外し技好きサン、注目!!
プレジャーボートの話で恐縮だが、バルト海に面するスウェーデンの海は一年を通して強い波が多い という。そんな海況でもマリンスポーツは人気を博している。
そしてスウェーデンの船は波に対して腰 の座ったクルージングができる堅牢なフネづくりが特長だ。例えばセーリングクルーザーのナヤド。ス トレブロはスウェーデン王室の御用達ボートビルダーで、ロイヤルクルーザーを名乗る。ボルボもそう なのだ。冬の凍てつく道路を安全快適に走れるクルマ。
北欧の自動車ブランド、ボルボ。創業 1927 年と 100 周年まであと数年の老舗メーカーである。ボルボといえばステーションワゴンや SUV のイメージが強いけれど、個性でショーブするならあえてセダ ンを選ぶというのはいかがだろうか。
この外し技、どハマりする人には目茶苦茶オシャレに見えるオ トナの「お楽しみ」でもある。例えば、腕時計。王道メーカーの良さは認めるのだけれども、みんなも持っているし、それならばあえて外し技の方を楽しむ。
モノにこだわるモノマガ人の皆様には馬の耳 に念仏かもしれないが、今回のクルマは持っているだけでも、「違いのわかるオトナ」として見られる こと間違いなしな 1 台。ようやく話は冒頭に戻って、今回はボルボのセダンをチョイス。
試乗車は S90 リチャージ アルティメット T8 AWD プラグインハイブリッド。同車は新世代プラットフォームを採用 するボルボセダンのフラッグシップモデルだ。また S90 のネーミングは 960 をベースにしていた1990 年代にあったS90 以来。
余談だがこの初代 S90 には、あのエルメスとコラボしたモデルもあり、嫌味っぽさが全く感じられない(写真は通常のモデル)のはクルマ自体の品の良さが前面に出ているからか もしれない。それは現代の S90 も同じで上品さの中にちょこっとしたスポーティさを織り交ぜたよう なエクステリアは、まさに玄人受けしそうだ。
ヤングアダルトな車内
よく高級車の室内を「インテリアは贅を尽くした空間」とか「豪華絢爛な」とか表現されるが S90 の それは少し違うと感じた。もちろん豪華なのだが、ゴテゴテした豪華感ではなく、北欧のクルマらし くシンプルながらも品のいいモノで作られていると表現できるようなインテリア。
ヒーター内蔵のファ インナッパレザー表皮の前後シート、前席にはベンチレーションやマッサージ機能も標準装備する。室内で目を引くのは、クリスタルのシフトノブだろうか。これはノーベル賞の晩餐会で使われるワイングラ スなどで有名なスウェーデンのオレフォス製のモノだ。
インパネセンターの 9インチディスプレイ。これはスマホ感覚で操作できるほか、グーグル内蔵。「OK グーグル」の合言葉とともに話しかければ、料理やシャワーはでないが、音楽からシートヒーターまで音声で操作可能。
後席はさすがに広い。もちろんその気になればショーファーユースにも使えるし、贅沢なファミリーカーとしてもいける。なんと言いましょうか、ゆったりした時間にほんの少し スポーティさをブレンドしたと申しましょうか、最近のセダンは内装も派手気味なベクトルにふったモデルが多いけれど、ボルボのそれは「ほどよく」が魅力。
想像以上のパフォーマンス!!
搭載されるエンジンは 317PS/400Nm を誇る 2 リッターの直 4 ターボ。これにモーターを組み合わ せ、外部からの充電も可能にしたPHEV 車。モーターのスペックはフロントが52kW/165Nm、リアが107kW/309Nm。S90のボディサイズはメルセデスのEクラスやBMWの5 シリーズと近いが、それらにPHEV はあっても4WD ではない。
筆者、動かす前まではこのボディサイズで300PS以上あっても 2 リッターではなぁ、と斜め視点でみていた。ところが動き出したS90 は滑らかでパワフル。発進時のもたつきも皆無。S90はPHEV車ゆえ、バッテリー残量が豊富にある場合はモーターのみで走る。
その時は後輪のモーターで走る後輪駆動だ。バッテリーが満充電という条件ならばエンジンを使わずに最大81kmのEV 走行が可能。センターのディスプレイでバッテリーの使用状況を「オート」にすればグーグルのナビと連動して渋滞や道の高低差! まで考慮してエネルギー使用を最適化してくれる賢さもある。筆者はバッテリーを「チャージ」モードにし、後続距離を伸ばす作戦に。
それでも発進時はほぼモーターで、エンジンがかかることはほ とんどなかった。高速道路を使う前提なら街中は「オート」で高速に入ったら「チャージ」にするとカタログ値を大きく超える18.1km/L の燃費を達成セリ。このボディサイズでこの燃費はスゴイ!
乗り心地もエアサスが標準装備なので至極快適。よくボルボは乗り心地重視にふったドイツ車的セッティ ングといわれるけれど、乗り味はアメ車っぽい面もある気がする。しかしこのフワフワ感のあるエアサス(もちろん落ち着かない感じではなく)は腰痛持ちの筆者には大変優しい。
走行中の風切り音も標準装備されるラミネーテッドサイドウィンドウなどでキャビンは大変静かだ。そしてそういった自分の武器を知っているS90は豪華なスピーカーシステムを持つ。
標準装備のモノはサブウーファー付きの600W、14 スピーカーのハーマンカードン製だが、試乗車はオプションの Bowers&Wilkins(バウ ワースアンドウィルキンス)のサブウーファー付き1410W、19 スピーカーのハイスペック仕様が装備されていた。
移動中の室内は演歌からニューミュージック、ジャズなどまさに「音を浴びる」ことがで きた。もちろん最新の安全運転支援機能は充実しているから快適な長距離走行は大きな美点だった。
クネッた道では、狙ったラインをキチンといけるけれど、どことなく鷹揚な感じが抜けない気がした。S90はしつらえのいいインテリアを楽しみつつ、長距離を走る方がキャラクターにも似合うと思う。
最近はどちらかというとドイツ車的セッティングのクルマが多いけれど、そう考えるとやはりボルボである。その昔には S80 にヤマハ製の4.4 リッターV8を収めた「コレがボルボですかい!?」的なスポーティモデルもあったが、あえて S90はそうしなかったと思う。
安全性、快適性、操縦性を最優先した結果のパワーだと筆者は考える。何と言ってもボルボは創業からずっと安全をクルマづくりのコアポリシーにしている。
1959 年の3 点式シートベルトの開発は有名なエピソードだ。同社が開発し特許を持つこの技術は世の自動車メーカーに「無償公開」し、今も使われている。 モノマガ人の皆様、ボルボのセダンもあえての外し技で「通」受けすること間違いない!
ボルボ S90
リチャージアルティメット T8 AWD
価格 | 1089 万円から |
全長×全幅×全高 | 4970×1880×1445(mm) |
エンジン | 1968cc 直列 4 気筒ターボ |
最高出力 | 317PS/6000rpm |
最大トルク | 400Nm/3000-5400rpm |
モーター最高出力 | 52kW(前輪)/107kW(後輪) |
モーター最大トルク | 165Nm(前輪)/309Nm(後輪) |
WLTCモード燃費 | 14.5km/L |
ボルボ
問ボルボ・カスタマーセンター 0120-55-8500