積極的にモーターが介入してくるので3tに迫ろうかというヘビー級の車重(カタログ値2840kg)でもスゥ〜っと加速させる。しかもその変速の滑らかなこと。

加えて車内の静粛性はルーフレールが装備されたり、23インチサイズのタイヤだったりするけれどヒソヒソ話ができないくらい静かだ。

ちなみに100km/h巡航時のエンジン回転はたった1000rpmを少し上回るくらいである。このエンジンの賢いところは低中負荷域では4気筒を止めることができ、燃費に貢献してくれる。

その作動回転域はなんと800から3250rpmとほぼ日常で使う回転域なのだ。もちろん加速体制に入れば即座に8気筒になる。

その切り替えもわからないくらい。いやわからないと言った方が正しい。そのトルク感は気持ちいいが、やはりこのクルマは後席に乗るべきと指を噛んだ筆者であった。

メルセデス・マイバッハGLS600 4MATIC


価格2915万円から
全長×全幅×全高5210×2030×1840(mm)
エンジン3982ccV型8気筒ツインターボ
最高出力557PS/6000-6500rpm
最大トルク730Nm/2500-5000rpm

メルセデス・ベンツ
https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars.html
問メルセデスコール 0120-190-610

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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