欲しい人は今のうち!
大磯で開かれたJAIA(日本自動車輸入組合)主催の大試乗会レポート第3弾。今回は「できれば今のうちに買えれば買いたい!」モデルをご紹介。
それはジャガーFタイプP575。半分は筆者の好みも入っていることをお詫びします。でも今のうちに乗っておかなければ「これからは電動なんだよ、非国民!」とか石を投げられるかもしれないから。
そして世相だけでなく、ジャガー・ランドローバー・グループは2030年までにラインナップを100%、BEV化すると発表している事情もある。加えて、現行のFタイプのデビューは2013年の長寿モデルゆえ、いつの間にか! てなことも絶対にないとは言い切れない。
Fタイプはネーミングの通り名車Eタイプの再来か、と言われたロングノーズを持つスポーツカー。2020年のマイナーチェンジで現在のようなライトまわりを持つにいたった。
英国のドイツのマイスターとは少し違うベクトルのクラフトマンシップによって作られたスタイリングはデザインの好みはあると思うけれど、美しカッコイイ。
往年のEタイプもそうだけれど、「美しいクルマは売れる」というのがウィリアム・ライオンズ、ひいてはジャガーブランドの信条だ。
また本来は可変式リアスポイラーが装備されるのだが、試乗車はオプションの固定式リアスポイラーがエクステリアのアクセントになっていた。
囲まれ感と豪華さが同居するインテリア
ドアに収納されているドアノブを操作して、シートに身を委ねる。インパネには10インチのインフォテインメントシステムのほか、メーターナセルにはマイナーチェンジで標準装備になった12.3インチのインタラクティブドライバーディスプレイが備わる。
そしてインパネ上部に位置するエアコンの吹き出し口はエンジンやエアコンをオフにすると格納されるギミックがある。
ギミック好きな筆者には高ポイントだ。全体的にインテリアはマテリアルの使い方がうまく囲まれ感のあるスポーツカーのモノ。それでいて豪華なのはジャガーの方程式通り。
ガソリンエンジンの醍醐味標準装備
走り出すためにエンジンスタートボタンを押す。即座にV8がその存在を主張する。これよ、これ。「この音、この振動こそV8よ」思わずランバ・ラル大尉(編集部注:名作『機動戦士ガンダム』の登場人物です)のような口調でニヤケながら呟いてしまった。
エンジンは今や貴重な5リッターのV8スーパーチャージャー付。その性能は575PS、700Nmのスペックを誇る。
そしてメーカー発表の0-100km/h加速は約3.7秒。ちなみにこの数値はポルシェ911カレラSと同じで、最高速は300km/hを謳う超高性能モデルである。余談だがFタイプのエンジンバリエーションは2リッターの直4、3リッターのV6もある。
Dレンジに放り込んでスタートすると、いわゆるジャガーの乗り心地と例えられる、ネコ科の動物が歩くような「キャットウォーク」的乗り心地に近いモノは健在。
メーカー発表の最高速が300km/hを誇るモデルと考えれば超絶乗り心地がいい。横にゲストを乗せても大丈夫だ。何よりドン! というような突き上げ感は少ない。そんな挙動の乱れも一瞬で収まることも美点だと思う。
なんと言いましょうか。高剛性ボディがキチンとサスに仕事をさせているのがよーく分かる乗り心地だ。
クネッた道では積極的に姿勢変化も楽しめる(と言っても不快なロールではなく)生粋のドライバーズカーで、スポーツカーながらも快適な乗り心地を持つジャガーの伝統を感じる瞬間でもある。
なんせジャガーはサイドカー時代から数えて100年を迎える老舗メーカーであるからして。歴史も買えるのがFタイプなのだ。
クネッた道を走ると楽しいのは間違いない。ただなんとなく古さを感じるのはその設計かもしれない。
このユニットが収まるレイアウトは今の基準から考えるならばフロントミッドシップにはなっておらず、若干のフロントヘビーになっている。
しかし試乗車はカーボンセラミックブレーキパックがオプション設定されており、その場に貼り付けてくれるくらい強力に制動力を発揮するので少しくらいのオーバースピードではさほどビビらずに済むはず。
さあ自動車専用道路の合流で少しだけ深めにアクセルを入れてみると、V8の咆哮が超絶気持ちいい。575PSのパワーを路面に確実に伝えるため、P575はAWD方式だ。
4輪は大地を確実につかみ速度を増していく。加速させるとスーパースポーツカーのそれだ。EVとは違うのだよ、EVとは! と呟く筆者。
そしてV8ユニットは3000rpmを超えるあたりからエンジン音が調和するような感じになる。
このままでは、「あっ!!!」と言う間に法定速度をオーバーしてしまうのでアクセルをオフ。パパパーーン!
バブリング音がモノ凄い。見た目はエレガントなクーペなのだが、な、なんだなんだこのエンジンの存在を主張するようなバブリング音は。
それもそのはずFタイプにはドライバーズ魂を揺さぶる排気音を大きくしたり小さくしたりするスイッチャブルアクティブエキゾーストがシフト下に装備される。
気分やゲストによって野獣にも紳士にも振る舞える、ジツに羨ましいヤツでもある。これぞ、スポーツカーだ、そう、このサウンドを聴くためにクルマを運転しているようなモノだ。
まさに松本匡史(編集部注:元プロ野球選手です)か解散してしまったが、SMAPの「青いイナズマ」なのである。
ちなみに試乗車のボディカラーは、英国では特別な色と認識される青色の中でもベロシティブルーと呼ばれる濃色系だったこともご報告。
ジャガーブランドは前出した通りEV化を猛烈に推進中である。英国には「ノーブル・オブリゲーション」という高貴な者には義務が伴う、日本の武士道に似た精神がある。1台くらいこういった振動や音を楽しめるクルマを残してくれまいか、と寂しく筆者は思ったのである。
ジャガーFタイプ R5.0 P575
価格 | 1705万円から |
全長×全幅×全高 | 4470×1925×1315(mm) |
エンジン | 4999ccV型8気筒 |
最高出力 | 575PS/6500rpm |
最大トルク | 700Nm/3500rpm |
WLTCモード燃費 | 8.4km/L |
ジャガー
https://www.jaguar.co.jp/index.html
問ジャガーコール 0120-050-689