航空自衛隊と言えば航空機が主たるヴィークルであるのは間違いないです。
しかしながら、そのヴィークルを効率よく運用するためには、いろいろな部隊の助けが必要です。航空機を整備する部隊、基地機能を担う部隊、基地内の後方支援に関わる部隊……と実に様々です。その中のひとつとして火災と戦う部隊があります。
航空機を配備している基地等、大規模基地から中小規模の基地には、それぞれ消防専門部隊があります(専門配置していない基地もある)。
街中で目にするような赤く塗られた消防車を配備し、銀色の防火服を着て、消火活動を行うため、一見すると“自衛隊らしくない”部隊といえるかもしれません。この部隊は、航空機の事故や基地内の建物火災などに対処するのが任務です。
今回は入間基地にある「中部航空警戒管制団基地業務群施設隊消防小隊」を取材しました。なかなか長い名称ですね。消防小隊には、基地により若干の規模の大小があります。入間基地の場合、約20名で構成されています。
航空機火災に対応できる特殊な救難消防車や航空機火災と建物火災に対応できる化学消防車、建物火災専門の普通消防車、その他大型給水車やクレーン車を配備しています。
救難消防車にも種類があり、現在の主流となっているのが、救難消防車ⅠB型です。ベースとなっているのは、オーストリア・ローゼンバウアー社のパンターです。
消防小隊の主力ヴィークルである救難消防車ⅠB型。オーストリア・ローゼンバウアー社のパンターがベース。ルーフトップに放水銃が備わっている。
この度は「ピットファイヤー訓練」にお邪魔しました。
四半期に1度の割合で実施している訓練で、航空機事故や燃料流出等で火災が起こったケースを想定した大規模な消火訓練です。特長は、訓練油に着火させ、火柱と煙、熱波の中、消火活動に当たるというかなりリアルな訓練になっている点です。
入間基地内には、直径17m、深さ20㎝ぐらいの円型の浅い水溜めがあります。その中を水と灯油で満たします。ガソリンを着火剤として使い、火を放つと、一気に真っ赤な炎と黒煙で辺りが包まれます。
それこそ2~30メートルの火柱が立ち上り、その勢いに思わずあとずさりしてしまいます。辺り一面を熱波と燃料が焼けるニオイが襲います。
夜明け前の入間基地で繰り広げられていく訓練。この「ピットファイヤー訓練」は年4回実施。
次々と消防車が到着し、まずは、消防車上の放水銃から放水していきます。その後、車内から銀色の防火服に身を包んだ隊員たちが降りてきます。
この防火服は隊員を炎の輻射熱から守るものですが、かなり動きにくい様子です。それもそのはず、酸素ボンベを含めると全重量は20㎏近くなるそうです。顔の部分は透明になっており、外の様子は見えるのですが、視界はかなり限定されます。
冬場は、外気との差で曇ってしまうこともあるそうです。中の隊員は、難燃性の服を着込んでいる状態で、汗でびしょびしょになるそうです。すると、その汗が蒸発していく時に、熱となり防火服の中にこもってしまい、慣れていない隊員だと、防火服内の熱気で気分が悪くなってしまうとのこと……。
炎の恐怖とも戦わなくてはいけません。気を抜くとすぐに炎は勢いを取り戻し、再び燃え上がってしまいます。ひるまず前進し、ピンポイントで炎に放水していきます。隊員たちは「炎を追い込む」という言葉を使っていました。まさにその通りです。
こうして10分ほどで訓練は終了しました。今回はただ消火するだけでなく、要救助者(ダミー人形)を探し出すという実戦的なシナリオも用意されており、訓練の難易度を上げていました。
同様の内容をトータル3回実施しすべての訓練が終了しました。