日本初導入のEV
フォルクスワーゲン
ID.4に試乗


VWの電気自動車が初導入

日本へはVW初の電気自動車(以下BEV)になるID.4。カテゴリー的にはコンパクトBEVになるというが、全幅は1850mmと最近のサイズだ。そんなID.4に日本自動車輸入組合(JAIA)主催の試乗会で乗れるというので突撃してきた。

日本へ導入されるのはバッテリー容量の違うプロとライトのふたつのグレード。バッテリー容量は標準のライトが52kWh、大容量のプロが77kWhで、どちらも普通充電と急速充電に対応する。

バッテリー容量が違えば当然航続距離も変わるBEVの法則通りライトが435km、プロが618km。試乗車はプロだった。

コレぞ合理主義

SUVっぽい着座位置が若干高いシートに身を収めると「物理的」スイッチが少なく感じるのは最近のVW流。眺めると懐かしい感じがするスイッチは運転席にあるふたつしかない左右のパワーウィンドウスイッチなのだが、コレもヒトクセあって、後席のそれを運転席から操作するときは「REAR」をタッチしてからになる。

マイクロフリースとレザレットのシートは見た目もオシャレだし、極力質素なベクトルになる傾向のVWにあってはかなり豪華に感じる。スペースも十分以上で後席足元も広々。後席用のエアコンも装備され、早い話が快適なのだ。

さて、家電のごとくEVを起動してみっぺか、と訛り丸出しでスッチを探したが見当たらず。ID.4はキーを持って運転席に座ってブレーキを踏めば起動済みになるのだ。

「ボタンなんて飾りです、エライ人にはそれがわからんのです」とか聞こえてきそうだった。気を取り直してシフトセレクターを……。うーむ見当たらない。シフトセレクターはメーターナセルの横、右側にダイヤル式のモノがある。

これを進みたい方向に回せば動き出すのだ。前進するなら奥の方に回す。さらに奥に回せば強い回生ブーキが作動するモードになる。

911と親戚筋は変化なく?

走り出すと滑らかさが最初の感想。そして低速域での扱いやすさもいい感じ。特に渋滞や車庫入れ時の微速域は違和感がなく感じた。

高速への合流でキックダウンよろしくアクセルを踏みつけても、グワーーンと加速するけれどEV的な急激なトルクの立ち上がりで体を置いていかれるような感覚にならないのが嬉しい。

スポーツカーとして「売っている」訳でないから、このベクトルはありだと思う。テーマパークの乗り物のようなアクセル操作のオンオフ感は少なく、内燃機関からの乗り換えでも違和感は少ないのは嬉しい。もちろんEVのそんな面を期待していたら、この辺りは少し物足りない部分かもしれない。

ID.4のモーターはリアに搭載し、後輪を駆動する。これってRRじゃないか! と盛り上がる筆者。

そういえばVWはタイプIのRRで歴史が始まり、ポルシェ911とは親戚筋といっても過言ではあるまいて。それが最新のモデルでもレイアウトが同じとは感慨深い。

うーむ。しかしながら生粋の? RRモデルと違い、フロントフード下は物入れではなく、空調関係のユニットがそのスペースを占拠しているので、物入れには使えない。

日本導入モデルはヒートポンプは未採用だったり、スマホを接続する前提だから純正のカーナビはついていなかったりする。

とはいってもケチっているわけではなく、ID.4の肝はそのシャーシになる。専門誌的話で恐縮だが、MEBと呼ばれるVWがEV用に開発したモノがID.4のシャーシに採用されている。

この何がスゴイのか、というとEV用に作っているから。そのままじゃないか! とお叱りをいただく前にご説明を。

それまでVWが持っていたシャーシを使うとセンタートンネル用に盛り上がっていたり、マフラーなどを通すため床面がクネっていたりする。

そうすると、EVにした時にはバッテリーの搭載位置が限られてしまうのだ。MEBはバッテリー搭載スペースを確保するために、タイヤ位置は極力四隅に配している。

そしてこの恩恵は広い室内と平らで使い勝手の良い荷室だ。よく「バッテリーは床に敷き詰められウンヌン」とEVの構造で使われるが、ID.4のそれは床自体がバッテリーと考えても過言ではないのだ。

しかも床自体ということはボディの一部であり、剛性確保にも一役買っているのだ。レーシングカーなどでエンジンもボディ剛性確保のための一部といわれるが、それに近いことを乗用車でやってのけているのだ。

さらに驚くのはこのフロアプレートにはバッテリー冷却水回路がある。さすがドイツ的完璧主義。

充電も苦労知らずに?

ここまで使い勝手がいいと、最後に気になるのが充電関連かもしれない。VWのプレミアムチャージアライアンス(以下PCA)を活用すれば充電にかかる待ち時間も最小限で済む。

このPCAはVW、ポルシェ、アウディ3ブランドのEVオーナー向けに用意された急速充電ネットワークだ。

全国の158のディーラー(VW、アウディ、ポルシェの3ブランド)にある150kW級の充電器を使えるサービスで、30kWの充電器で1時間半かかっていたものが約15分になる計算だ。

15分くらいならディーラーでコーヒーを飲んでいてもクルマを見ていても苦にならない時間だ。

ちなみにカタログでアナウンスされている充電時間は90kWの急速充電で約40分あれば80%に、6kwの普通充電ならば約13時間で満充電になるという。

難攻不落のニュルブルクリンクで最速記録を持つRから来年に日本導入が発表されたBuzzといいますます注目のIDシリーズだ。

VW ID.4プロ


価格648万8000円
全長×全幅×全高4585×1850×1640(mm)
モーター最高出力204PS/4621-8000rpm
モーター最大トルク310Nm/0-4621rpm
WLTCモード139Wh/km

フォルクスワーゲン
問 フォルクスワーゲンカスタマーセンター 0120-993-199

  • 自動車ライター。専門誌を経て明日をも知れぬフリーランスに転身。華麗な転身のはずが気がつけば加齢な転身で絶えず背水の陣な日々を送る。国内A級ライセンスや1級小型船舶操縦士と遊び以外にほぼ使わない資格保持者。

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